第3章「家で逢えたら」
上級生にいじめられていた杉町さんに話しかけた裕紀はとりあえず保健室に彼女を連れていき自分の教室へ戻った。保健室にそのままとどまって話を聞こうとも考えたが同じクラスの奴に
「2人どこ行ってたの?やっぱりデキてるんじゃないの?」
と言われるかもしれないと思い、この行動をとったと思われる。
その日の午後、部活が終わり下校途中に杉町さんが歩いていたので裕紀は話しかけた。
「あっ、確か文芸部だったんだよね」
「えっ?あっ、今日は早く抜けてきたの」
「そうなんだ....ねぇあの、スマホ持ってる?」
「持ってるけど、何なの?」
「LINE交換しとこうよ。同じクラスだし。何かと役に立つかも」
そう言うと裕紀は紙切れに杉町さんに電話番号をかかせた。友達登録をするつもりである。
帰宅後、彼は携帯を取り出し、電話番号を入れ、登録する。初めて下の名前を知る。
「愛美。これでまなみちゃんか....」
授業中、隣の席のやつに裕紀は質問された。
「なあなあ、杉町のこと好きなのか?」
「....えっ?」
「お前ちょっと杉町好きなんだろ?」
「そんなことないよ」
「でもお前、杉町とよく喋ってるだろ?ちょっと怪しいぜ。好きなくせによ?」
「違うよ。違うよ。んな訳ないじゃん」
「....へぇ」
学校生活でよくある定番話である。裕紀が杉町さんとよく話しているのでちょっと生徒のあいだで噂になっていた。すると、不良たちもそのことをかぎつけて裕紀の前にやってくる。
「お前、デキてるんだろ」
と言いながら彼のまわりを囲んできた。
彼はもちろんのこと否定するがこんなことは聞き入れられず1発殴られた。
「お前がデキてるなんて1万年早いよ」
「ふざけんな、まだ俺もヤってないのに」
殴られ責められる彼を愛美は見つめている。
ここからは杉町さんのことを愛美と書くことにする。
そして帰宅後、LINEで彼は愛美にこう打った
「もう、話すのをやめよう」
「なにがあったの?」と愛美。
「いや、聞いてもいい?俺のことどう思ってる?」
「は?友達だけど?」と愛美。
「そう....じゃ良かった。正直、杉町としゃべってるとよくからかわれるんだよね。そもそも男と女が話すっていうこと自体間違いなんじゃないかな?」明らかにおかしい裕紀。
「なんで、そう思うわけ?」と愛美。
「何て言ったらいいかわかんないけど、ごめん。とりあえずごめん」
「何であやまるの?おかしいよ」と愛美。
そこから彼の返答はくることはなかった。
その後、彼はからかわれるのを恐れて愛美と全く関わらなくなった。
愛美が話しかけてもそっけなくなった。
彼はこのことについて事情聴取でこう述べる。
「不良のやつらに絡まれると何かと面倒くさいので関係を一旦絶ちきろうと思ったんです。口ベタなもんでひどいことをしたな、って思ってて。そして愛美ちゃんも話しかけてこなくなりましたよ。」
LINEで連絡も取らなくなった。あの日がくるまで....