中国にひれ伏し始めた韓国 放火犯引き渡しにみる「メッセージ」
2013.1.8 10:20
 ソウル高裁が1月3日、靖国神社放火事件の劉強容疑者を政治犯とみなし、日本への引き渡しを不許可とする判決を下した。これには驚いた。これは韓国政府が事実上、日韓関係より中韓関係を優先するとのメッセージを発したのだと思う。

 韓国政府内では当初、日本側に引き渡すべきだとの意見が主流といわれた。流れが変わったのが、昨年7月の中国の孟建柱公安相(当時)の訪韓だ。孟氏は劉容疑者に対して政治犯としての処遇を求め、自国への強制送還を公然と要求した。

 この中国の対応はまさに韓国を冊封国として扱っているかのようだ。韓国と中国の歴史をわれわれは学ばないとこれからの東アジアは読めない。朝鮮は前漢初期に衛氏朝鮮が冊封されて以来、紀元前3世紀ごろから、1895年に日清戦争で日本が清を破り、下関条約によって朝鮮を独立国と認めさせるまで、2000年以上ほぼ一貫して中国の冊封国であったのだ。

 経済的にも現代の韓国経済は、中国の冊封体制に入っていくかのようだ。韓国では、中国経済の台頭までは、対米貿易依存度が高かった。しかし2000年代に入って中国が最大の貿易相手国かつ最大の直接投資相手国となり、韓国経済の中国依存は急速に深まった。

  韓国は今、経済がすべて。経済成長が何より国家の安定のために欲しいのだ。昨年暮れの大統領選も「高齢者と若者の戦い」と揶揄(やゆ)された。韓国の社会保障制度は日本に比して貧弱だ。韓国の老後は厳しい。しかも、はや人口減少期に入っている。経済が最優先となれば、イコール対中関係が最優先である。

 輸出だけ見ても、中国は韓国の最大の輸出相手国。韓国の輸出全体の30%が中国向けだ。アメリカ向けが10%、日本向けは7%。日米合わせても中国の半分ほどしかない。対GDP比率で見ればもっと興味深い。韓国のGDPに対する韓国の対中輸出の比率は、日本の同じ指標と比べたら4倍。わかりやすく言えば、韓国から見た中国は、日本から見た中国より4倍も大きく見えている。中韓関係の方が日韓関係より4倍大事に見えるともいえるのではないか。

 日本の陸軍士官学校を卒業した父、故朴正煕大統領の娘ということで親日派と期待される朴槿恵次期韓国大統領は、父親と違い、日本語が話せない。一方、彼女は中国語に堪能で、中国人脈も豊富だという。安全保障上の懸念である北朝鮮を抑えるためにも、中国は重要だ。つまり、韓国にとって経済から安全保障にいたるまで、中国が最重要国家ということである。

  中韓関係が日韓関係より大事であることは明白になったが、やがて中韓が米韓よりも優先される時代がやってくるだろう。安倍政権には思想や夢想ではなく、リアリズムに徹して、これらの国々に対応することを期待したい。(前参院議員 田村耕太郎)

(msn産経ニュース)