【新NISA】バランスファンドはなんのため?初心者こそ「オルカン+現金」で始めるべき理由~20年
【新NISA】バランスファンドはなんのため?初心者こそ「オルカン+現金」で始めるべき理由~20年後の未来図で検証~読む時間の目安:約8~10分です目次 はじめに: 「NISA、何を選ぶ?」多くの初心者が直面する「最初の壁」 投資の基本: 「自分に合ったリスク」で「続ける」ことの大切さ コアとなる投資先: 「オルカン (全世界株式)」を選ぶシンプルな理由 実践シミュレーション: 21年後の未来図~3つの積立戦略を比べてみた~ なぜこの3つの戦略を比べるのか?~ 「オルカン70%」の意図~ グラフが語る 「オルカン+現金」戦略の大きな可能性 「いつか熟練者になる」あなたへ 生涯投資枠を最大限に活かすために まとめ: 最初の一歩を賢く踏み出し、NISAで豊かな未来を1. はじめに: 「NISA、何を選ぶ?」多くの初心者が直面する「最初の壁」新NISAが始まり、「今度こそ投資を始めよう!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。でも、いざ始めようとすると、「どの商品を選べばいいの?」「リスクは怖いけど、どうすれば…?」と、最初の壁にぶつかることも少なくありません。特に投資初心者の方にとって、「リスクはできるだけ抑えたい。でも、将来のためにはしっかり増やしたい」というのは共通の願いですよね。そんな時、手軽に分散投資ができる「バランスファンド」は魅力的に見えるかもしれません。しかし、本当にそれが長期的な視点で見たときに、あなたにとって最善の選択でしょうか? この記事では、特に「投資はしたいけど、大きなリスクはまだ怖い」と感じる投資初心者の方が、将来の成長も諦めずに、NISAの生涯投資枠を賢く活用していくための一つの戦略として、「全世界株式(オルカンなど) +現金」という組み合わせの有効性を、具体的なシミュレーション結果を交えながらご提案します。2. 投資の基本:「自分に合ったリスク」で「続ける」ことの大切さ投資の世界には「絶対の正解」はありません。どんな専門家がおすすめする投資法も、それがあなた自身にとって心地よく、長期間続けられるものでなければ意味がないのです。 NISA口座の評価額の変動は気になるものですが、大切なのは、NISA口座の中身だけでなく、銀行預金などの『現金』も含めたご自身の『お財布全体(総資産)』で状況を把握することです。例えば、NISA口座のオルカンが一時的に値下がりしても、現金も含めた総資産で見れば影響は限定的かもしれません。このように、一部分だけでなく全体像で捉える習慣は、市場の動きに冷静に対応し、長期的な投資を『続ける』ための重要な土台となります。これは、投資家として成長していく上で自然と身についていく視点でもあります。特に投資を始めたばかりの頃は、多くの場合、毎月の収入から生活費を引いて、投資に回せる金額(余裕資金)は限られています。そして、その限られた金額だからこそ、「この投資額が一時的に40%減ってしまっても、なんとか生活は続けられる」という範囲で始めることが、精神的な安定につながります。投資したくてもできない、毎月の余裕資金を入れるだけ、という状況は、実は自然とリスク許容範囲内の投資になっていることが多いのです。頭では「期待リターンが高い方が良い」と分かっていても、日々の値動きにハラハラドキドキして夜も眠れないようでは、投資を続けること自体が苦痛になってしまいますよね。大切なのは、自分が納得できるリスクの範囲で、無理なく、そして市場から退場せずに「続ける」こと。これが長期的な資産形成の最も基本的な原則です。3. コアとなる投資先: 「オルカン (全世界株式)」を選ぶシンプルな理由では、NISAの非課税枠という大切な「器」に、どんな「中身(投資対象)」を入れるのが良いのでしょうか? この記事では、長期的な資産形成のコアとして、「全世界の株式に幅広く分散投資する、低コストなインデックスファンド」、その代表例である「eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー)」(通称オルカン)を推奨します。その理由はシンプルです。徹底的な分散投資により世界中の企業の成長の恩恵を期待でき、低コストであるため長期投資の足を引っ張りにくく、そして市場の成長をまるごと享受することを目指せるというシンプルさにあります。もちろん異論はあるでしょうが、「多くの人にとって合理的で、最初に検討すべき選択肢の一つ」として話を進めます。4. 実践シミュレーション: 21年後の未来図~3つの積立戦略を比べてみた~さて、ここで具体的なシミュレーションを見てみましょう。「年間120万円」をNISAのつみたて投資枠の上限と考え、これを毎年投資していくと仮定します。以下の3つの戦略で運用した場合、21年後に資産額がどのようになるかの可能性をモンテカルロシミュレーションで10万回試算しました。(※期待リターンやリスクの前提は、過去の市場データに基づいた仮定であり、将来を保証するものではありません。) ポートフォリオ1: オルカン100%(15年間、毎年120万円をオルカンに積立。総投資1,800万円。その後6年間保有し、21年後に評価) ポートフォリオ2: eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)100%(15年間、毎年120万円をeMAXIS Slim バランスに積立。