笑っていた あの顔は

土のように乾いて 冷え固まった

 

あけはなたれた窓から

かつて見えた あらゆる光景は

本当に あったものだろうか?

わたしの この ちいさな部屋。

安全で 温くて

わたしは 生きながらえることができれば

他に多くを望まなかったのだ。

ひとりの 穏やかな日々

窓の向こうには

いまや 暗く深い

 

 

 

わたしは 目をそらしつづけていた。

外の世界には もう

すべてが 終わってしまったのだろうか?

 

わたしは

 

わたしは まだ生きていた。

こわかったのだ。

死んでしまうことが

 

あの日 彼は うごきを止めた

つめたく かたくなった。

わたしは

 

わたしは そうたしかに

かなしかった。

 

こころの はたらきは

すっかり さびついて

ぎしり

すこしだけ

わたしは なにかを おもった。

 

にわかに かおを あげてみる。

まどの むこう

暗闇に慣れた目が

みたものは

ちいさな薄黒い灰色の光だった。