星組 RRR/Violetopia 3/16ソワレ(東京宝塚劇場) | 晴れ、ときどき観劇。

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30代OLの日常ときどき観劇、たまに旅行

 

 

 

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観ました!

マジで楽しすぎて観劇の3時間が秒で終わりました。びっくりするくらい一瞬の出来事だった。

宝塚大劇場千秋楽配信を見ていたので流れはもちろん分かっていたのですが、やっぱり劇場で観るのが良いわあ。

 

 

ビーム@礼真琴さんが素晴らしい。森に生まれ、無知だった。文字も読めなければ「独立」という言葉の意味さえ知らなかったかもしれないけれど、仲間への愛を、友情を、誰の前にも膝をつかない不屈の魂を持つ男だった。隙のない身のこなしと曖昧で柔和な笑みと、獣のような眼差しと、控えめな態度と、折れない心。圧政に虐げられて挫けそうな人たちの中に反抗の火を灯し、反逆へと向かわせる。完璧ではない、完璧ではないと自分自身が一番良く知っている、どうにかしようと藻掻き苦しんでもいる、だけど人々が手を差し伸べられずにはいられないし、同じ方向を見たいと思わせる「なにか」を確実に持っている。もちろん演じるのが上手い人だと知っているけれど、彼女の中にある泥臭いひたむきさをそのままぶつけたようなお役だったように思います。この役を琴ちゃんが演じるからこそ成立する作品だったし、よくぞこの座組にあててくださった、タカヤ先生。

 

・そしてラーマ@暁千星さん。映画と比較するとかなり薄められていたとは思うけど(全量描いていたら時間が足りない)、自らの目的のために同じ国の人を踏み台にすることを覚悟している人で、誰に恨まれ罵られても構わないと無表情の仮面の下で自分自身を罵り、歯を食いしばっている人。苦しむ暁千星なんて、悪い暁千星の次くらいに大好物ですから。しかも軍服を着ている!2種類も!!……どこまで行っても脳味噌がスポンジのような自分がいっそ憐れになってきますね……

・そんな、映画だとひとりで牢に入れられ処刑を待つことになるラーマの傍に、ずっとヴェンカタおじさま@ひろ香祐さんが寄り添ってくださるのが、もう本当にたまらないわけです。過去の出来事と決意を手厚く描けない分、運命を共にすると決めた人がたった一人いることで逆に孤独が際立つわけですね。勉強になります。

 

ジェニー@舞空瞳ちゃん。「叔父夫妻に拒絶感を持つ理由」は、映画でも舞台でも「同じ人間であるインド人を虫けらのように扱うから」としか描かれていなかったけど、そしてヒロインとしてはそれで十分なのかもしれないけど、他にも理由がないと「見取り図や警備の配置図」まで持ち出して積極的にビームの味方をするっていうのは…本来的には無理がある。そこを舞台は「鳥かごに閉じ込められた自分に、ビームが外には広い世界があるのだと教えてくれた」という構文にすることで美しく解決していて実に宝塚。私なら「実は叔父が父と母を殺した」とかにする。(ただでさえ情報量が飽和しているのに情報を追加するダメ脚本家)

・そしてジェイク@極美慎ちゃんをジェニーの婚約者として描いた都合上、かもしれないけど、ジェニーとビームを「特別な友情」でとどめたのもうまいなと思いました。もしこれで、自分に協力して内通に加担までしたジェイクをポイしてビームに行くような女だったら、観劇中はニコニコしてるかもしれないけど家に帰ってお風呂に入ってベッドに入ったあたりで「…ジェニーって実は嫌な女じゃない…?」と悶々とするところでした。

・ジェニーが今いる場所を窮屈に感じるジェイクの自信満々な役作りも良かったですよね。けど籠の中の小鳥が逃げ出そうとしているのに慌てて、一緒に飛び立って、見守って、手を差し伸べる…ちゃんとジェニーのことを好きで、遠くない未来に尻に敷かれていそうなジェイク。可愛い。

 

・なんでも直しちまう親方@大輝真琴さん奥さん@白妙なつさんご夫妻も素晴らしくいいんですよ。映画では本当に何も知らない修理屋さんだった…はずですが、本作ではビームの正体に気付いている。知らないふりをしている。ビームが使命を果たしたら命を落とすかもしれないことに心を痛めて、でも余計なことをすまいとじっと耐えている。イギリス人の横暴にも耐えて、頭を下げて、自分たちの手の届く範囲でビームを守っている。できもしないことをやろうとするより、自分のできることを精一杯やっている人を私は尊敬する。

 

・別に村の仲間たちのことを言ったわけじゃないけどね!?でもペッダイヤ@天華えまさんジャング@天飛華音くんラッチュ@稀惺かずとくんも、揃いも揃って「やるな」って言われたことをするからね…ほんと…勘弁してくださいよ…。けど、彼らがいくら夜な夜な六本木のクラブでブイブイ言わせるような美形集団だったとしても、やっぱり「森で生まれ、無知だった」集まりなんだなあと思わせる。一手先までしか見えない。藤井聡太に二手で負ける。可愛いね。とはいえ仲間のためなら負けてもいいと覚悟もしていて、やっぱりかっこいいね。顔だけじゃないね。

 

・イギリス側、スコット総督@輝咲玲央さま、奥様キャサリン@小桜ほのかさまエドワード@碧海さりおくん。この3人ことごとく上手くて最高でした。悪役が上手くないと話が始まらないですからね。ディズニーの悪役みたいな、キャラクターの立った悪役に徹しているのも最高。キャサリンさまとエドワードは微妙に仲が悪そうでチャーミングさもありつつ、人を人とも思わない倫理観よ。…でも、多少なり誇張しているとはいえ(そうであってほしい)、植民地支配をする側の倫理観なんてこんなものだったのかもしれない…と思うと心底ゾッとする。ゾッとする価値観を持てる、共有できる国に生まれてよかった。

 

・この作品の空気感を作り上げているのは、紛れもなくSINGERRRFIRRREWATERRR。たぶん観劇された皆様も異論ないことでしょう。ボイスパーカッション(?)から、歌い上げ、さやかな流れが大河のうねりとなる水、風を巻き込み天に届くかのごとく燃え盛る炎。神話なんですよね。血の滴る人々の物語であり、語り継がれる神代の物語でもある。面白いなあ。

 

 

ショーは、退廃と幻想、私がいたいけな小・中・高校生であれば一撃で必殺されていたことと思いますが、さすがに間もなく38歳のいい大人なので踏みとどまりました。危ないね。でもお衣装が、私が理想とする色使い・デザイン・シルエットだったら、38歳王手の大人でもツルッと足を滑らせていた可能性は否定できません。

 

 

…が。実はもう1回観劇のチャンスが残されているのですよ……。

 

私がいきなり「VIOLEROPIA考察」みたいな長文記事をアップしはじめたら、あああの38歳こんなところで沼に落ちたんだな…とあたたかい目で見てやってください。