総投資1800万円。その後6年間保有し、21年後に評価) ポートフォリオ3: オルカン70%+現金30%(21年間、毎年84万円をオルカン、36万円を現金として積立。総投資2,520万円、うちオルカン部分1,764万円。21年後に評価)なぜこの3つの戦略を比べるのか?~ 「オルカン70%」の意図~今回の比較で特に注目したいのが、「オルカン70%+現金30%」という戦略です。「eMAXIS Slim バランス100%」のリスク、リターンは、どの組み合わせのオルカン+現金とにているか、という観点で決定しました(その計算方法について、ごく簡単に触れる)。「バランスファンドを選ぶ代わりに、自分でオルカンと現金の比率を調整したらどうなるか?」という視点です。その結果が、「オルカン70%+現金30%」です。そして、ポートフォリオ3の積立期間を21年としたのは、1年間に120万円オルカンもしくはeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)を購入するのに対して、70%であれば、1年間に84万円です。そしてそのペースで生涯投資枠1800万円をうめるとすると21年かかるから、という理由です。図1:年間120万円積立ベースでの各ポートフォリオの21年後の資産額分布オルカン(μ16.27%,σ14.02%)、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)(µ11.22%,σ8.10%)の過去5年実績値を前提ポートフォリオ1,2は15年積立後6年保有、ポートフォリオ3は21年積立グラフを見ると、21年後の中央値 は、 オルカン100%(オレンジ色の山): 約1億6,441万円 eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)100% (水色の山): 約8,537万円 オルカン70%+現金30% (緑の山):約1億3,155万円となっています。5. グラフが語る「オルカン+現金」戦略の大きな可能性このシミュレーション結果、特にグラフの山の形や中央値の違いから、何が見えてくるでしょうか? まず注目したいのは「オルカン70%+現金30%」 (緑の山)の戦略です。「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)100%」 (水色の山)は、15年間で総投資1800万円を投資し、21年後の中央値が約8,537万円でした。一方、「オルカン70%+現金30%」は、21年間かけて総額2,520万円 (うちオルカン部分は1,764万円と、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)総投資額に近い)を投資し、21年後の中央値は約1億3,155万円と、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)を大きく上回る結果となりました。これは、「オルカン70%+現金30%」の方が、リスク資産であるオルカンの比率が(eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)の株式部分と比較して相対的に)高く、かつその成長期待の高いオルカンに長期間投資を継続したことが、より大きなリターンに繋がった可能性を示唆しています。言い換えれば、「バランスファンドで早めに生涯投資枠(の一部)を埋めてしまうよりも、オルカンと現金の組み合わせで時間をかけてでもオルカン部分で枠を埋めていった方が、21年後にはより大きな資産を築けるかもしれない」**ということです。もちろん、オルカン100%で15年で生涯投資枠をうめた方がいいのですが、バランスファンドよりも低額のオルカンを、バランスファンドよりも少し長めに投資すれば、最終的にはバランスファンドよりも大きなリターンを得られる可能性があると言うことを示しています。6. 「いつか熟練者になる」あなたへ:生涯投資枠を最大限に活かすためにこの記事の核心的な提言はここからです。投資初心者は、いつか経験を積み、知識も増え、そして多くの場合、資産も増えて「熟練者」になっていきます。その時、あなたのリスク許容度は変わっているかもしれません。もし最初に「安心だから」とNISA枠でバランスファンドを選び、それで生涯投資枠1800万円を埋めてしまったとします。数年後、あなたがもっとリスクを取れるようになり、「やっぱりオルカンのような株式100%で積極的に増やしたい!」と思ったとき、どうなるでしょうか? 生涯投資枠の大部分を、オルカンよりも期待リターンが低い(とされる)資産で固定してしまっている可能性があります。NISA枠内での資産の入れ替えは可能ですが、手間やタイミングの問題が生じます。一方で、最初からNISA枠では「オルカン」を選び、リスク調整は主にNISA枠外の「現金」で行うという戦略です。 初心者のうちは安心:現金比率が高いので、オルカンの値動きが大きくてもポートフォリオ全体への影響はマイルドです。 熟練してきたら変化可能:投資に慣れ、もっとリスクを取れるようになったら、徐々に現金比率を下げ、NISA枠内でのオルカンへの投資額を増やしていくことができます。 生涯投資枠を効率的に活用:最終的に、生涯投資枠1800万円を、成長期待の高いオルカンで埋め尽くすという目標に、スムーズに移行できます。