町を歩いている
雨が降っている
歩き疲れて、見慣れた公園のベンチに座った。
叩きつけるように降ってくる雨に抗うことなく、静かに目を閉じる
俺が行く場所なんてない
俺が生きる場所なんてない
もういっそこのまま…
メンバーには別れも告げず、勝手に事務所を出た。
アパートもその日のうちに出た。
どこに行くか、考えるのにも疲れてしまった。
こうして目を閉じていると、あいつの顔が浮かんでくる。振り払っても、振り払っても浮かんでくる。瞼の裏に焼き付いているのかもしれない。
…参ったな
誰かの前で涙を見せるなんて初めてかもしれなかった。
俺は優しさに甘えて、よりによって一番大事で、一番心配させたくないやつに弱さを見せた。
一番傷つけたくないやつで、自分自身を慰めた。
そしてそのまま姿を消した。
最低だ、俺。
一番辛いのは俺じゃない。
空を見上げて、愛しいあいつの名前を呼ぶ
『……◯◯』
返事があるはずがないのに。
自嘲気味に笑う
濡れた服や髪の毛が、容赦なく体温を奪っていく。
そういえば、飯も食えてねぇな。
金がない訳じゃない。
食う気がしないだけ。
目の前が霞んできた。
死ぬのかなー。
最後にあいつの顔、見たかった。
最後に抱いた女が、あいつでよかった。
浮かんでは消え、消えては浮かんでくる思い出達。
まるでキミノカケラだな。
カミセンの楽曲が頭に浮かび、振り払う。
ーもう歌えねーし。
そのまま俺は意識を手放した。