ズブの素人が映画監督を目指して映画を観た感想を綴るブログあるいは日本の映画配給会社への怒りの殴り書き
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まずはじめにこの映画に触れる前に一言いいたい






いったいこの邦題ははだれがつけたんだ?






先日ネットでは
チャッピーの中身勝手に編集しちゃいました(てへ///マーケティングのためにマッドマックスの声優素人のアイドル使っちゃいました(てへへ///
などが話題にあがりました

映画に関わる人は本当にマーケティングのことしか考えていないんでしょうか?
映画産業自身が映画を殺していないでしょうか?




まずこの映画、サンダンス映画祭で非常に好評だったようなんですね
そしてその場にいたバイヤーの方が映画祭で買い付けてくれたんだと思います
よくぞ買い付けてくれた!こんな素晴らしい映画を観れるきっかけを作ってくれた!
もう感謝し尽くせない!と最初は思ったんです

でね、この映画、日本ではDVD販売のみなんですね
その販売元のラインナップを見てみるとですね
うーーーん・・・


その昔「アメリ」を買い付けた叶井俊太郎とゆう男がいました
「『デリカテッセン』『エイリアン4』の監督やんけ!買ったろ!」
みたいなノリでアメリを買ったら全然違う内容だったけどバカ売れしたあれです



もう一度販売元のラインナップを見てみます
そして監督の前作を見てみます
「今日、キミに会えたら」とゆうゴリゴリのラブロマンスらしいです


あれ?



もしかしてだけど?







これゴリゴリのラブロマンスと思って買い付けたんじゃね?






まあ、どことはいいませんけどね、この販売元、ドラマで有名な民放会社が出資した会社なんですよね

やっっっすいラブロマンスがだいだいだーーーいすきで
かるーく観る側をバカにした内容のコンテンツが多いとこですよね
おまえらこうゆうの好きなんだから大人しくこうゆうのみとけよみたいなスタンス?
しかしながらですね、彼らのこういったコンテンツの扱いってのはなんだかんだいってノウハウがあるわけです
だからこそ間違って買い付けてしまったのではないかと
彼らの感性といわゆるマーケティングの読みからするとこれはラブロマンスの範疇なんだと
それゆえこういった陳腐な邦題がついてしまったのではないかと・・・


てかサンダンスなんてでかい映画祭なんだからたくさんのバイヤーが買い付けにいってるだろうし、なんでまたよりによってこんな作品に愛のないとこが買い付けてしまったんだろう
他のバイヤーが不甲斐なさすぎやしませんか?と(ほかのバイヤーでもくそみたいな邦題つけるかもだけど



さてタイトルのことはこのあたりにしといて本題いきます



ここから映画の感想(ばばん!







物語のあらすじはNY郊外に家をかまえるレイノルズ一家(夫キース:ガイ・ピアース、妻メーガン:エイミー・ライアン、娘ローレン:マッケンジー・デイビス)のおうちにホームステイしにくる英国人留学生ソフィ(フェリシティ・ジョーンズ)との間で起こるひと夏?の出来事
BreatheInReynoldsFamily
レイノルズ一家は毎年こんないい笑顔の家族写真を撮るくらい仲良し!




ガイ・ピアース扮するキースは娘が通う高校の音楽教師。結婚して17年目になる中年おじさんの彼は若い頃バンドをやっていた。バンド名は「異常者の兄弟」。スティーヴ・アルビニが成功しそこなったらこんな感じになってたろう人物。キースは現状に満足はしていない。教師はやりたかったことではないし、郊外ではなくて都会に住みたいと思っている。妻に趣味とバカにされているチェロでNY交響楽団に入る、そして都会に住む、そのきっかけを掴みかけている。


筆者がガイ・ピアースを映画で観るのは「メメント」以来なんだけど、すげー渋くなってる
あのボディビルダーでならした筋骨隆々の身体がハリを失った薄い皮が骨にひっついてるような、いい感じの中年の質感になっている!
BreatheInGuyPearce
眼鏡姿がセクシー!


そんなキースおじさんの元に現れる18歳の少女ソフィ
同年代と一緒にワイワイ騒ぐよりひとり物静かに本を読むことを好むような少女
顔の幼さと裏腹にミステリアスで大人びた雰囲気がある交換留学生
BreatheInFelicityJones
みんながプールではしゃぐ中ひとりだけ読書!


ちなみにソフィ役のフェリシティ・ジョーンズは2012年に撮影された当時28歳!
18歳にこの演技は出来まい!
カラーコレクション、カラーグレーディングによりグリーングレーの画面に仕上げられていて
曇りの天気や陰の中にいる印象の絵作りになっている
そのためか小じわも目立たず18歳の印象を見事保っている!!(いや実際童顔だけど!)



