晴れ、ときどき観劇。

晴れ、ときどき観劇。

30代OLの日常ときどき観劇、たまに旅行

 

 

放心

 

 

 

 

 
 
結果、買ったばかりのハンカチを遺失しました。無念。

 



ベルばらを生で観劇したのは月組と雪組と宙組の大劇場公演くらいですが、映像を含めると結構なバージョンを見てきたように思います。が、ジャンヌが出るバージョンは初めて見たと思うし、知っているのに新鮮なお芝居もあり、新曲あり、そしてフィナーレがまるごと別作品だし、かなり新鮮に楽しみました。

・暗め金髪?明るめ茶髪?のハーフアップに宮廷服のフェルゼン@彩風咲奈さまが麗しいわ…。カウチに腰を下ろして本を読んでいるときとかメルシー伯爵と話しているときの脚の角度が素晴らしすぎて舐めるように見た。咲ちゃん逃げて!
ジェローデル@諏訪さきさんからバスティーユの顛末を聞いたフェルゼンによるモノローグとセ・ラ・ヴィ・アデュー(?)が新場面だと思いますが、個人的にはどうなんだろうな、と思いました。大意として言いたいことはもちろん伝わってくるんだけど、この場面のフェルゼンの独白として…あと一刻も早くコンシェルジュリーに行くべきシチュエーションとして……ねえ…
・フランスの王宮で居場所がなくて(不倫してるからそれはそう)、スウェーデンに戻っても居場所がなくて(フランスの王妃と不倫したからそれはそう)、白い眼で見られる咲ちゃん、かわいそう。かわいそうなんだけど…白い眼なんだけど…次から次に色んなパターンの宮廷服やら軍服マントで登場されるから、客席はうっとりよ。シッシーナ@杏野このみさんだけじゃないわよ。ところでこの回は咲ちゃんを観に来られた団体さんがいらしたようで「今日のヴェルサイユはフェルゼンのファンがたくさん来てるわよ」と言われていましたね。モンゼット@万里柚美さまも「ごめんなさいね私のオスカル」言うてましたよ。(負けたか…と呟くオスカル)

・美しいお人形から女になり、そして王妃へと変わっていくマリー・アントワネット@夢白あやちゃん。もう素晴らしいですね、大芝居の言い回しを自分のものにして、緩急をつけて感情の波を表現して。
・今までアントワネットって同じところを行ったり来たりしているように見えていたんですよ…覚悟を決めたのかい?決めてないのかい?どっちなんだい?みたいな。(なにかの残像)それが、徐々に、でも着実に、覚悟を決めていく女に見えた。すごいや。
・牢獄でフェルゼンに呼ばれたとき、嬉しそうに夢見るように「フェルゼン」と呟いて、それから呼ばれたのが幻聴ではないと徐々に気付いて驚愕と恐怖に染まっていくのが素晴らしかった。夢のなかで彼に呼ばれるのは至福でも、牢獄に彼が来ることは互いの破滅を意味しているから。
・この場面でなんとなく今までのマリーに感じていた揺らぎを、夢白マリーからは全く感じませんでした。それは彼女が潔く諦めたからじゃなくて、王妃としてそうあろうとしているからだと、縋るようにステファンを抱き締める腕から伝わってくるの。なんて切ないんだ…!

