先日来室された患者さんが、

「私はやっぱり何もかもダメ！」

と語り始めました。

教員をされているAさん（29歳・女性）です。

「マルチタスクがこなせないので、単純作業の仕事に転職します！」

と泣きながら言うのです。

よくよく話を聞いてみると、例えば資料を作成するときに

「フォントは何にしようか・・・」

などと、本人曰く

”どうでも良いところ”

で時間をとってしまい、

気づくと締切ギリギリになって、

慌てて適当なものを仕上げてしまうのだそうです。

ただ、締切までには仕上がっているとのこと、私が、

「短時間で集中して仕上げられているのは十分スゴイことだと思いますよ。

やる気スイッチが入るまでに少し時間がかかるのかもしれませんけど、締切には間にあっていますので、マルチタスクがこなせていないのとはちょっと違うのかも？」

と伝えると、

「確かに、質はともかくとして締切に間に合わなかったことはないかも・・・」

とのこと。

しかも、Aさんは、同僚や校長先生からも可愛がられているというので、

「本当に『ダメ』で『辞めてほしい』と思われている人材であれば、煙たがられることはあっても、可愛がられることはないと思うんです」

とも伝えました。Aさんは、

「確かに・・・（笑）」

と頷きつつも、

「でも、良いものはでき上がらないから、やっぱり私はダメなんです。こんなダメ人間が生徒に何かを教えるなんて・・・教え方も完璧じゃないし、もっと教え方の上手な先生に教えてもらった方がずっといいと思うんです。私なんかが教えていたら、生徒さんの人格にまで悪影響を及ぼしかねないと思うんです。

甚大なる被害をもたらす前に

教員を辞めるべきだって思って」

とのこと。

「生徒さんは何歳くらいの方なのですか？」

と聞くと

「20代～30代くらいの人を20人ほど受け持っています」

と。

「それくらいの年代であれば、先生の教え方に不満があれば何かしら言ってくるでしょうし、自分で考え、行動できる年齢なので、不足があれば自分で補うことも可能だと思いますよ。人格形成は既に終えている年齢ですので、人格にまで悪影響を及ぼすことはまずないと思います」

と言うと、

「確かに・・・」

と。

Aさんの言葉からわかるように、

・資料の作成がギリギリになる

　→マルチタスクがこなせないダメな人間

・教え方が完ぺきではない　

→　自分には教員が合っていない

今すぐ転職すべき

という思考が働いているのですが、

実際は、

資料作りは締切内に終えられており、

生徒から不満の声が上がっているわけでもありません。

要は、Aさんの場合、自分の「不完全」なところを見つけると、

「自分は全てがダメ」

という極論・思い込みに至るのです。

「今回も何だかんだいって資料作りが間に合った」

「教え方に自信はないけれど、誰からも苦情もないし、他の先生方も私を認めてくれるきっと私は大丈夫なんだ」

と思えたら、自分の評価が全く異なるものになると思うのです

Aさんに限らず、一旦

「自分はダメ」

という思考に陥ると、

「自分のあらゆる面がダメ」

ということになってしまい、

できている部分には全く目が向かないという人は沢山います。

Aさんの場合、

「資料は余裕をもって作成して、より質の良いものを作らなければならない」

「誰かに教科を教えるときは、完璧な教え方でなければならない」

という、べき思考が強く、自分に求める水準も高く設定されているのです。

でも、Aさんには

「できていない部分」もあれば、

「できている部分」

もたくさんあるのです。

「できている部分」は当たり前。

「できていない部分」

を見つけるとマイナス評価。

これでは、いつまでたっても自分の評価がプラスに転じることはありません

Aさんも、

「確かに私の計算方法だと、

マイナス何万点とかですね」

とうなだれていました。

「自分はダメだ！」

と思った時、

「自分の〇〇の部分は良くなかったけれど、□□の部分はできていたよね」

と、言い換えてみてください。

できなかった部分とできていた部分を

分けて考える「クセ」

をつけてみてください。

「人間は、たくさんの『部分』が集まって出来上がっているんですよ」

とAさんに伝えると、Aさんは、

「そういえば、昔それに似たことを聞いたような・・・・。

地球っていうか、地球儀でもいいんだけど、自分からは半分しか見えないけど、反対側にも沢山の国があって・・・、でも自分に見えている部分だけを意識すると、反対側にまで意識がいかないっていうか・・・。

何か、昔は何が言いたいのかサッパリわからなかったけれど、今ようやく分かった気がしました！

ようするに、自分に見えてない部分も見るようにせよってことですね！」

と言ってにっこりしました

あなたも是非、

あなたが普段見えていない、見ようとしていない自分探しをしてみてください。

きっとあなたの素敵な部分が見つかると思いますよ

自分はダメだと責めてしまう方へ～自分は「部分」の集合体～