2012.12.28 08:16

 中国の11月の新車販売台数(工場出荷ベース)で日系ブランドの乗用車が17万200台と前月比で72.2%増加し、乗用車全体に占めるシェアも11.7%と同4ポイント上昇した。尖閣諸島国有化を受け、9月に中国各地で反日デモに加えて日本製品ボイコットが広がり、日系自動車各社も販売不振に陥ったが、11月以降、持ち直し始めた。(フジサンケイビジネスアイ)

 しかし、日本製品ボイコットそのものも収束に向かった、と考えるのは早計だ。反日デモに前後して、中国各地の企業などが内部通知した“日系ブランド製品不買命令”が、今もにらみを利かせているからだ。

 江蘇省蘇州の電機メーカーの場合、社内にある日系ブランド製品をすべて廃棄し、購買部門や従業員にも今後の購入を一切禁止。さらに従業員が個人的に購入していた日系ブランド製品もすべて廃棄するよう命じている。不買を命じた「日系ブランド製品(日本品牌産品)」とは、日本からの輸入品のみならず、日系企業が中国内で生産、あるいは委託生産した製品も含むとのニュアンスがある。

 山東省の建設会社は、購買部門や従業員に日系ブランド車や電機製品などの一切の購入を禁じた上で、従業員が子弟に日本のアニメや日本の書籍を見せることも禁止した。「文化侵略である」との理由からで、従業員には「自覚せよ」と厳しい姿勢で迫っている。

  罰則規定を明示したケースもある。山東省煙台の病院は、日系ブランド製品を新たに購入したことがわかった職員には500元(約6700円)の罰金を科すという。また、北京の投資会社や蘇州のハイテク会社の場合、購入判明で即刻「解雇」。浙江省杭州の大型レストランでも、日系ブランド製品を購入した従業員は直ちに解雇し、二度と採用しない、と突き放した。

 日本製品ボイコットの通知は、ネット検索できる範囲だけで数十件ある。「口頭も含めれば少なく見積もってもその数千倍はあり、振り上げた拳はよほどのことがなければ下ろせない」(経営コンサルタント)との見方もある。

 中間所得層に位置づけられる企業の従業員が有形無形の不買圧力を受けることで、直接的な影響に止まらず、社会全体に日系ブランド製品を避ける消費行動が浸透してしまう懸念もある。間接雇用を含めれば日系企業が中国で1000万人以上に職をもたらしている事実を知ってか知らずか、個人的に日本製品が嫌いでなくとも、中国の消費者としては“後ろ指”をさされたくないとの心理が働く。

 もちろん、日系ブランド車の販売持ち直しは、高性能で故障の少ない車への信頼が中国の消費者に健在なことを示したし、中国版ツイッター「微博」への書き込みによると、一部で内部通知が解除されたケースもある。かすかな光は見え始めたが、それでもトンネルの出口はまだ、ずっと先なのだ。(産経新聞上海支局長 河崎真澄)