建礼門院右京大夫 越えぬれば | わたる風よりにほふマルボロ

わたる風よりにほふマルボロ

美しい和歌に触れていただきたく。

かやうにて、何事もさてあらで、かへすがへすくやしきことを思ひ
し頃、

越えぬればくやしかりける逢坂をなにゆゑにかは踏みはじめけむ

建礼門院右京大夫
建礼門院右京大夫集145


【口語訳】

越えてしまえばなんとも
後悔ばかり押し寄せてくるものです、
そうと解っている逢坂を、
貴方との逢瀬の道を、
いったいどうして
踏み始めてしまったのでしょう。

(訳:梶間和歌)


逢坂:逢坂の関、また逢坂山。
 「逢ふ」に掛けて用いられる歌枕。

なにゆゑにかは……けむ:
 いったいどうして……したものだろうか。
 過去の推量を表す「けむ」が
 疑問を表す語を伴うと、
 過去の原因の推量の意味で用いられる。
 (疑問を表す語を伴わずに
  過去の原因の推量に用いられることも)


藤原隆信の求愛に負けて関係を結んだことを
早々に後悔している歌と。

こういう恋は、ままありますね。