オバマ大統領の支持率が急落している。六割台の支持率が5割台、4割台へとなっている。懸案である国民皆保険制度に着手しようとしている為だ。凡そ先進国はこの国民皆保険制度を採用している。

 アメリカの一人当たりの医療費は年6千ドルを突破している。他の主要先進国だと4千ドル台、医療費が抑制されている日本の2,5倍になる。

 

さて、アメリカがその負担額に応じ、世界最高の医療を受けているか、なのだがこれは明らかに疑わしい。確かにかけられる医療費が無尽蔵ならそれに相応しい高度な医療を受ける事が相応しいのかも知れない。

 

アメリカの保険制度は会社単位の保険が主流となっている。当人・家族のみならずその退職者の医療負担を網羅する。GMの再建の際も退職者の自己負担分の拡大が課題となった。

 尤も、会社負担分は会社にとって大きな労務費の負担になる。従って、その保険対象となる医療は削減されている。

 従って、個人の自己負担も増加する。民間の保険会社も発達しているのだが、これも保険の対象となる医療行為は制限されている。従って、企業に勤めていても、高額医療費が自己負担となる。所謂、中産階級が没落している最大の理由の一つがこの制度故だ。しかも、国際金融危機は大幅な雇用削減を齎している。失業率は既に9%台。10%台を記録するのも遠くはないだろう。


どうしてこうなったのか? 民間保険会社が政治力を有している事もあるのだが、やはり、自己責任社会の論理が国民の中に浸透している。今回の医療改革についても、世論調査の数値では共に4割台だが、反対が賛成を上回っている。かつては無料の医療支援はアメリカ自身が行っていた時代があったのだが、慈善団体がアメリカ自身に対して行っても足らない。


少なくとも日本でも国民皆保険制度は着実に破綻へと向かっている。無保険者への短期の保険証交付は全額前払いを前提としている。漸く、義務教育年限の子供のみの一部負担制度が導入されたが、その一部負担金すら侭ならない。これは介護保険制度で一割負担を求められるように成った為、介護を諦めざるを得ない事態が増加したのと似ている。自己責任原則を基本にしている。生活保護制度は既にその水準以下の生活を余儀なくされている者の方が受給者よりも遥かに多い以上、一種の特権と化している。生保支給は地方自治体財政を圧迫する。申請そのものを受け付けない「水際作戦」や受給者の辞退推進は常識だ。


凡そ今回の総選挙では与党ですら、自己責任社会の見直しを提唱している。尤も、政権公約の信頼性が何時急速に高まったのかは全くの謎だ。結局、どちらに転んでも、単なる努力目標に留まる可能性の方が大きいだろう。


追記:上記の件の追加だが、現在のアメリカの無保険者は4千万人、彼らの為になる保険制度の樹立は、財政支出を伴う事となる。それに反対しての事だ。尤も、無保険者に転落する可能性は基本的に誰にでもある得るのだが、その事を国民に対して、社会的な最低限の保障として認めるかいなかの問題だ。因みに合衆国憲法には日本の様な生存権の規定はなく、「健康で文化的な最低限の生活」など保障する憲法上の根拠はない。尤も、日本国憲法とて、具体的な法規の制定を前提とし、更に具体的な運用には行政当局の恣意に委ねられている。