こんにちは。
ぼるです。
前回の人間修行がはじまるの続きです。
拒絶され続けた妖怪にも奇跡は起こる。
妖怪の話を聞いてくれる人。
妖怪がプレゼンする歌って踊る犬のぬいぐるみで遊んでくれる人。
妖怪がプレゼンしなくても、ラジオ付きボールペンに食いついてくれるおじちゃん。
イヤホンを耳にはめるやいなや
「音がいいっ!音がいいっ!」
とサウンドをベタ褒めし
妖怪が引くぐらい喜んでくれるおじちゃん。
「あなたにここで働いてほしいわーーっ!
こんな明るくていい子!」
仲間に入れてくれそうな勢いで
妖怪だと知らず勧誘する保険の営業のおばちゃん。
妖怪は人生ではじめて
「明るい」と形容されたことに驚きを隠せない。
今まで「おとなしいね」としか言われたことがない。
この「おとなしいね」は
本当は「暗いね」と言いたいが傷つかないようにオブラートに包んでおこう
という大人達の意図がみえるため
妖怪は幼いころからこの言葉に傷ついていた。
それが今や明るいと言われるだなんて!
ここが妖怪の明るさのピークであった。
そして
「がんばってるから買ってあげるよ!」
という妖怪への哀れみの情で買ってくれる人。
情は種を超える。
だが人間になる前の妖怪はこの情に味をしめはじめる。
本当はこんなおもちゃなんていらないのに
不憫な妖怪がかわいそうという情だけで買ってくれるんだ。
卑怯な妖怪はこの手を使うしか術がない。
かわいそうを利用して物を売る日々……
妖怪は自分が妖怪であることを憎みはじめる。
自分はなんて薄汚い生き物なんだ。
あんなに良い人達の情を利用して物を売るなんて。
ああ、心が痛む。
妖怪はこの時、人間の心を知ったのだ。
だがこの妖怪は、既に心を麻痺させる術を身につけてしまっている。
情を利用することに心が痛みながらも
同時に麻痺させることで精神を保つ癖が染み付いてしまった。
妖怪はまだまだ人間修行を続ける。
ある日
いつも組んでいる先輩とは違う先輩とペアを組み
いつもより遠い地に遠征する機会があった。
その先輩は、明るくて爽やかで素直ないわゆる好青年の営業向きのおにいさんで
いつも楽しそうにしている印象があった。
現地に着くと、エリア内を分担してそれぞれ物を売りに行くのだが
別れ際に
「素でガツガツいけ!」
妖怪に刺さりすぎるお言葉。
素でいいんだ……
無理して明るさを演じなくても
妖怪は妖怪のままでいいんだ……
肩の力が抜けたのか
その日はいつもより楽に売れた気がする。
「素でガツガツいけ!」
人間を目指していた妖怪にとっては
人間になる必要などないという目から鱗の言葉だったと同時に
おめえ人間になんてなれねんだから妖怪のままでいろよなっ!
という裏の意図を一瞬疑ってしまったが
妖怪だからそう感じてしまうんだな。
あんな爽やかな笑顔の先輩はそんなこと微塵も思っていないだろう。
そういえば当時肌荒れを気にしていた妖怪は
本当は赤ら顔なのに粉塗りたくって白塗りになっていたのを知ってか知らずか
その爽やかな先輩が
雪菜と名付けてくれたな。
雪菜というのは幽遊白書に出てくる飛影の双子の妹で、雪女の妖怪。
やっぱ妖怪やん。
注: ぼるの若い頃はこんなにかわいくありません。
白塗りで寒い地方生まれだったからでしょう。
あーーーっ同じ妖怪ならこんなにかわいく生まれたかった。




