雨の日の日曜日。
今日、真司はホームズノートを書くために
麻子を誘ったが、
用事があると言って断られた。
だから、真司は自室の勉強机で
ホームズノートを書いていた。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230809/20/wansa358/ae/b6/j/o0810108015323125868.jpg?caw=800)
時刻は午後2時過ぎ。
ボスコム谷の惨劇。ボスコム谷にはチャールズ・マッカーシー父子とジョン・ターナー父娘が住んでいた。マッカーシーはボスコム谷のほとりで何者かに撲殺され、彼の息子のジェイムズに疑いがかかる。『シャーロック・ホームズ入門百科』より。
そこまで書くと真司は
まどろみの中へ誘われて行った。
(僕は違う。やっていない。
でも、誰も信じてくれない。)
夢の中で、
ジェイムズになりきっていた真司が呟く。
(アリス、、、君は分かってくれるかい?、、、
アリス?、、、麻子?)
真司はびっくりして、目を覚ました。
額に汗を書いていた。
(何だ、夢か、、、でも、、、)
真司は別の不安がよぎり、
自室を出て、階段を下り、
玄関の扉を開けて、小雨の中を走り出した。
(何だ、俺、何やってんだ?)
真司が家に引き返そうとしたら、
道の向こうから、
見覚えのあるブルーの傘を差した、
短い三つ編みをした女の子が現れた。
よく見ると麻子だ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230809/20/wansa358/b8/90/j/o0810108015323125872.jpg?caw=800)
「真司、こんなところでどうしたの?」
「どうって別に」
「別にじゃないわ。傘も差さないで、
ぬれてるじゃない」
真司はうたた寝した時に見た夢のことを
言うわけにも行かず、
「麻子こそ、
今日は用事って言ってたじゃないか」
と切り返した。
「用事って、はい、これ!」
麻子が持っていた、紙袋を差し出した。
「今日は、甘党じゃない真司のために、
コロッケ作ってたの。
不器用だから、時間かかっちゃった」
「俺に?」
真司は思ってもみない展開に戸惑い、
でも、何事もなくホッとした。
(夢のことは黙っていよう)
真司が紙袋を開けると、
コロッケの何とも言えない良い匂いがした。
中には、不格好なコロッケが6つ入っていた。
真司は微笑むと、
「ありがとな、麻子」と言って、
麻子のブルーの傘に入り、
どこへ行くともなく一緒に歩いた。
近所の庭の
水色とピンクのあじさいが
雨にぬれて鮮やかだった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230809/20/wansa358/48/ed/j/o0700052415323125875.jpg?caw=800)