つまり、「オルカン+現金」戦略は、最初のうちはリスクを抑えつつ、将来あなたが「熟練者」になったときに、より積極的にオルカンに投資していくための「余地」を残しておけるのです。バランスファンドを使わずに最初からオルカンをコアにしておけば、後からオルカンを買い増したいと思ったときに、ポートフォリオ全体をシンプルに保ちながら対応できる、これが最大の利点です。 「オルカン+現金」戦略がなぜ合理的かというと、投資の意思決定をシンプルに2段階に分けられる点にあります 。まず『NISA枠でどの成長資産に投資するか(例:オルカン)』を決め、次に『その成長資産と現金の比率をどうするか』で全体のリスクを調整するのです。この考え方(分離定理とも呼ばれます)は、ご自身で主体的にリスクをコントロールする良い訓練になり、投資判断の軸を明確にしてくれます。 7. まとめ: 最初の一歩を賢く踏み出し、NISAで豊かな未来を今回のシミュレーションは、特定の前提に基づいた一例であり、未来を保証するものではありません。しかし、私たちに重要なヒントを与えてくれます。新NISAという素晴らしい制度を最大限に活かすために、コアとなるリスク資産は、長期的な成長が期待できる、広範に分散された低コストなもの(例: オルカン) を選ぶことを基本とし、最初から大きなリスクを取るのが怖い場合は、そのリスク資産と「現金」の比率で、自分にとって心地よいリスク水準に調整する (分離定理の考え方)、そして、将来の自分の成長(知識、経験、資産、リスク許容度の変化)を見越して、最初から「より成長期待の高いものでNISA枠を埋めていく」という長期戦略の「余地」を残しておく。 そして、あなたが投資経験を重ねていくと、単にリターンが高いだけでなく、『どれだけ賢くリスクを取ってリターンを得られたか(例えば、シャープレシオという考え方があります)』といった、運用の質にも目が向くようになるかもしれません。そのような段階に進んだときも、NISAの非課税枠が成長期待の高いオルカンで占められていることは、より効率的な資産運用を目指す上で有利に働くでしょう。 市場が良い時も悪い時も、計画通りに投資を続けるのは、実は簡単なことではありません。つい感情的に判断してしまいそうになる時もあるでしょう。だからこそ、『NISAはオルカン、リスク調整は現金』というシンプルなルールを持つことが、長期的な目標達成を支える羅針盤になるかもしれません。「バランスファンドで手軽に」という選択も間違いではありません。しかし、「いつか熟練者になる自分」のために、少し視野を広げて「オルカン+現金」という選択肢を検討してみることは、あなたのNISA戦略をより豊かで、より可能性に満ちたものにしてくれるかもしれません。この記事が、あなたが賢い第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。【補足】ポートフォリオ「オルカン70%+現金30%」の考え方本文中で比較対象とした「オルカン70%+現金30%」というポートフォリオは、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」のような一般的なバランスファンドと、ある程度リスク・リターン特性が近くなるように意図して設定したものです。ここでは、その考え方の概要を簡単にご説明します。一般的に、複数の資産を組み合わせたポートフォリオの期待リターンとリスク(標準偏差)は、各資産の期待リターン、リスク、そして資産間の相関係数によって決まります。今回のシミュレーションで使用した各資産の期待リターン(μ)とリスク(σ)は以下の通りです(過去5年実績に基づく仮定値)。 オルカン(全世界株式): μ = 16.27%, σ = 14.02% eMAXIS Slim バランス(8資産均等型): μ = 11.22%, σ = 8.10% 現金: μ = 0%, σ = 0%「オルカン70%+現金30%」のポートフォリオの期待リターンとリスクは、以下のように計算できます(現金とオルカンの相関は0と仮定)。この結果、「オルカン70%+現金30%」のポートフォリオは、期待リターン:約11.39%、リスク:約9.81% となり、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」(期待リターン:約11.22%、リスク:約8.10%)と比較すると、期待リターンは非常に近い水準に、リスク(標準偏差)も比較的近い範囲(オルカン70%の方がやや高め)に、調整されていることがわかります。もちろん、これはあくまで期待リターンと標準偏差という2つの指標を近づけただけであり、バランスファンドが持つ多様な資産クラスへの分散効果(株式、債券、REITなど)や、それら資産間の相関関係から生まれる特性そのものを完全に再現するものではありません。また、使用する過去データの期間や、各資産の将来予測によっても最適な比率は変わってきます。しかし、このように「質の高いと考えられるリスク資産(ここではオルカン)」と「現金」の比率を調整することで、目標とするリスク・リターン特性に近づけることができる、という「分離定理」の考え方を具体的に示すための一例として、この「オルカン70%+現金30%」という組み合わせを設定しました。全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 (朝日新書)Amazon(アマゾン)