■ 散歩の時間ですよ!

             

奈緒子先生の残像が焼きついたまま、どうやって帰ったのか記憶になかった。

家に着いた頃には、もう日が暮れていた。

M沢奈緒子‥このままググってで調べたい衝動にかられた。

でも、

 ここで調べると、
ストーカーになってしまいそう

なのでやめてみた。海の上に浮いた鮮烈なピンクの浮き輪をゆっくりと沈めていくような気持ちで、

気持ちを沈めよう、冷静になろうと努めた。このままつっ走ってしまうと、

 困ったアラフォー無職男、
ストーカー容疑で御用

なーんて、新聞の見出しになりかねないからねー。

 さて、アラフォーで無職な自分が日課にしたいと思っていたことは何でしょうか?

‥勉強? ちがいます

‥就職活動? それは日課じゃないよ!

‥のぞき? おいおい

‥ナンパ? あのね!

‥キャバクラ通い? コラー!


 ‥それは【散歩】でした。

アラフォーで、無職で、バツイチ、シングルで、それに加えて【病気】

なーんてなってしまうと、最悪なので、少しでも運動をしようと思っていたのでした。

日課と言っても

 ずっと、先延ばし

で、まだやっても見ていないものでしたが、何かに集中して、奈緒子先生の残像を

少しでも覚ますために今日から始めるのもいいな‥と思ったのでした。

これは自分の発想ではなく、友人で「散歩」を趣味にしている人がいるけれど、

健康上、非常によいということで勧められ、本当は有酸素運動として手軽で一番良い

のはジョギングだと言っていたが、

 ハッキリ言って、そんな根性はない

ので、散歩というかウオーキングになった訳です。

それで散歩かウォーキング。

奈緒子先生の残像を少し覚まそうと、散歩に出かけようと思ったのでした。

その友人は2万歩歩いても(距離にして12,3Kmなのかな?)今日は少なかったと

言っていたので、本当はもっと歩くんかいな。

こりゃリストラじじいには、なかなか大変じゃ。

一人で歩くと余計に辛そうだ。ほれほれ、助さん格さん

印籠を使って籠を呼んでおくれ。八兵衛はただの大飯ぐらいじゃが、

天然キャラでオモロイから連れておいで、

あ、言わなくてもついて来るか(汗)。

細かい事は友人に聞いてない(正確に言うと昔聞いたが全く覚えていないので、

いまさら聞けるかいな!)のでよーわからんが、単独でも複数人数でも歩くみたい。

今日から始めるのにいきなり誰かを誘うのはムリだろうな。

でも、毎日、一人で歩くのは辛そうだ。複数で歩くならしゃべっていれば、

多分距離は短く感じられると思うけど、恐らく近所にパチンコやカラオケは

やっても、その様な高尚な趣味を持っている奴はいないだろうから、

単独になるんだろうなあ。バードウオッチングの時と同じだ。

今までの自分のキャラを考えるとバカにされそうだ。

「えっ、のぞきでも組織するんですか?」
「ストーカー集団じゃないですよね?!」


って、目を細めて軽蔑の眼差しだったりする。

おいおい、散歩を紹介してくれたUさんが「散歩の達人」という本を買うと

「健康的でいいですね」って話になるけれど、何で自分が買うと

「あれ?アサヒ芸能と間違えて買ったんすか?」とか
「どうしたの?疲れてる?」


って話になるのかなあ。

…あーそうか、以前ある本を探しにいかにも個人の古本屋!って感じの店に行った時

の話だな、多分。



…狭い店内ではありながらお決まりの文学書、哲学書等を見ることが出来た。

ロマン・ロラン、小林秀雄、トルストイ…皆若い時は読むんだよな。

店主はその様な文学書が好きなのだろう。

しかし、悲しい事にそのスペース店内の1/6程度。

じゃあ店内占有率の構成はどうなってんのと見てみると、文学哲学10%、

マンガ30%、HOWTO本等のジャンク本25%等となっている。

そして店先にはドーンと50円、100円均一のいかにも人気の無い汚い本が

積んである。確かその店はコンビニの袋みたいのに一杯詰めて200円というのも

やってたなあ。ちゃんと陳列しても売れないからだろう、

マルクス、エンゲルス、レーニン、毛沢東等の若月国民文庫からブレトンウッズ、

レーガノミックス、IMF等の通貨に関する本までもが積まれていたのが悲しかった。

…じゃあ、残りの35%は何だ!男性諸氏はおわかりのことと思いますが

 「エロ本」

だと思います。

店主は文学哲学書が好きで店を始めたのかも知れない…

でもでもですよ、売上に貢献しているのはなんだ!