まずね、この映画、アメリカ映画特有のクソさがない!
心情描写に苦心していて純文学のような良さがある
(アメリカ映画のさもテンプレートがあるかのようなプロットで「世界にひとつのプレイブック」みたいな優れた映画もあるけど!)
丁寧に心理や心情を描いていった結果大きな物語としての構造が出来たんだなとわかるこの良さ!
そう、主従関係がしっかりしているのだ!
手綱をひくのは常に心理や感情でそれに物語が従っていると強く感じる
(アメリカ映画に限らず、現在の映画産業が産み出す映画はもう完全に物語ありきでその小さな箱に人物と心理を置きにいってるよなぁ・・・日本映画はさらにひどい・・・

これはワンショットワンショットすべて無駄なく意味のあるもので構成させてることからも読み取れる
すべての心理描写を状態で描き切ろうとする監督の心意気がビンビン感じるのである!(ドヤァ!!



例えば、ソフィが最初に家にくるシーン。
キースがソフィの荷物を部屋に置くと荷物の中のジェーン・エアを見つけるショット
続いてソフィがキースのピアノに触れるショット
まさに最初の二人の関係性のよう。興味持ってるけどまだおっかなびっくり遠くから眺めているこの感じ



例えば娘のローレン、同級生のアーロンが好き。アーロンは女癖が悪い上にプライドが高い
二人きりでいい雰囲気になったらセックスするスタンスのアーロン
それを断ったソフィに彼のプライドは傷つけられる。そしてソフィを尻軽だと吹聴する
ローレンはアーロンとソフィが寝たんじゃないかと疑う、でもソフィを疑い切れなくてアーロンを責める

物語主導やエンターテイメントの観点からするローレンも一緒になってとソフィを孤立させたほうが観客のやきもき感を煽れる
観客だけが神の視点で真実を見ているから「そうじゃないのに~!」てな具合
でも監督は観客を神様扱いしないし、そうゆう手法で観客を揺さぶらない。リアルな心情描写を大事にして、それにこそ観客を釘付けにさせる
そうした結果、物語はもっと大きな展開に転がっていく・・・


このようにワンショットワンシーンがその意味をもって重厚に重なっていくことが手にとるようにわかる映画も珍しい
久しぶりに震える映画を観たなと






プロットとしては最後ソフィが演奏会の後、来ないとゆうことも考えられただろう
そうなるとこの話は魔性の女に善良で仲睦まじい家族が振り回されるサスペンスじみたものになったであろう
(まるでアマンダ・サイフリッド主演のクロエのように。そしてこの映画を日本でこんな感じに紹介しているところもある模様)
そうしないのはしっかりとした主眼がこの映画には置かれていて
それを最後まで描ききろうとしているから
その主眼こそが原題である『Breathe In』


それはNY郊外
若く夢を持った青年が子を授かる。
夢と家庭を天秤にかけた結果、17年間かけて彼は普通の家庭を手にいれた
そんな彼の元に現れたのは才能ある魅力的な18歳の少女

彼女が期せずしてこの郊外にきた理由は「ここに来ればなにかやりたいことが見つかる」と思って
(本当はもっとNYに近いところだと思っていたし、きっとNYに夢見てたんたろう)
キースは彼女に説く
生きるっていゆうことはこうやってやりたくもない仕事をして家庭を養うことだと
彼女はゆう
「自分で自分の人生を選べないなら死んだほうがましだわ」と
キースはそんな彼女の考え方を大人だとゆう

一般的にみたらどちらが大人だろう?キースのほうが大人にきまっている
でもそんなキースも夢見た時代があったはず
理想をもって夢をもって生きたいように生きることを思い描いた時代が
ソフィは劇中オーディションの近いキースをリラックスさせようと以下のやりとりをする

「close your eyes(目をつむって」
「take off your glasses(めがねをはずして」
「breathe in to your nose and out your mouth(鼻から息を吸って、口から吐いて」
「breathe in and out (息を吸って、吐いて」
「in and out(吸って、吐いて」

18歳のソフィが教師となってキースに教える

Breath In
and Out

でもキースは息を吸い込んだまま吐き出すことができなくなってしまった
彼には妻がいて、娘がいる
夢への誘いのためにBreathe outすることはない
彼は再び息を吸い込みオーディションの前の緊張感を持ち続けていくんだろうと




しかし最後のあのガイ・ピアースのソフィを責める目
それを受け止めるソフィの心を考えるとこの10代の少女を取り巻く過酷さといったら・・・
ここの描写だけでも観る価値のある映画だな





で、しつこいようだけどさこの邦題をつけるやつはなんとかならねえのか
これ『Before Sunrise』のときとおんなじだろ・・・
あぁ、願わくばこの監督がbreathe outなんて続編を作ってくれるといいんだけどなあ