(2)2012年8月 輪島訪問記・揚げ浜式製塩法と「わじまの海塩」の製塩法
今日は、8月24日(木)のレポート。
1日遅れてこの日から、東京からお客様が登場。順天堂大学大学院・加齢制御医学講座・協力研究員のダニエラ志賀さん。

8月18日にお会いしたときに、「来週、輪島や舳倉島に行くんです」と伝えたら、「私も行きたい!」とスケジュール帳を確認し、その場で、飛行機のチケットとホテルを予約なさって・・・、その判断力、行動力に、こちらもびっくりしました。
ダニエラさんに来ていただく以上、この旅の目的を以下のように決めました。
・能登の伝統的な製塩法を知り、「わじまの海塩」の製塩法の違いを理解していただくこと。
・「わじまの海塩」の製塩士・中道肇氏と会って話して、その、人となりやこだわりを理解していただくこと。
・「わじまの海塩」の原料の海水を取水している舳倉島の自然や海のエネルギーを感じていただくこと。
・そして、能登の歴史、食、伝統工芸を知っていただくこと。
以上、4点です。
そこで、最初に行ったのが、輪島市内にある伝統的製塩法、揚げ浜式塩田。

「輪島塩」という名称なんですが、「わじまの海塩」とは別物です。
盛土の上に、海水が地下に染み込まないように粘土などで防水層を形り、その上に粒子の細かい砂を敷き詰めてあります。

体験コーナーで、砂に海水を撒くのをやってみました。
ダニエラさんが挑戦。

海水をたっぷり汲んでしまうと、それだけで重くて持ち上げるのも大変です。

なかなか、遠くに均等に撒くのが難しいのです。
私もやってみました。

海水は、ほとんど真下に落ちてしまいました・・・。
このような作業をして、砂の上に海水を丁寧にまき、頻繁にかき混ぜながら、天日と風により充分に水分を蒸発させていきます。
何日間か続けたあと、その塩砂をかき集めて、海水で洗って鹹水とし、それを製塩釜で煮詰めていきます。
煮詰めていくと、まずこのような灰汁が出るので、その灰汁を取り除きます。
こちらの施設では、その後、脱塩装置で濾過しているそうです。
そして、平釜で、煮詰め、塩を結晶させます。
結晶した塩。
この塩の木箱で、塩を枯らし、溜まった水をたらいに集めます。
これがにがり。こちらの施設のにがりは、オレンジがかっていました。
よく晴れた日でも、午後に洗濯物を干しても、渇きが悪いように、湿気を含む午後の風、秋から冬の風では、海水が蒸発していきません。
揚げ浜式塩田法は、限られた季節、限られた時間、限られた天候のときだけの作業になります。
昔の人は、こうして苦労して、塩を作ってきたのですね。
でも、このような生産性の低い製塩法では、日本人の人口を賄うことができません。
塩を国産で安価で大量生産したいという思い・・・それで生まれたのが、イオン交換膜製法による精製塩だったのです。
この揚げ浜式塩田を見たあとに、ちょっと観光もして(その様子はまた後日に)、次に「わじまの海塩」の製塩所へ。
「わじまの海塩」の製塩法をご紹介しましょう。まず、こちらは、室内でやっています。
海水の上からのオリジナルのランプで熱を照射して、熱と風の力だけで、低温で海水を蒸発させ濃縮させていき、塩分濃度が28%になると浮かんでくる結晶、それが「わじまの海塩」です。
揚げ浜塩田の製塩法を知ったダニエラさんから、「中道さんはちっとも働いていないですね」と笑われてしまったほど、自然の力だけで作っています。
「人は、自然の力に、ちょっと手助けしてあげるだけでいいんだ」というのが中道氏のポリシーです。
わかりにくいですが、海水の表面に浮かんでいる結晶は透明なクリスタル。割れて光の反射で白く見えます。
残った液体(にがり)も透明です。
結晶した塩を集めるのが肉体労働。
スコップを持って記念撮影。
ダニエラさんにも、能登の伝統的な製塩法と「わじまの海塩」の製塩法の違いをご理解いただけました。
明日は、メインイベント、舳倉島訪問記をレポートしますね。