星繋ぎのエリオ
Filmarks ★ 4.3点
最大瞬間風速 ★★★★⭐︎
冒頭 ★★★⭐︎⭐︎
ラストシーン ★★★★★
絵 ★★★★★
展開の斜め上度 ★★★⭐︎⭐︎
カリスマ性 ★★⭐︎⭐︎⭐︎
脚本の納得度(好み) ★★★★⭐︎
結論とても好きな作品だった。
鑑賞中いくつかの別作品が彷彿とされた(後ほど記載)
とってもいい、3.4回爆泣きそうになるも隣に娘がいたためつねって無理やり止めた(´;Д;`)。
後半に差し掛かるまでは主人公がどうしても好きになれず★3.5くらいだなあと思っていたが、余裕でひっくりかえった。
好きになれなかった理由は明確に、
冒頭の無線仲間に対する態度対応があまりに勝手で酷すぎたため、応援する気になれないことがずっとネックで、
もちろん彼の両親を亡くした境遇を理解し、寄り添うよう努めて鑑賞するも、あの最序盤の無線仲間への対応はあまりに酷すぎる。無線を貸してもらって、「もういいよハイサヨナラ」はとても不快だった。
キャンプでの復讐、エリオが受ける報いには、正直同情し難かったし、子供同士のいじめってこうやって始まることも少なくないよなと、すごくリアルに感じた。
(被害者に加害性がある事件があり。それを起点にいじめ展開していく点。リアルにこれはある。
良し悪しの話ではなく、客観視点として)
一時が万事、コユニバース内でも嘘をつきまくり、自分の利益のためにとにかく突き進む。
私の中で、好感度が全くなかった。
挙句、コユニバースを大惨事にさせる大罪を犯し、追放される顛末。
因果応報にとどまらず、他者を不幸を撒き散らしてるではないか。
おばさんにしてもそうだ。
もちろん実子ではないから、多少複雑ではあるが、引き取ると決めたのなら、私の手に負えないなどと本人にも聞かれかねない距離で、第三者に心情吐露するなんて、あまりにエリオが不憫。(実際聞かれてるじゃん。家の外に出て話せよせめて)もちろん可愛いがられるような行動はとってないし、エリオ自身に原因があるとはいえ、だ。
2人に関して全く感情移入できないし、共感できない、応援できない。。。
と思っていたはずだった。
。
。
追放され、エリオがどん底に落ちた際、
彼は気づく。
自分が愛されないのは自分のせいじゃないか。。。
彼は無自覚から自覚へと、覚醒したのである。
0⇨1への気づきは甚だ大きい。
何故気づけたか。
どうしようもなく愚かで、嘘と欺瞞に満ちた自分の行いを彼は告白した。エイリアンの友達グラードンに。
しかしグラードンはそんな彼に、「やっちゃったねえ」と苦笑しつつも、構わず遊んでくれたのだ。
全てを打ち明けたにも関わらず友達として遊んでくれるグラードン。あまつさえ、それでも好きだよと言ってくれる。
そこで彼は愛の飢餓状態から満たされ、それをエナジー、拠り所として、自らを振り返る余裕ができたのではないだろうか。
両親を亡くし絶望の淵にいるエリオはあらゆる声も愛も届かず、ひたすらに飢えていた。
極限の飢餓状態では、生命維持に必死で他者を思いやる余裕がない。この状態はマズローの欲求段階最下層の生存欲求にも値するくらいの危機だったのだろう。
のであれば、前半の彼の自業自得っぷり、身勝手さにも合点がいった。
飢餓状態の彼は生きるので必死だったのだ。
他者を思いやる余裕なんてあるはずがない。
愛、居場所、承認を得たくて彼はがむしゃらだったのだ。
おばさんもきっと同様で、
エリオの教育、同居に関して行き詰まっていたのである。(一時的な育児ノイローゼに近い。)自分のしたい仕事を諦めていたストレス、苦しみもある。
従って上記のような致命的なミスを犯す隙が生じたのであろう。で、あれば成程合点がいく。
おばさんも限界だったのだ。
しかしエリオを失ったことで、大切さに気付かされる。
遅すぎるが、無くさないと人間は価値に気づけない愚かな生き物なのだ。
そうこの物語は、エリオとおばさん2人の同時成長物語だったのである。
2人が0⇨1への気づきと覚醒を経たことで、
2人は抱擁し、互いの家族愛にたどり着く。
なんとも感動的だ。実際泣きそうになったのを隣に娘がいたので、威厳のために激つねりして落涙を阻止した(´;Д;`)。
ここからの覚醒した2人の猛反撃はとてつもないカタルシスと無敵感に満ちていた。
無線オタク仲間の後押しも、さらに助長して。
