St. Valentinでしたね　LOVE…

胸がぎゅっと

娘とは色々話し合える間柄で良かった。そうでなかったら今まであった数ある難関を乗り越えられなかったと、つくづく思う。

2018年の春、娘は高校卒業後、美術大学への入学を目指して予備校に在籍していた。確か3月だったと思う。長距離バスを使って娘と二人、ボルドーの美術大学のオープンスクールに行った。

天気の良いぽかぽか陽気だった。学校訪問を終えて帰りのバスに向かって二人で歩いていた。すると娘が深刻な面持ちで話し出したんだ。

「お母さんあのさ…昨日友達の家に泊まったやん。女子2人男子2人だったんだけど、私の友達はそのうちの一人の男子と付き合ってるから、何となくそういう雰囲気になって来て、寝室に消えてん…」

娘と残されたもう一人の男の子は「前から気になってたんだよね…」と娘を口説き始め、詰まるところ娘と男子は一線を越えた。

幼稚園時代から常に男の子に囲まれていた娘だが、中学に入ってからは新しく出来た友人も含めて女子男子のグループの輪が広がり、それは忙しそうだった。

高校を卒業してからは何人かと付き合っていたようだった。しかし、常に娘の方がイヤになって別れてしまい長続きはしなかった。オトコは嫉妬深く束縛したがるのだそうだ。

「そうかぁ…。で、その子のこと好きなん？」と聞いたら

「まあそこまででもないけど、処女を捨てたかってん。私だけやん、みんなの中で。」

なかなかの告白ではないか。

娘はフランス女子には珍しいと思う。あれだけ男友達にも囲まれていながら18になってまだヴァージンだった。

来る日が来た。私はどこか身が引き締まる気持ちだった。「さよか…。それで、どんな気持ちなん、今？嬉しい？」

娘の顔は曇っていた。「ちゃうねん。問題があって。避妊せえへんかってん」

「…!!」思わず歩いていた足が止まった。学校で性教育が始まった頃に二人で話したりしたよな、娘。妊娠のこととか、性病の危険とか、エイズとか。

迷走の19歳

その頃娘はどこかフラフラしてた。進路も自分の選択にまだ迷いがあるのは見て取れた。しかし母親の私がこうしなさい、ここに行きなさい、と本人の代わりに決めて何になろう。

自分に迷いがあったあの頃の娘は、今思えば半分ヤケになってたたんだろう。19歳。私の19歳を思い返してもいろいろカオスだったけど。

時を戻そう。その夜、娘によると金持ちのボンボンでモテ男のそいつになかば押し切られた形でそうなった。避妊具を付けて、と頼んでもアカンかったと。

「自分よがりやんか、最低やなその子」私はそう言うしかなかった。娘の初体験は若干にがいものになってしまった。けど、綺麗な初体験なんてそうそうあるもんじゃない。漫画じゃあるまいし。私のだって結構味気ないもんだった。笑

「それでどうするん、避妊せえへんかってんやろ？」との私の問いに娘は顔を上げこう言った。

「分かってる。色々考えたんやけど…」ときっぱりした口調で歩み始めた。