『只今、営業担当へおつなぎいたします』
『はい!お電話かわりました。海山商事の磯野です』
『アルプス通商の鳥山といいます!御社の商品を扱いたいので一度商品の見積もりをしてもらえませんか?』
以前にも聞いたことのあるセリフだ。
ここはひとつ相手の連絡先を聞き出すことにする。
『ありがとうございます!さっそく資料をお送りいたしますので、御社の会社概要と連絡先を教えてください。』
すぐにFAXが来た。
会社名は鳥山商事となっていたが、ほとんどが前回と似たような内容であった。
もう少し考えても良さそうなものだが. . . 。
数日後、私は一通のFAXを送信した。
フジヤマ通販 猫田社長宛て
商品代金\250,000が今だ未入金となっております。
2日以内に入金のない場合、法的に処理をいたします。
下記振り込み先へ入金願います。
振り込み先:00000銀行 ※※支店 口座番号000000000000
株式会社 海山商事
不明な点は担当:磯野まで連絡ください。
0000-00-0000
反応は思ったより早かった、FAXの3時間後。
『磯野さん田中様という方からお電話が入っております』
『はい、磯野です。』
『FAXが送られてきた件ですが、どう意味でしょうか?ここはフジヤマ通販ではありませんが。』
『実は、そちらがフジヤマ通販という事を調べさせて頂きました、そしてあなたが猫田さんという事も確認しております。』
『フジヤマ通販の猫田...。』
やや沈黙の後、『あぁフジヤマ通販の猫田ですか!実は私の所でもフジヤマ通販にやられましてな!
その猫田を見つけましたんや、そんでこちらで預かってるんですわ!』
そうきたか...
『そうですか。そちらに猫田さんはいるのですね。』
『いますわ』
『では、お支払いいただくように伝えてくれませんか?ここだけの話ですが、警察にも数件被害の連絡がきているという事でした。私が警察の担当者と話をしたところ警察も猫田さんの居場所は把握しているようでした。ただ民事的に商売ですので最終的に検挙するかはまだはっきりしてないとのことです。』
『ただ、海山商事さんが被害届けと告発した場合はすぐに検挙できます!とのことで警察も踏み込みたくて仕方ないようでしたよ。ただ、海山商事としては捕まえて頂いてもお金の回収ができませんので、検挙されるのより全額を回収出来れば、それでいいのです。もっといえば事を大きくしないでこの事を終わらせたいというのが本音です。』
『いや磯野さんのおっしゃる通りですな。わたしらも猫田にはぎょうさんやられましてな、いま警察に猫田持っていかれたら、わたしらも回収できませんのやわ。磯野さんもう少し待ってもらえませんやろか?
磯野さんの分も代わりにきっちり回収しておおくりしますわ!告発はそれからでも、ええんちゃいますか?』
『回収して頂けるのならお願いしたいですね、ただ、担当の警察から3日以内に返事がほしいとの事なんです。警察も忙しいのでしょうね。どっちらにしても回収できないのなら告発しなさいというのが上司の考えのようです。』
『3日以内ですか...。』
『田中さん提案ですがそちらでフジヤマ通販の債権を買い上げて頂けませんか?私共は回収が出来ればそれだけでよいのです。そうすればその債権も猫田さんから田中さんが回収し告発しないので警察に検挙されることなく、ゆっくり回収できます。いかがですか?』
『そうですな。私も上の者と相談してまた連絡させていただきますわ』
『わかりました。3日以内に返事をください。警察からもなるべく早く出してくださいといわれてますので』
『そうでんな...。』
つづく