太宰治とは
1909年生まれの青森出身の作家。東京大学仏文科に入学し井伏鱒二に師事。卒業後に執筆した「走れメロス」「斜陽」「人間失格」があまりにも有名。妻がいたが、1948年に愛人と一緒に玉川に入水自殺している。芸人で初めて芥川賞を受賞した、ピースの又吉直樹が敬愛する作家でもある。
【ヤクに溺れた太宰治氏】
急性盲腸炎で入院した時に、鎮痛剤としてパビナールを使用したことで、彼は重度のパビナール中毒になってしまう。
パビナールとは、戦前に麻酔など、治療目的で医療用に使われていた薬品である。現在は麻薬指定されており、劇薬であると国で認定されている。劇薬のなかでも半合成麻薬と分類され、アヘンの成分が配合されているため処方すると逮捕される。
似ているものでヒロポンが有名である。戦後直後に精神安定剤として広く知られ、多くの著名人がタバコのように愛用していたという。しかし、ヒロポンにも激しい副作用があり、麻薬指定されている。大阪の夫婦漫才師のミスワカナは、所要での移動中にヒロポンの副作用で発作を起こして、西宮北口で急死している。
太宰の話に戻そう。彼は薬を買うために、小説家仲間や高校時代の友達に声をかけて金を一生懸命工面した。金が尽きると、編集者に泣きつき、いつも借金を頼んでいた。もうこれがないと生きていけなくなっていた。
彼は、編集者以外の人間に「自身がヤク中であること」を悟られないように、必死に薬のことを隠していた。客人がいる時は、トイレに妻を呼び寄せてわざわざ注射させていた。量は次第にエスカレートしていく。
彼は「君も打ってみないか?頭脳明晰になるよ」と友達に勧めるようになり、パビナールがなくなると薬屋に行き、泣きながら土下座をして薬をもらっていた。それでも、もらえなければ形相を変え、薬屋をひどく罵った。この頃になると、耐性がついてしまい、服用量は常人なら致死量になるほどの量になっていた。
困った妻は井伏鱒二に相談し、意見を聞いた結果「肺の病気の治療」と嘘をつき、彼を精神病院に入院させた。
ちなみに・何度も映画化されている「人間失格」はヤク中の時に書いた作品である。