・それから、もう、オスカル@朝美絢さんが素晴らしく良くて…!これオスカル編もやらん?やろう??幼少期もなければ父親をはじめとした家族とのシーンもなし、間抜けな衛兵隊♪との衝突と融和もなし、市政の民を視察して衝撃を受ける場面もなし、ジェローデル君との婚約話も思い余ったアンドレの毒殺未遂もなければ結核で余命いくばくもなさそうな描写もなしなので…なのになんで、こんなに心が震えるお芝居をできるんだろう。
・男装をして父の望む通り、自分自身も理想とするとおりに宮廷で生きているけれど、女性としてフェルゼンに惹かれ、でもその恋心を封印して覚悟を決めて与えた忠告を踏みにじられる。それも、「君は恋をしたことがないのか」と傷付ける気満々のセリフで…オスカル!そんな男やめときな!!でもカッコイイよね、分かる!
・そりゃあ間抜けな衛兵隊だって隊長に心酔して付いていくわ…と理解できる納得の求心力。でも、やっぱり、アラン@眞ノ宮るいくんとのバチバチの決闘とか見たかったよ~~!からの仄かな思いを寄せられちゃうオスカル様見たかったよ~~~!!
・前からのつながりが一切なく、フェルゼンの手紙で「アンドレは君のことを愛している」と知らされて→「私たちは子供の頃から兄弟のように、兄弟以上に共に生きてきた…」の独白→今まで男性として見たことのなかったアンドレを初めて男性として意識→自分のなかに実はアンドレへの想いがあったことを知り→「…お前は私が好きか?」に繋がるのが、これは近年まれに見る強引さですし無理筋にも程がある…のに…ストンと納得してしまうんだよ~~~朝美さんの演技力が怖い。
・怖いシリーズだと橋の下、ブイエ将軍@悠真倫さんに啖呵を切るところの抑制と爆発が素晴らしくて、感動しちゃった。軍隊のなかで絶対的に弱い女という立場で、家の後ろ盾や仲間の手助けがあって隊長という立場に就き陣頭指揮を執ることができている彼女自身が、国という大きな枠組みのなかで絶対的に弱い立場の者たち=市民、であるならば今まで自分がそうされてきたように、彼らに手を差し伸べよう、という結論に至るのがあまりにも自然なんだ…
・からのバスティーユ、毅然と、決然と、でも軍人らしい捕食者の顔も見せながら…、敵に向かい、そして斃れる。あまりにも美しいし、悲劇的で神話だし、あと、朝美さんの顔が可愛い…いや本当に…めちゃくちゃ可愛い…復讐に駆られるくノ一でもなければ裏家業の男の愛人でもない、太陽の下をまっとうに歩んできた女を演じる朝美さん可愛すぎる……結婚してくれ、アンドレと……

 

アンドレ@縣千さん、身体表現やお芝居は素敵で、オスカルへの迸る想いがめちゃくちゃ伝わってきて。今宵一夜で抱き締めたときが彼女を初めて女性として扱うことを自分に許したときであり、ずっとそうしたいと思っていたのだろうと分かる優しくも情熱的な指先が堪らなかったです。キャー!!!(凝視)(ゴクリ)

・一方で、フェルゼンさまにオスカルを託されたように……咲ちゃんに朝美さんを託されたように…、盤石に支えて欲しい、という観点からは……セリフと歌を……頑張ってほしいのであります……。

 

・一幕ラストでフェルゼンがスウェーデン近衛隊(?)とやり合いながらも、国王グスタフ3世@夏美よう様の許しを得て革命の渦中にあるパリへと向かう場面。…って書いてて思い出したんですけどグスタフ3世って白夜の誓いの?あのグスタフ3世の晩年ってこと?調べたところ46歳で逝去されてて1789年ごろは43歳くらいなんだ。なるほど~

・話を戻して、マントを肩に掛けたフェルゼンが客席を駆け抜けてパリへと向かうわけですよね。私、自分が取ったチケットが2階席だと思っていたので1幕ラストにはあんまり期待していなかったのですが、入場してみたら1階席だったしフェルゼンさまのお姿をバッチリ見られたのでラッキーでした。ゆっくり振り返って見得を切って出ていかれるフェルゼンさまでした。

 

・全体を通して、歌舞伎なんですよね。それは「大芝居」ということだけじゃなくて、「皆様ご存知の長い芝居の美味しいところだけ演る」という意味でも、歌舞伎。なので、描かれていないからといってそのシーンが存在しないということではなく、今回描くシーンとしてチョイスされなかっただけ。そのお約束が通じるからできることであり、お約束を無視すると途端に断片の集合体(いわゆる紙芝居)になってしまう。

