年金問題は支給者である筈の社会保険庁がコンピューター化に伴い多額の受給年金を把握していなかった事で多額の未払い額が発生し、結果的に与党政権にとって致命傷となるに至ったのだが、それにしても複雑だ。


 現行制度では基礎年金と厚生年金、共済年金、国民年金の三本立てなのだが、年金の一元化が課題となっている。

 現在、厚生・共済年金は給料に対して15%の保険料率負担となっており、事業者と本人とが折半して負担している。他方、国民年金は定額制だ(現在、基礎年金だけで年間17万3千円程。これに更に所得に応じて付加年金を支払う事が出来る)。

 年金一元化に当たり、国民年金を所得に対して、15%負担を義務付ける事になる。当然、全額自己負担であり、その事が国民年金加入者に取って大きな負担となる。

 尤も嘗ての年金制度の様に世代間再分配ではなく、運用資金を支給されるようになる為、支給額は不公平にはならないとは言う。


さて、一元化された年金制度だが、これには最低保障所得となる年金と所得比例年金とがある。最低保障額は7万円、年金の支払額が皆無でも最低限支給される額となる。尤も生活保護制度があるのだが、これが事実上、その機能を果たしている事を思えば必ずしも意外ではない。現在、62歳での無年金受給者は全国で72万人に達している。


新政権の構想では歳入庁を設け、納税者番号制を導入し、その上で年金納付率100%を目標としている。現在の保険料納付率は62.1%。世代間格差が大きく、低年齢程、納付率は低下している。凡そこれは当局に対する信頼性の問題だろう。納付額に比して受給額の見返りがあるのか、そもそも、年金受給時まで生存の保障などないし今後、容易に受給年齢の引き上げも予想されるのだが、皆保険が前提となっている事には変わりはない。


因みにこの最低保障分は消費税負担となる。消費税率については未だ決まっておらず、制度全体に対して、四年間の検討期間と5年後の制度実施を目標としている。制度設計だけでもスェーデンでも10年間を要したと言う。因みに現行制度下での支払い分は新制度発足後も保障される。


年金の国庫負担分は1/3から1/2に引き上げられたが、現在の消費税額は7兆円、基礎年金額は10兆円となる。

平成元年現在の年金支払額は総額22兆円、平成18年には47兆円に達している。今後、更に年金支払額が増える事から、消費税率も10年後には20%となる事が予想されている。麻生内閣の与党案は中福祉中負担を打ち出していたが、この新政権案は高福祉高負担路線だろう。


ただ、新政権の方針はあくまで次回総選挙で国民の信を問うた上での導入との事だが、どちらの方針にしても、魔法は起こせない。この制度の成功は、国民一般の制度に対する信頼に掛かっている。