1986年2月1日、盛岡駅に近いショッピングセンター「フェザン」のトイレ内で中学2年生の男の子が首を吊って自殺しているのを警備員が発見した。翌日、その男の子は東京都内の中学校に通う2年生であることが判明。
中学校側の報告によると、彼は小柄で温厚だったため上級生や同級生になめられており、パシリをしたり、常に暴力を受けていたという。さらに担任も事勿れ主義だったためそのことに触れず「単なるおふざけ」としか思わないようにしていたという。
同級生は「サンドバッグ代わりに殴ったりしていた」そうで、不良グループは彼のことを何をしてもいい存在になっていたと話している。
「葬式ごっこ」
自殺する3ヶ月前にクラスで彼を死んだことにして色紙や花を用意した「葬式ごっこ」があった。黒板の前に彼の机を目立つように置き、机の上には丁寧にミカンや彼の遺影に見立てた白黒の彼の写真、花を挿した花瓶を置いた。
色紙には「死んで良かった」「バンザイ」などと度の超えた悪口が書き込まれており、数人の教師の署名もあったという。教師たちは生徒からは「ドッキリだから」と言われて書いたという。
さらに教室の彼の名前の書かれた係の名札は黒く塗りつぶして捨てた。「もう死んだから」ということで。
彼はそれ以前からクラスメイトから無視をされており、その葬式ごっこは無視の延長に過ぎなかった。
・パシリで先輩からもらった1000円でジュースを買うが、残りの小銭を渡さなかった。後日問いただすと「使ってしまった」と言ってきたので先輩に青年館の空き部屋に連れていかれて殴られる。
・始業式の日に階段の踊り場で何人かに殴られる。血の付いたカッターシャツをカバンに隠そうとしているところ、先輩に殴られる。
彼はいじめから逃れるために秋頃から欠席が目立つようになっており、病院の待合室などで時間を潰していたという。
1月30日、息子が家に帰らなくなった。父親は必死に彼の行きそうな場所を探し回るも見つからなかった。息子が行き着いたのは岩手県盛岡駅だった。父親の故郷であり、里帰りの際に訪れた場所だった。
しかし中学生でお金もないので体力も気力も限界に達していた。そして....
駅前ビルのトイレにこもり、ビニール袋を紐状にして荷物掛けに引っかけた。
遺書を書き、彼は静かに息を引き取った。
カバンの中には数日分の着替えと年賀状、写真が入っていた。その中には父親からもらったサンシャイン60の入場券3枚のうち、1枚を使っており池袋を訪れている。
さすがに他人の遺書を書くことは人間としてどうかと思ったのでやめておく。