二葉亭四迷の様な文学書全集か?袋1杯200円の経済書か?

そうだよな、悲しいかな「エロ本」だろうと推測します。

何故なら、その古本屋最初はその手のものは扱っていなかった。

時代の変遷と共にまずレジ脇にアイドルの写真集が置かれ、それがコーナーに拡大し、

気がつくとビニールに入った特異な写真集やSM雑誌、DVD等が店内の大部分に

侵食していた。入り口はですよ、マンガとかどうでもいいジャンク本が陳列されて

いるけれど、レジから一番近い所で入り口から死角になっている部分がそうなんですよ、

そこが。古本屋の入り口をくぐると、あーやっぱり古本屋って静かでいいな-

なんて思うんだけど、ところがどっこい!その一角の狭いスペースにいるわいるわ、

若いのからおっさんまで。今日では中古DVD店がそうですね。

あ、でもね、決してブック○フとかT○TAYAなんかを想像しちゃいけないですよ。

やっぱりね、間取りが大事なんですね。

あんなオープンな場所ではやっぱり羞恥心が先行して行ける
かいな、あの閉鎖的な狭い熱気を帯びた場所が好きなんで
しょう。んで、何だっけ?


あー、キライじゃないけどあんまりそういうコーナーへは行かないんだけど、

ある日若い大柄な男が必死な形相で何かを探しているんだよね。

その必死さが伝わって来るんだよね。

それで興味を持ったんだよな、

 何が君を
そんなに必死にさせるのかってさ。

多分体は大きいけれど、どう見ても十代の彼はアイドルか何かを探しているのかなと

思ったら…全然違いました。

何と言いましょうか

 同●愛関係の本

の様でした。それも若いマッチョがふんどし一枚で…とかキレイな女性が2人戯れて…

と言った百合とか薔薇とかいうのではなく、

 枯れた60代のジイサンが2人で

…あー書けない、これ以上。倒錯してるよ、10代なのに。

自分の頃の10代と言えば、ポパイとかホットドックエキスプレスとかで

「デートの誘い方」とか「おしゃれなデートコースの組み立ては…代官山特集」

なんてのをやってたけど、それ見て○○ちゃんを誘ってファミリアで(古いね)

なーんてのが標準だったよな。


オレなんかはバンドとかやってたから

 「バカ野郎、何がパンプキンパイだ。
 男はビールにいかくんよ」

なーんて、ただ単にモテなかっただけだけどさ。

それにしても同●愛じゃ言葉を無くしますよ。それも枯れた系では。

なんだか切なくなって店を後にしました。


…てな話を飲み会の時に言ったから、こういうキャラが出来上がったのかも知れない。

あー、思い切り脱線した。

おいおい、だからってK君、オレはアサヒ芸能なんて買ってないぜ。

時々SPAを買うだけだ、まともだろ。せいぜい週刊現代くらいにしといてくれ。


あー、何だっけ、散歩の話だよな。

とは言っても単独でしかも風景が単調な街を歩くのって何か方法を考えないと

結構辛そうだな。うーん、単に何にも考えないで歩くのかなあ。

…それはオレには無理そうだ。早く目的地に着こうと早足になるだろうし、

のんびりと歩くと、もともと緩んでいる脳ミソが気分と共により一層弛緩しそうだ。


歌でも歌うんかな?よく自転車に乗りながら

「花を召しませ、ランララーン♪」

なんて唄いながら走っているオヤジがいるけど、あれは

恥ずかしいな。まだそこまでじじいじゃないし、気が触れて

いるみたいだ。

ん、じゃあ、歩きながら誰かに話し掛ける?

道路工事のオジさんに

「たまには小判とか出ますか?」

なんて聞いた日には張り倒されそうだしさ。

おいおい、寄席じゃねーっての。

何かを考えながら歩いてもいいけど、発想がシリアスになりそうだし…

まあいいや、あんまり考えないで始めて見よう。


何にも考えないで服装、黒っぽいジャージしか無いんで、黒いTシャツ、

それに自分の風貌を加えると

…なんだ、ヤクザじゃねーか、怪しい。

まあ、いいや。退屈そうだからi-podでも持っていくか。

えーと何を聴こうかな…


あー、長かった!

