第一話 蹴上峠 京の東山に蹴上「けあげ」という峠がある。 斬首された罪人の首を火葬場まで蹴りながら運んだことが名の所以という。 昔― 此の火葬場の脇に小さな堂があり、一人の僧が住んでいた。 名を万法「まんほう」という。万法には二人の雑役扶がおり、こちらは火壇を挟んだ襤褸小屋で寝起きしていた。 名を賢(げん)と勒(ろく)という。勒はまだ若く、万法に使えて三月ほどであった。二人とも夙の出である。夙とは 社寺に隷属する一族の通称である。