いのまたなおひこ

記事入力 : 2012/11/07 14:02

ミサイル指針改正後、安全保障戦略の新たな枠組みに向けて

 
 哨戒艦「天安」爆沈事件(2010年3月)後、予備役軍人および民間の軍事専門家を集めて結成された国防先進化推進委員会は、10年12月に李明博(イ・ミョンバク)大統領に「能動的抑制戦略」と「3軸体制」の構築を建議した。能動抑制戦略とは、防御よりも報復能力を強化し、抑止を重視する戦略のことだ。また3軸体制とは、能動的抑制を支える中心的手段になるもので、具体的には、ミサイル、潜水艦、最先端の戦闘機が提示された。


■第一の軸はミサイル


 国防先進化推進委は当時、対北朝鮮戦略としてこのような案を提示したわけだが、これは中国・日本の脅威に備える戦略にもそのまま適用できるというのが、専門家の評価だ。金泰宇(キム・テウ)統一研究院長は「3軸体制は、北朝鮮の挑発を抑止するに当たって必要なだけでなく、統一に向けた安全保障上の手段であり、また統一韓国の生存手段にもなり得る」と語った。


 3軸体制のうち、陸の要素としては弾道および巡航ミサイルが挙げられる。弾道ミサイルの速度は、巡航ミサイルの5倍以上に達し、速やかな攻撃が可能だ。ただし日中双方を念頭に置く場合、射程距離800キロでは足りないため、射程距離を1000-1500キロ以上に延長する必要があるという主張も出ている。


 巡航ミサイルは、飛行速度は遅いが、目標の3メートル以内に着弾するという精密攻撃が可能なため、相手にとって脅威となる。特に、移動式の地上発射台のほか、戦闘機・水上艦艇・潜水艦などさまざまな手段で発射できるのが強みだ。


■海上・水中の対応手段は潜水艦


 海で中心的戦略兵器となるのは潜水艦だ。中国は最近、初の空母「遼寧」を実戦配備した。また日本も、既に保有している排水量1万7000トン級のヘリ搭載型護衛艦(DDH)2隻に続き、今年に入って排水量2万4000トン級の新型DDHの建造に着手した。このように、日中両国は中型・小型の空母を保有しているが、韓国の空母保有が適切なのかをめぐっては、意見が分かれている。一方の潜水艦は、費用対効果の面から見て、少ない費用で日中の空母や駆逐艦、潜水艦などの海軍力を脅かすことができる。特に、韓国も今や攻撃型原子力潜水艦の保有を積極的に検討すべきだという主張が提起されている。韓国軍の消息筋は「有事の際、敵に発見されても回避できるスピードや潜航能力などの点で、原潜は通常動力のディーゼル潜水艦とは比べものにならない。原潜は核兵器ではないため、韓半島(朝鮮半島)非核化宣言や核拡散防止条約(NPT)にも違反しない」と語った。中国は「商」級など6隻の攻撃型原潜を保有している。一方日本は、攻撃型原潜を保有していない。


■空ではステルス機・無人機


 これと共に空では、ステルス機など最新鋭の第5世代戦闘機や、射程500キロ以上の長射程空対地ミサイル(ASM)、空中給油機などが3軸体制に含まれる。とりわけ、無人偵察機や無人攻撃機(戦闘機)などの無人機(UAV)は、その重要性が日に日に大きくなっている。また偵察・通信衛星など独自の情報収集手段を確保し、先端指揮統制(C4I)システムを構築することも、3軸体制の構築には重要な要素だ。尹徳敏(ユン・ドクミン)国立外交院教授は「現代兵器システムの主流は、潜水艦やステルス機になっていくだろう」と語った。最大の難関は、この3軸体制を整えるのに数十兆ウォン(数兆円)規模の費用が掛かるという点だ。国家の戦略的観点から、自衛力の確保と費用に対する国民的合意をいかに導き出すか、という問題が課題として残っている。


ユ・ヨンウォン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版