財務省は予算執行されている内の72事業総額3兆円に対して、その内容が適正に執行されているかについての監査を行う事となった。下水道道路事業等の公共事業から防衛にまで多岐に渡る。因みにこの対象事業規模は過去最高である。その背景にあるのは今年度の国債発行残高が44兆1千億円と過去最高額に渡った為である。

 既に何を今更の感はある。財政支出の使途については、財政が逼迫し倒産が懸念されるなら、使途項目全般に向けて、個々に渡り監査を迫られる所であろう。

 果たして、現政権による財政支出の見直しはいかなるものであったのか、少なくともその費用対効果は図られてしかるべきものであろうし、執行状況について把握されてしかるべきものであろう。行政府である財政当局にとって義務に属するものであろうが、監査自体に費用対効果が迫られており、その対象も限定されざるを得ない。民主党は政権獲得後の公約として、使途項目の徹底見直しを掲げているが果たしてどこまで成し得るものであるのか? なぜ、政権交代が必要なのか、別に与野党とも無数の利益集団の支持を背景としているのだが、既存の政権に措ける利権の排除にその目的がある。財政支出の見直しは例えば人件費なら、民間委託や非正規化の促進と言う形で行われて来た。その利益が護られるか損なわれるかは、結局は政権との距離の問題となる。その意味で政権交代は、また新たな利権確保の為、という意味も充分にあるのだが、恒常化するのか否か、その有無は余りにも大きい。国民全体の利益など代表する集団など法的擬制の上でしか存し得ない。行政当局の法的基盤はその上にあるものだが、果たしてどこまで何を望み得るのか、少なくとも国民生活に多大な影響を有しているだけにその帰趨が問われている。

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