最後まで読んでくれたあなた、いいヒトね。

ああ、夜が更けていく‥



-------->つづく


衝撃的な出会い‥と言いたいところだけど、まだ一方的に知っただけで

出会ってはいなかった^^;

会場の受付には誰もいなかった。

既に講演が始まって相当な時間がたっているからなのだろう。

最後列の空いた席に座る。

一つ空席をはさんで隣に座る20代後半と思われるOLが振り向き、

 まるでバッチイものを見るような視線で

困惑した顔を一瞬見せた。

面長なそのOLらしき女性は、

 何も見なかった

と言い聞かせるように、息を一つ吐いて前を向いた。

リストラされてしまうと、こうも見られ方が変わるものなのか?

仕事をバリバリやっていた頃は、こういう場合、受付から席まで

案内をしてくれて、さらにパンフレットとかを手渡してくれる

ものだった。受付をやっていたと思われるスーツを着た若い男女は

携帯に夢中だし、となりに座ってる面長というよりは

 キュウリのような顔

をした女性には迷惑そうな顔をされるし‥これは何が原因だ?

 やっぱり、朝から鳩にポップコーンをあげたのが悪かったのか?

‥んなことはない!あ、よく考えてみたら、今日はスーツじゃなくて

えりがベロベロに伸び、
【げ】と大きく書かれた
げんべいのTシャツ

アラフォー無職男がマドンナに恋した!-アラフォーの恋


だった‥これではしかたない‥しかし、

 人間、外見は重要だ!


テンションは下がりまくりだったが、気を取り直して壇上を見ると

もう質疑応答の時間に入っていた。

初めて、M沢奈緒子先生の声が耳に入ってくる。

 天使のように、か弱く美しい声で

‥というのはウソだが、声に大きな特徴はないけれど、

ハッキリとした、説得力のあるしゃべり方、質問者の疑問を良く捉えて、

ていねいに質疑応答をしていた。あの話し方からして、

 ‥たぶん、ハッキリとした人なんだろう

と感じていた。

よく見ると、肌が白い。

その白い肌が説明する時に大きなアクションになって、ひときわ目立つ。

足も白くて、まるで

 カモシカの足

のよう。

 うーん、どんどん美化されていく



ふと、目の前の人が手を挙げて質問した。

M沢奈緒子先生が、こちらを向く。真剣なまなざしで質問者の言葉を

聞いている。質問を聞き終えた時、一瞬うつむいたが、すぐに顔を上げて

だいじょうですよ! と微笑んだ。その瞬間、

 自分と目が合ったような気がした

そして、

 キラッ!その瞬間に白い歯が光った!

ような気がした。

M沢奈緒子先生が自分を見て微笑んでくれて、白い歯が光った!

 まるで、女神のような微笑み

と勘違いしてしまったのだった。

人間というものは、状況を自分にとって良いように解釈する

という、とても都合のよい動物である。特に、自分のように

会社の中では、

 ガマン60%、気遣い30%

という生活をしてきたものが、会社を辞めた途端になくなって

しまったものだから、なおさらだろう。



M沢奈緒子先生の一瞬のきらめきにめまいがし、

クラクラと、ただでさえろくでもない思考回路しかない頭は

ショートして、呆然としていると、講演会終了の合図のような

大きな拍手とともに我に帰った。

大きな拍手に会釈をするとM沢奈緒子先生は壇上から降りて

控え室に行ってしまった。

 アゼン‥である。

M沢奈緒子先生‥奈緒子先生‥

奈緒子先生の残像が網膜に焼きついたまま、既に退席を始めた

周囲の女性を見ると、

 キュウリ、カボチャ、ナス、ダイコン、ニンジン

にしか見えなかった。

人生、43年生きてきて、初めて味わったリストラ。

そして、それなりに女性とは結婚前にも付き合ってきたけれど

43年目にして味わう、この感覚。



‥すでにこの時【理性】という名のブレーキが壊れてしまった

のかも知れない‥



-------->つづく




■ ところで‥


この無職でアラフォーバツイチシングル男の物語は

果たして続けて行ってよろしいものでしょうか?

自分で書いていて、あまりにバカ過ぎるので

考えてしまいました。

‥そんな訳で、皆様方はどう感じられているのか、

知りたいな、と思った次第です。

お願いです!教えてください!

