前回のブログで、7月4日に発売されたさだまさしさんのニューアルバムの最後に収録されている楽曲「都会暮らしの小さな恋に与える狂詩曲」の編曲に関して解説しました。

狂詩曲(ラプソディ)は、自由な形式で書かれる楽曲で、既成の旋律を引用する事もあります。

さださんは、歌詞にも登場するガーシュインとラフマニノフの狂詩曲を自作に引用する事も含めて、「都会暮らしの小さな恋に与える狂詩曲」というタイトルにしたわけです音譜

さて、今回は、この楽曲のエンディングに引用したラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏」について解説したいと思います。

この作品は、狂詩曲とタイトルに書かれていますが、実質的には、主題と24の変奏からなる変奏曲の18番目の楽曲と言って良いかと思います。

「パガニーニの主題による」と書かれていますが、これは、17世紀初頭にヴァイオリンの超絶技巧奏者として活躍したニコロ・パガニーニの自作の作品「24の奇想曲」の中の第24番「主題と変奏」の主題の部分を用いているという意味で、つまり、パガニーニと同じ主題を使用(引用)しながらラフマニノフなりのピアノとオーケストラのための24の変奏曲を書いたというわけです。


これが、パガニーニの作品の主題部分です

譜面をお読みになれる方は、お分かりの通りイ短調で書かれています。
そしてこれを変奏して行く訳ですから基本的には、変奏曲の方も短調が中心になっています。
いわゆるマイナーの曲ですね。

ただ、今回使用した第18変奏は、長調なのです。
そして、一聴しただけでは、全くと言って良いほど、パガニーニの主題の変奏という事が感じられない楽曲なのです。

それも、そのはずビックリマーク

なんと変奏と言っても主題を使用しているのは、冒頭の1小節と1拍ほどで、旋律の動きも鏡文字のように反対の動きにしているのですから聞いただけで主題との関連性が分かるはずがないのです。

さあ、今回はその鏡文字のようにという部分を解説したいと思います。


パガニーニの主題の1小節目から2小節目の1拍目までの音の動きを見ると、ラ、ラ、ラドシラミという動きですよね。
これを大きくとらえると

ラドシラミとなります。

ラフマニノフは、このモチーフを完璧な鏡文字のように旋律の動きの音程関係が真逆の方向になるようにして新たなモチーフを産み出したのです。

1拍目から見ていきますとラから上のドに短3度上行しています。これを鏡文字のようにするという意味は、短3度上行の反対、すなわち短3度下行させるという事なのです。


結果、上の譜面のようにラからファのシャープに短3度下がる事になります。そして、次の音符には、元が短2度下がっているので、変奏の方は、逆に短2度上げてソの音に動きます。その後も同様で元が長2度下がるので変奏は、長2度上げてラの音に動き、次は、元が完全5度上がっているので、変奏は、完全5度下がる結果になります。


この譜面を並べて見れば、始まりの音であるラの音は、共通で、その後は、見るからに鏡文字のように対称的な動きになっていることがお分かりいただけるかと思います。

この新たなモチーフを一般の方に分かりやすいように長2度下に移調したものが次の譜面です。


ハ長調だと思ってこの音符を歌ってみて下さい音譜
第18変奏の冒頭のメロディーの動きと同じだとお分かりになりますよね。

ただ、新たなモチーフを鏡文字のように産み出したと言っても、本当に最初の5音だけです。
これを手がかりにしながら下記のように発展させ、その後は、モチーフと全くかけ離れた限りなくロマンティックで美しい旋律とハーモニーを構築していったわけで、この楽曲には、不思議なほどのインスピレーションが作曲者に与えられたことを感じさせられます。


実際は、変ニ長調で作曲されています。

鏡文字のように変奏したという事についての解説は、以上となります。
音楽の理論的な部分を一般の方に分かりやすくお伝えするのは、なかなか難しいのですが、少しでもお分かりいただけたら嬉しく思います音譜