・といっても私も原作を読んだことがないうえに宝塚版で偏った知識を入れてしまっているから、ただしく受け取れているかは不明でありつつ、歌舞伎の楽しみ方ならまあ心得ているので…ある意味ツッコミを入れながら楽しむのも歌舞伎なので…そう深刻に捉えすぎずに自分にとって余計なところは横に置いといて都合のいいように脳内で補完して楽しむのがいいのかなと思いました。

 

・で、よ。王妃様が断頭台への階段を、天国へと上っていく道を歩んで、「王妃Summer!!!!」とフェルゼンが沈んでいって、お約束としては黒燕尾のオマージュですかね?というか私が見た唯一のフェルゼン編(壮さんのやつ)がオマージュだったのかな。薄暗い中を男役がしずしずと降りてくる荘厳なやつ…を…なぜか来ると思い込んでいたので、薔薇たちが駆け込んできたので仰天しました。エ…!!!

・そして赤いお衣装に赤い大羽根を背負った咲ちゃんが降りてきて踊る!これか~~!大羽根が二重になってるし、さらに三番手羽根くらいのサイズのが3重くらいに重ねられてて、めちゃくちゃ重そう。千秋楽までご安全に…!

・薔薇のロケットガールズたちがハケると、青いお衣装の男役たち&赤を脱いで白のお衣装になった咲ちゃんが踊る。この…、男役さんたちの青い衣装が…!変わり燕尾の裾がドレスみたいにたっぷりの布を使っていて…!その裾を捌く、主に久城あすさん真那春人さんが最高すぎて、釘付けでした。お二人ともタイミングや角度はかなりシンクロしているんだけど、久城さんは娘役のドレスさながら優雅に繊細に柔らかく翻していて、一方真那さんはスパッ!サッ!!と切れよく翻していて、どっちも好きすぎて…でも…やっぱり…久城先生に軍配かな…!!?!?

・一方そのころ、バサ!バッ!!(足に絡まりそうで鬱陶しいというか邪魔そうというか)と扱う、踊りがキレキレの眞ノ宮るいくんもかなり好きでした。みんなちがってみんないい。

・からの…咲ちゃんが残って青いドレスの娘役さんとの踊りになり……、水色ペアの朝美・夢白が降りてきてトリプルになり、そして総踊りへと突入するのと、咲ちゃんの上着が花嫁のドレスみたいなレースの素敵なやつに変わるのとどっちが早かったのでしょうか。すみません必死でオペラ上げてたもんで。変わり燕尾で、いつもより女性的に(お化粧でそう見えるのかな?)踊られる朝美さんが、倒錯的でさ…!!!

・そんな余裕が、私にもありました。本編ではいまいち没入できなかったセ・ラ・ヴィ・アデューのアカペラ…!ア・カペラはアカン…!!!

・そしてソロでいのちを燃やし尽くすように踊り、去っていく咲ちゃん。トップスターの美しい去り際でした…こんなの…彩風咲奈サヨナラショー第一部じゃん……

・パレードの組子がハケて、空の舞台に咲ちゃんが降りて来られるというのは知っていた。曲が…!まさかの「宝塚わが心のふるさと」…!!!別にずっと静かにしてたけど、絶句しました。彩風咲奈サヨナラショーじゃん!!!!

・咲ちゃんが銀橋に出てくるあたりでベルばらの世界の住人たちがドヤドヤ客席に現れ、変則手拍子を促し、オスカル様っ!王妃様っ!フェルゼンSummerぁあああ!!!!はわ…絶望的に目が足りなかった………と、フラフラになって劇場を後にしました。開演前に購入したバラのハンカチを置き去りにして。

 

くう〜

ドン・ジュアンに持ってこうと思ったのにな…(という邪念が天に届いてしまったのかもしれない)

 

赤い薔薇のハンカチを握りしめられないことは残念ですが…、スキップで御園座に行ってきます。