引き続き読んでもいいと思う方はここをクリックして下さい。


ワニ男のブログ-アラフォーの恋


自分、ワニ男。

これ、美人の彼女がつけた自分のあだ名。

なんでも、目つきがワニに似ているかららしい。

自分では、そう思わないけれど‥。


アラフォー世代に怒られてしまいそうなアラフォーより少し高い年齢。

おまけに、リストラされそうになって、自暴自棄になって

自分から辞めたバツイチ無職男。


こんな男は、誰も相手にしてくれない。

男も、特に女性は。



仕事をしている時は、とても忙しかった。

それは、どんな仕事でも同じだ。

しかし、仕事を辞めてしまうと、途端にヒマになる。

明日からどうやって生きていこうか、おカネをどうしようか‥

と、脳裏をよぎりながらも、特に何かをする気力もなく

毎日が過ぎていく。


ヒマになるんだから、アレをやってコレをやって‥

と、辞める直前には考えていたものだが、実際に仕事から

離れてしまうと、今まで蓄積したストレスからか

何もやる気にはならなかった。


皮肉にも、毎朝、仕事に行っていた時間に起きてしまう。

ネクタイを締める必要もなく、

 スーツは最後に着てから吊るしたまま

だった。出勤時間のアラーム代わりにしていた、テレビの

朝番組から、おなじみのお天気キャスターをベッドの中から

何気なく見る。9時を回ると、退屈な奥様向けの番組になり

さすがに、そのまま見続けるには耐えられない。

ベッドに潜り込んだまま天井を見つめ、今日は何をしようか‥

と考えてみる。朝食代わりの残ったポップコーンに手を伸ばす。

ハローワークは午後から行こう。

寝起きの口には合わないポップコーンを何も考えずに噛んで

飲み込む。さすがに少し不快だ。これ以上、食べたくないと

感じる。

 そうだ!公園の鳩にポップコーンをあげよう!

リストラで仕事をしなくなった頭は、そんなくだらないことしか

考えられなくなっていた。

午前中の公園には、まず間違いなく多忙なビジネスマンはいない。

子連れの主婦さえもいない。

 いるのは、枯れてしまったジイさんだけ

だった。まだ午前中なのに、ベンチに座るジイさんは、杖にアゴを

載せて、コックリコックリと居眠りをしている。

鳩に向かって、ポップコーンを投げると一瞬ひるんだ顔を見せるが

奪い合ってついばむ。今度は鳩を狙って投げてみる。

一瞬飛び立ちそうになるが、反転してポップコーンを奪い合う。

  鳩に豆鉄砲!

とか言いながら、しばしの時間楽しんでみるが、平和の象徴である

鳩と見ていると、日本って平和だなぁと思う。しかし、

 一番平和なのは、オマエの頭だ!

と、声が聞こえてきそうだ。


こんなくだらない時間の過ごし方、ビジネスマンだった頃には

思いつかなかった‥というよりも、自分がこんな風になってしまう

なんて想像もしなかった。賞賛されるはずだった。

どうしてこうなってしまったのだろう。

そんなことを考えながら、今日は田舎町を抜け出し、都会のハロー

ワークへと行ってみようと思った。

 ハローワークで求職のコンピュータ検索をしてみる

  ‥該当なし。

自分の今までの条件では該当するものがなかった。

少し条件を落としてみる。うーん、わずかに2件だけ。

深くため息をつくと、それ以上見るモチベーションは湧いて来ず

ハローワークを出る。

 低空飛行のモチベーションで歩いていると、近くの建物で

無料セミナーらしきものをやっていた。興味は無いが、ヒマだった

ので、何気なくのぞいてみる。


題目「女性が低迷した不況を生き抜くために」

講師「○×株式会社 M沢奈緒子先生」



ふーん、キャリア女性の講師かぁと思いつつ、ホワイトボードの

前で熱く語る女性に焦点を合わせる。

 ガガーン! モロにタイプ!

使い古された言葉だけど、脳天に雷が落ちて、その電流は背筋を

貫き、目の前がチカチカした感じ‥とでもいうものだろうか。

スレンダーで、いまどき珍しい長く黒い髪、多分30代後半。

グレースーツに白いシャツ。

身振り手振りで話す素肌が眩しい!


女性向けのセミナーにもかかわらず、ついフラフラと会場の中へ

入ってしまったのだった。


-------->つづく