古来、「嘘つきは泥棒の始まり」と言われてきましたが、
なぜか、解散の時期についてだけ、首相の嘘は許されるとされてきました。
かつて、「解散については頭の片隅にもない」と言っていたある首相が、
言を翻して解散した後、「頭の真ん中にあったのだ」と強弁したこともありました。
その昔、永田町だけで政治を行なっていた時代であればともかく、
これだけ透明性や説明責任が求められ、国民との約束が重視される
ようになった現在の政治においては、「嘘をついてもいい」というのは、
ある意味、国民に対する裏切りでもあります。一事が万時です。
信頼される総理の像としては、嘘を言っていいはずがありません。
嘘を見抜く専門家の立場から申しますと、嘘には、2種類あります。
殊更に虚偽の事実や間違った内容を告げる「積極的な嘘」と、
相手の誤解や勘違いをそのまま放置しておく「消極的な嘘」です。
政治の世界では、戦略的な駆け引きの観点から、
答えをはぐらかしたり、消極的な嘘をつく場面をまま目にしますが、
他方、積極的な嘘は、結果的に国民を騙すことになりますから、
基本的には、許されないはずです。
さて、それでは、記者などから解散の時期を尋ねられたら、
どう答えればよいのでしょか。
政治家には、それぞれのスタイルがありますから、
模範解答はないのかもしれませんが、一例を挙げるなら、
一貫して「ノーコメント」と言っておくのが、無難なように思われます。
そうではなく、普段は、「解散はありません」と言っていた人が、
ある日を境に、突如「ノーコメント」を連発しだしたら、
逆に、そろそろ解散しますと言ってるようなものなので、そういう人は、ある意味、
正直な人なのかもしれませんが、無為無策な政治家と評価されかねません。
だから、「ノーコメント」を口にするのであれば、初めから貫く必要があります。
ところで、安倍総理は、「解散の『か』の字もない」と述べています。
であれば、解散はないと考えるべきです。
かく述べながら、何ら事情の変化もないのに解散に出るというのでは、
信頼されるべき総理の像からは、相当かい離してしまうからです。