ある晴れた昼下がり、突然の雨に逃げ込むように入った古びた喫茶店。
「すごい雨だ、まだまだ止みそうにないか」窓の外を見つめながらぽつり呟く。
「…いらっしゃい」後ろから声が聞こえて慌てて振り向く、そこには白髭が怪しさを醸し出す老眼鏡の似合うおじいさんが佇んでいた。
着席するようにと促されたので、とりあえずカウンターの席に座ることにした。「ご注文は?」「ホットココア1つお願いします」
ここは何処なんだろうと不思議に思いながら辺りを見渡した。いつからあるのかも分からない喫茶店、よく知ってる道のはずなのに初めて見た喫茶店だった。「お名前は?」
ハッとした。まさか話しかけられると思っていなかったからハッとした。「亮です。山本亮です。」
私は自分の名前が好きじゃない、と言うより名前の字が好きじゃなかった。“山本亮”……なんだこの左右対称感は、なにゆえ線対称なんだ。小学生の時、好きだった女の子に言われて以来“山本亮”この字とこの名前が嫌いになった。
「山本さんはおいくつですか?」「20歳です。大学生です。」こんな質問形式の会話がいくつか続いた。
「この店って前からありましたっけ?」こちらからも質問をした。いや、最初から気にはなっていたけど質問するチャンスを失っていた。「たまに出来るんですよ」おじいさんが不思議な答えを返してきた。
「それじゃ、いつもは無いみたいじゃないですか」笑いながら言ってみた。「そうですよ」真剣な表情で、真っ直ぐな瞳で返された。ハッとした。またまたハッとした。
固まった私を横目におじいさんは語り始めた「ここは会いたい人が居る人が集まる喫茶店。今あなたが会いたい人が居るでしょ?あなたの他にも、その人に会いたいと思ってる人が集まるんですよ。嘘だと思うでしょうがこれが本当なんですよ。だから“たまに出来る”喫茶店なんです。あなたは、小学生の時の担任の先生に会いたいと思っていますね?」
「はい!会いたいです!会えるんですか!?」カウンターに身を乗りだし尋ねた。「それは私にも分かりません。……ただ、これから後3人の人物が来ます。あなたを合わせた4人で」ガチャ
「言ってるそばからもう一組のお客様がいらっしゃいました」入ってきたのは雨に濡れた30歳ぐらいの夫婦だ。
夫婦の二人が声を揃えてこう言った。