こんにちは、個別指導Wam香川鶴市校教室長の内海章雄です。
2021年のノーベル物理学賞を受賞した、米プリンストン大学上席研究員・真部叔郎氏のニュースは速報の時点で多くの人の目に触れ、話題になったことでしょう。
なんと御年90歳！お隣愛媛県のご出身ということでさらに興味が湧いたのですが、研究内容が「地球温暖化」という気象分野であるにもかかわらず、なぜに物理学賞？という疑問を持った方も多いのではないでしょうか。
真鍋氏は大気と海を物理法則でシミュレーションするという、誰もやったことがなかったところからモデルを作り『気候モデリングの父』と呼べる研究者なのだとか。気象に関わる研究・職に身を置く人にとっては、現在の地球温暖化に関する理解や将来予測に欠くことができない研究分野を作り、その礎があって地球温暖化の予測が可能となっています。
一般社会にも気候変動問題が広く認識され、世界的にも脱炭素や森林保護といった動きの原動力となっていることを考えれば、1960年代にはすでに地球の気候を解析する手法を開発し、大気中の二酸化炭素濃度の増加が地球温暖化に影響することを実証したというのですから「自分が生まれる以前から今の地球環境を予測していた」という先を見据えた研究と、その功績が評価され受賞に至るまでの時間を思うと、ただただ感心するばかりです。
地球科学分野では、これまでに大気中の化学反応等で化学賞の受賞はあったそうですが、「この分野の専門家は地球物理という言葉はあれど、物理学とはみなされないという感覚を持っていて、真鍋氏の物理学賞受賞について常識を覆す驚きをもって受け止めている」という記事も読みました。
「思い込み」や「常識」は、人間の行動を制限してしまうもの。
そういえば2014年に高輝度青色発光ダイオードの発明により同じくノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏も、日亜化学のエンジニア時代に当時の学会や研究会で注目されていた元素系の分野ではなく、むしろ終わったとされる分野に着目し挑むことで成功への道に繋げたといいます。
ノーベル賞を受賞するような研究者に限らず、私自身の周りを見渡してみると成功している人というのは皆共通して「思い込み」や「常識」にとらわれない人たちだと気づきます。
「常識がない」「常識外れ」な人とは違います。私から見ると、これらの人たちは人並み以上に常識を備えた上で、そこからさらに新しい知識や情報を吸収しようと常にアンテナを張り巡らせているイメージ。たとえ自らがつい最近得た知識や情報でも、「これは違うな」
「こっちが役に立ちそうだな」など、得たものを自分や人のために「使えるかどうか」あるいは「どう使うか」を考えているため知識や情報の取捨選択と更新が早い、すぐに行動に移すという傾向があると感じます。
行動力があって活動的な人はコミュニケーション能力も高く、人脈もあることから成功しやすいのかもしれませんが、実はたくさんの失敗も経験しているといいます。ただその失敗の記憶を抱えたまま委縮して、思い込みと常識の中に埋もれるのか、あるいは失敗の経験も糧にして枠を超えていく発想や行動に至るのかによってその差が大きく開く、というのは容易に想像できます。
したがって今の子どもたちには将来、常識の枠にとらわれることなく自由な発想で社会に貢献できる人へと成長してほしいと思います。そのためには、あらゆるものから学ぶ姿勢を失わずに、日頃から得た知識や情報について、さまざまな角度から見て考える癖をつけたいものですね。
真鍋叔郎氏の物理学賞受賞というニュースは、私自身日本人として誇らしいという気持ちもあります。ただ、同氏は現在米国籍であり、記者会見では国籍を変えた理由を聞かれてこう答えています。
「面白い質問です。日本では人々はいつも他人を邪魔しないようお互いに気遣っています。彼らはとても調和的な関係を作っています。日本人は仲がいいのはそれが主な理由です。ほかの人のことを考え、邪魔になることをしないようにします。日本で『はい』『いいえ』と答える形の質問があるとき、『はい』は必ずしも『はい』を意味しません。『いいえ』の可能性もあります。なぜ、そう言うかというと、彼らは他人の気持ちを傷つけたくないからです。だから他人を邪魔するようなことをしたくないのです」
真鍋氏のノーベル物理学賞受賞という事実だけならお祝いムード一色のニュースかもしれません。
さて、皆さんはこの真鍋氏の言葉に何を感じたでしょうか？
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