私がまだ10代の頃に知り合った人に
この世でこの人以上に不幸な人がいるだろうか?と思った人がいた。
Aさんは本当の両親を知らず孤児院で育ち、
養子にもらわれた彼が高校生の時に
養父母が事故で亡くなられた。
血の繋がらない小さな妹を育てる為に必死で働いてきたと言っていたAさん。
私が知り合った頃は、高校生の妹を大学に行かせてあげたいからと
高収入の為に警察と暴力団の間でかなり危険な仕事をしていた。
けど、その後その妹は家出をし行方がわからなくなった。
人生すべてを妹の為に費やしていたAさんが
妹さんにすれば重荷だったのかもしれない。
いつもニコニコして人当たりの良い彼は
酔うと人が変わったように悲しみのどん底のような顔をしていた。
数年経ってAさんは結婚し、すぐに子供を授かり
その頃の彼は本当に本当に幸せそうで
「生まれて初めて血の繋がった家族が出来る」と喜んでいた。
そして、出産前に奥さんと温泉旅行に行くことにしたAさんは
急にどうしても穴をあけれない仕事が入ったからと
次の日、合流することにして奥さんだけを先に送り出した。
そして翌日の早朝に阪神大地震が起きた。
Aさんの奥さんが一人で泊まっていた地だった。
数ヶ月経ってから、その話を私たちにするときも
泣いてるのか笑ってるのか分からないような顔で
泣くのを堪えて話すAさん。
この世はなんて不公平なんだろう
なんで、彼はこんな仕打ちを受けなきゃいけないのだろう
なんて可哀想…
Aさんは一生、後悔するんじゃないだろうか
そう思った。
私の周りにはAさんのような
「なんて可哀想」と言われる人生の人が数人いる。
「なんて可哀想」…
本当にこの人達は可哀想なのだろうか
いや、この言い方は語弊があるな![]()
他人が彼らを「可哀想な人」にしちゃいけない
彼らは「なんて可哀想な人」なんかではない
今ならわかる
彼らは「なんて崇高な魂の人」だ。
…なんで30年も前のことを思い出したのか分からんけど。
最近、ふと思い出すAさん。
彼が心の底から笑えるような日々を送ってるといいな
