中国当局、終末思想の「邪教」を弾圧 400人以上を逮捕
2012.12.19 00:24
 【北京=矢板明夫】中国政府は12月に入ってから、共産党支配に否定的な「邪教」と認定するキリスト教系宗教組織「全能神」への取り締まりを強化している。中国メディアによれば、治安当局は「世界終末論」を流布し社会秩序を乱したとして、青海省を中心に全国で400人を超す関係者を拘束した。江沢民時代の1990年代末以降、気功団体の法輪功を弾圧するなど、共産党政権は宗教や迷信が民間で大きな影響力を持つことを極度に警戒している。

 中国国営中央テレビなどによれば、青海省の警察当局は18日までに、同省各地の全能神の拠点を摘発、布教活動のための横断幕やパンフレット、書籍など5千点以上を押収した。福建省、江蘇省、重慶市、内モンゴル自治区でも関係者が次々と拘束されたという。

 報道によると、全能神は、古代マヤ文明の暦から「今月21日に世界の終末日が訪れる」との噂が中国国内で広まっていることを利用し、「教えを信じれば助かる」などを宣伝文句に活動を活発化させ、信者数を急速に増やしたという。

 全能神は80年代末、北東部の黒竜江省に生まれた新興宗教で、イエス・キリストを信仰するほか、共産党を「大紅竜(大きな赤い竜)」という隠語で表現し、「大紅竜を殺して全能神が統治する国家をつくろう」などと主張している。主要幹部らは2001年に米国に亡命し、ニューヨークに本部を置いて中国国内向けの布教活動を続けているという。

 中国国内では、貧富の格差拡大や将来への不安などから貧困層を中心に宗教を信仰する人々が増えている。しかし、仏教やキリスト教などの伝統宗教はすでに政府の厳しい管理下に置かれていることもあって、非合法の新興宗教が数多く誕生しているとされる。

 江沢民元総書記が宗教政策を主導していた2002年までは、多くの宗教団体を「邪教」に指定し厳しく取り締まった。今回の全能神の一斉取り締まりが習近平総書記の指示によるものかは分からないが、「江沢民時代の再来」と危惧する宗教関係者もいるという。