
○ほんの少しだけ不思議な話4
N区に住んでいた頃の話
20才前後の4年間、N区の築20年ほどの木造モルタル風呂無しの二階に住んでいた。
JRの駅からも近く、家賃も4万円で6畳が二間あったので、なかなかの好条件。
ある夏の深夜、窓を開け放って友人たちと麻雀をしていた。
全部で8部屋あるアパートも3部屋しかうまってなかったので、
騒音もあまり気にする必要がなかった。
麻雀を始めてしばらくたつと、なんとなく窓に気配を感じた。
前記のとおり、木造モルタルのアパートなのでベランダ等はなく、
布団や洗濯物を乾せる低い手すりがあるだけ。
よく見ると、その手すりにぶら下がっている様に一対の手が見える。
気のせいかと思い、右隣の奴に目配せをすると、
奴も怪訝な顔で窓を凝視している。
ぶら下がった手は、手すりの高さのせいで肘から下は見えない。
その手が懸垂でもするように徐々に上がり始め、
次第にボサボサの頭が窓枠から見え始めた。
そこは、塀もなければ足場もなく、
2階の窓から顔が出せるような構造はしていない。
ましてや男四人で麻雀中だと外からも音で判る。
右隣の奴ともう一度顔を合わせると、顔面蒼白な面持ち。
もちろん自分もそうだっただろう。
二人の様子に気が付いたのか、左隣の奴も窓に目を向ける。
「わっ!! なっ なんかがいるっ!!」と大声で叫ぶ。
それと同時に3人は立ち上がり、玄関に向かって走りはじめたが、
驚いたのは窓に背を向けて事態に気が付いていない奴である。
「なになになになに!? ちょっとどうしたの!?」と慌ててついてきた。
その日は怖くて部屋には帰れず、電気、テレビは付けっぱなし、
玄関も鍵も開けっ放し状態で近くのジョナサンで夜を明かした。
「あのまま見てたら、顔も見ちゃってたよね」
「うん、額まで見えてたもんね」などと3人で話していると、
「俺にも教えてくれよ! 窓から一番近かったのは俺だ!!」と怒られた。