VIENNA SYMPHONIC LIBRARY ブログ

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY ブログ

VSL社の「VIENNA SYMPHONIC LIBRARY」を使用したオーケストラ制作について綴るブログです。

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最近、ピアノを専門にしている音大時代の友人から、コンピュータでバーチャルオーケストラを作るにはどうしたら良いかという相談を受けました。私のレッスンに来て下さっている生徒さんの中にも、これまで作ってきたポップスの歌モノはお休みにしてオーケストラ曲に挑戦したいという方がいらっしゃいます。そこで自分自身のノウハウ整理という目的も兼ねて、コンピュータを使ったオケ制作についてのブログを始めることにしました。

 

ここ数年の仕事はほぼテレビ番組のBGMと家庭用ゲームのBGM制作のみですが、案件の音楽ジャンルはバンド系からシンセサイザー系まで多岐に渡ります。その中で最も多いのはオーケストラで、純粋なフルオケだったりバンド+オケだったり、編成も様々です。もちろん、楽器奏者に演奏してもらった生音を収録ができれば一番なのですが、予算などの事情でいつもそれができるとは限らないため、打ち込みだけでできるだけリアルに仕上げなければならないケースも少なくありません。

 

DTMのオーケストラ音源は入門的なものから専門的なものまでたくさんの製品が発売されていますが、私の仕事仲間からはEastWestのHollywood Orchestraをメインで使っているという声を多く聞きます。オーケストラは楽器そのものの音だけでなく、ホールの反響音も含めて私たちがよく知る"あのサウンド"になるため、QuantumLeapの手軽なウェットさがクラシック音楽では使いやすいという事が人気の理由のようです。その他、SpitfireAudioのORCHESTRAシリーズやOrchestralToolsのBerlinシリーズ、ソロ向けのSamplemodelingなど、それぞれ個性的な導入の仕方をしているように感じます。

 

そんな中、私が愛してやまないのはオーケストラ音源の草分け的存在であるVienna Symphonic Library(以下VSL)です。もちろんVSL以上にリアルな製品もあると思いますし、状況に応じて他メーカーのオーケストラ音源を使うこともありますが、私はこのライブラリをとても気に入っています。こんなブログを作ってしまったくらいですから、それはもう大ファンなのです。今や多くの同種製品が出回っているにも関わらず10年来愛用し続けている最大の理由は、VSLが他のどのメーカーよりもソフトウェア・ツールに注力し、オケに特化した制作環境を提供し続けてくれるからに他なりません。

 

成果物が音楽である以上、音源に魅力が無ければ元も子もないのは大前提としても、制作工程では数々の音響的な調整や管理が必要になります。技術の進歩のおかげで(せいで?)今や読みやすい綺麗な楽譜を書いたらあとは演奏者にお任せ!というわけにはいかなくなりました。作編曲からミックスまでが作曲家の仕事という時代ですから、アーティキュレーションやダイナミクスといった基本的な要素はもちろん、音量バランス、リバーブの設定、定位や音像の処理にまで気を回さなければなりません。そういった作業の時間的な割合は、いつからプログラマーやマニピュレーターになったのだろうか・・?と考えてしまう程です。

 

管弦楽器のソフトウェア音源において、その調整の手間と完成曲のリアリティは常にトレードオフの関係にあります。メーカーサイトのデモ曲を聴いて生と遜色ないように感じたとしても、同じように聴かせるには相応の時間をかけて作り込まなければなりません。鍵盤を叩くだけで生演奏のように仕上がる夢のような音源をメーカーもクリエイターも望んでいますが、残念ながら実現はまだまだ先の話のようです。とはいえ1曲に何日もかけるわけにはいきませんから、必然的にコスパの良い音源を選ぶことになります。そもそも生楽器収録を100点とするなら打ち込みはどう頑張っても80点程度でしょうから、打ち込みで完結させるプロジェクトという時点で、丸1日かけて80点を1曲仕上げるよりも70点が2曲できた方が良いケースが圧倒的に多いわけです。

 

そのような作業効率を支えてくれるのがVSLのインストゥルメンツとソフトウェアツールで、今から10年以上も前に収録された古い音源が中心であるにも関わらず、未だ手放す事ができません。私自身が奏者としてオケに乗ることがあるので、その感覚からしても現実に則したアプローチのできる数少ないソフトだと思うのです。特に管弦楽法の知識やオケ経験を持たずにコンピュータでオーケストラ作りをしたいという方には、DAW付属のオケ音源があってもまずVSLを薦めています。では具体的に何がどう凄いのか。それをこれから少しずつ紹介していきたいと思います。