最序盤の彼との仲直りも、ごめん自分は最低だった、となんともシンプルで美しいことか。
それが言える人間はとにかく素敵だと思う。
と言うことで結果、Filmarks ⭐︎3.5⇨4.3と変貌した、とても忘れ難いピクサー作品になった。
もちろん気になる点はある。
ただ、それも考え方次第では腑に落ちる上手い本になっていたと私は考える。
例えば、
⚫︎コユニバースの人間たちはあまりに無防備、他人を安易に信じすぎる問題
…よく今まで滅びずにいられたなと、
セキュリティが甘すぎるし、読心術使える子を関所に立てろよ、と思ってなんとも脆弱な機関だと冷めそうになったが、
いやこれは私が地球人だからこそ思考し得ることじゃないか?と仮定すると成程これも合点がいく。
そもそもコユニバースの人々にとっては、人を疑うと言う概念が存在しないのだ。
何故なら悪という概念が存在しない魂の位が高い生物の集まりなのだ。
それならばそもそも疑うという行為自体存在もしないし、セキュリティを置くという発想が生まれるはずもない。
エリオとグライゴンがいとも簡単に侵入できるはずである。
では、そんなに優しい魂のくらいの高いコユニバースの面々が、何故グライゴンたちの参入を拒んだのか。
それは単純に、住む世界があまりに違うからである。価値観をまるで共有できない。だから、一緒にいられないというシンプルな理由だったように思う。決して拒絶、仲間はずれ、不合格のような上から目線の発想ではなく、単純に住む世界が違いすぎるのだ。
『イニシェリン島の精霊』でかの2人が袂を分かったように、価値観が交わることのない関係というのは確かに存在する。不毛なのである。
おそらくエリオをはじめとした地球人と、グライゴンの住む世界はかなり近いのだ。
だからこそ、人質を切り札に交渉という発想が生まれ、結果成功に導けた。
愚かで醜く、姑息な魂を持った我々(地球人)だからこそ交渉の成功に導けたのである。
コユニバースの崇高な魂を持った面々では発想すらできず、達成できなかったであろう。
私は、『アミ、小さな宇宙人』のアミを思い出した。それくらいコユニバースの面々は崇高であったのだろうと思う。

次の問題
⚫︎エリオが宇宙船の操縦うますぎる問題、
無線オタク仲間の誘導ほんとにそれでアテになるか?いけるか?問題
…いやもういいじゃん笑。だって覚醒したオルガおばさんとエリオ無敵なんだもん。
カタルシスで爆上がりで、もうそれいうの野暮でしょって位2人が好きになってたからもう問題なし笑。
⚫︎グライゴンなんでコユニバースの人達ノーキルなの?殺戮してないのリアリティに欠ける問題
…人質は無事じゃないと交換交渉の材料にならないっていう思考の国王なんでしょうね。ってことで納得。
力を見せつける手段も、生物の殺害ではなく、身ぐるみはぎwwwという、まあ、命を簡単に取るって思考の野蛮人ではないようには描いてる。
いいバランスだと思う。もうこれは好みの話だろう。ご都合設定ともとれるので、もう好みでしょう。
他も多分色々あったけれど、
2周目はもうストレスゼロで見れるほどこの世界の住人たちのこと好きにはなったので、
問題は気にならなくなった。それくらい好きな作品。
【おくるみ】に関して、
最初「食われるーΣ( °◇° )」に見えるミスリード、からの、実は大事にしてる保護行為だよというおくるみでしたという展開ww。なんで強引なミスリードなんだって失笑したけれど、
まさか最後で回収するとは思わず油断していた。
このギャップ萌えは素敵だよ。
この辺の凍え死にそうなグロードンを返すために奮闘するくだりなんか、我々世代用に『ET』に寄せてくれてるよねきっと。
秘密道具なんか『ドラえもん』だし、
エリオの前半の傍若無人ぶりなんかジャイアンだもんね。
エリオのラストの選択に関して、
もう落涙ですよ。宇宙人に探しに行ったけれど、もうオルガの愛に気付いたから、いく必要なくなったんだよね。
血縁とか関係なく、家族が家族になる瞬間はいつ見たって感動的だ。
グロードンとの別れだけすごく悲しかったけれど、無線で遠距離友だちになったポスクレなんか、最高の観客サービスじゃんか。
最高だよ。
日本語版のBUMPリボンもすごくあってるし、
この時代に新たなETと出会えた感覚にしてくれてもうありがとうでした。
またみます。
ピクサーはほんと恐るべし。
おわり。
