魂の奇跡　第５０回　第７０回選手権大会　総評　

和製フリット・石塚啓次

キャッチフレーズ『はじまりの予感』の通り、サッカーの新時代を担う、将来が楽しみな好素材が、熱戦を繰り広げた。桐蔭学園、帝京などが早々と姿を消し、波乱含みの大会となったが、その中で国見が安定した戦いぶりで２年ぶり３回目の優勝を飾った。

平日ながら４万５０００人を集めた快晴の国立競技場。前半２５分。割れんばかりの歓声が上がった。

夏の総体から小嶺監督は井上をトップにあげた。『彼は頭でだけは勝つんです。彼が競ってくれていれば相手のマークがつく。その分、中盤の三浦や永井が自由に動けるし、チャンスにつなげられる。』という狙いであげた井上が、期待以上の働きを見せた。ベテラン小嶺監督の読みが見事に的中したといえるだろう。

一方の山城は立ち上がりから動きが鈍く、チョックの反応が遅かった。前田監督によれば『今日は怪我人がでているので、一人ひとりの負担が多くなってきた。三浦君や田尻君、永井君らの素晴らしいドリブルに対応しきれなかった。』という。しかし今大会、山城は旋風を巻き起こした。１回戦では郡山を今渕の４得点、川勝の２得点などで８-０と大勝。続く２回戦は優勝候補の桐蔭学園に先手を取られたものの、川勝の同点シュートで追いつきPK戦で４-３と下した。３回戦は金沢桜丘を３-０と突き放してベスト８に進出。

準々決勝は昨年覇者・四日市中央工を押されながらも得点を許さず０-０からのPKで３-２と競り勝って準決勝進出。その準決勝は、個人技とパワーに優る習志野。

山城は、ぶ厚い守りで対応し、今渕の高さと速さを軸に攻めGKから素早い攻撃で先制。後半にも今渕が決め２-０。その後１点を返されるが、２-１で逃げ切り決勝進出を決めた。

３１年ぶりに決勝進出を決めた山城だったが、王者・国見の前に２-０と敗れ去った。

『５、６試合連戦した上での決勝戦で、あれだけ力強い走りができ、しかも個々の技術が高く、それぞれよく生かされているのは素晴らしいことです。』山城の前田監督は、そう王者を称えた。

２得点をあげた友近聡朗

この大会で注目カードは、

①準々決勝　習志野－静岡学園

習志野の高い個人技でのプレーに静学も本来の丁寧なつなぎからスルーパスでの攻め。先手をとったのは習志野。前半終了間際、川村豊②がシュートのこぼれ球を頭で押しこんで先制。静学は後半、CKからエース山村博土③が決め同点。さらに鈴木紀昭②－山村で逆転。試合は決まったかに見えたが、終了１分前に、CKから崔岡伸安③がヘッドで決め２-２。追い上げた勢いの習志野がPK戦を６-５でものにしてベスト４に駒を進めた。

②３回戦　帝京－南宇和

前回王者として２回戦から登場した帝京は、高松商を５-０と一蹴。大会NO１ストライカー松波正信③が２得点、ユース代表の司令塔・阿部敏之③が２得点。黄金コンビの活躍に呼応するかのように、主将・丸山良明③を軸とする守備陣も余裕の守りで完封。連覇する力を存分に見せつけた。

しかしその行く手を阻んだのが、３回戦屈指の好カードの相手、南宇和だった。

南宇和は総体、ユースと３度目の対決となる室蘭大谷を２-０、真岡を友近聡朗③、大木勉③の２トップで４得点。４-０で退けた。帝京戦でも友近が２得点をあげる活躍で２-０と快勝。帝京の野望を打ち砕いた。

帝京の超高校級コンビを封じたのは、南宇和・玉田純也③が張りついて仕事をさせなかった事がポイント。周囲のこぼれ球を拾いフィールドを広く使い、速攻から友近、大木の２トップがFWとしての自分たちの仕事をきっちりこなした。

③２回戦　桐蔭学園－山城

関東大会優勝、全日本ユース３位で優勝候補最右翼、好守のバランスは大会NO１といわれた桐蔭学園の２回戦での敗退はあまりにも早すぎた。DFの大黒柱・廣長優志②、森岡隆三②、山田卓也③MFには加賀見健介③、主将の小池啓介③、トップは長身の杉山智将③、三上和良②控えにも橋本研一②、米山篤志①、村田教生②、盛田剛平①と質・量ともNO１の布陣。エース石塚を欠いた山城は、DF松本正也③を中心に粘り強い守りから、今渕泰史③、川勝博康②のスピードを生かした速攻を狙って対抗。前半２２分、山田がPKを決め先制した桐蔭だが、その直後小林昭弘③のロングボールに川勝が走りこんで同点。後半も桐蔭が圧倒的にボールを支配するが山城のDFを崩しきれず１-１でPK戦に突入。

過去２回の出場でいづれもPK戦で敗退している桐蔭は２人が失敗。またしてもPK戦で涙をのんだ。

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