<6>講座:「ベトナムの看護と日本の看護」
〜ベトナムの看護師との関わりの中で〜かに座
その4:参加者の皆さんから、体験談など
 
【参加者から】
●ボランティアで、作業療法士としてダナンの病院に勤務している方の話。

リハビリのセラピストと接する事が多いが、モチベーションの問題、リハビリ学生も働く要員として考えられている印象。
患者さんへの接し方は、日本と本当に違う。患者よりセラピストの方が、立場が上。医療職の人のほうが偉そうな印象。日本では、(医療者・患者は)対等、(医療者は)患者さんを第一に思いやる事が大事だが、そういった面はベトナムでは、見られない。
家族が患者さんのケアをすることも、もちろんあるが、患者さんの家族同士でそれぞれの患者さんを助け合うのを見かける。ともに助けあうというのが、日本ではなかなかないかなぁと思った。

●日本の大学(専門は老人福祉)へ進学したベトナム人の方の論文の紹介
日本の老人介護とベトナムの老人介護、老人の選択と生き方について、それぞれの国の人にインタビュー。
高齢になり介護が必要になったら…
*ベトナム人→子どもが世話してくれる、それが嬉しい。
*日本人→いい施設に入りたい。子どもたちに面倒みてもらうのは大変だから、自分たちで自立していきたい。
ハッキリ違いが現れていますね!!今の日本では、家族に迷惑をかけずに老後を過ごしたいと言う人が多いですね。

●参加者の体験談など
・妊婦健診で、説明なく、染色体異常の検査をされていた。
・(↑上記の件)枯葉剤の影響で、ベトナムでは、染色体異常の検査をするようになっているのかも?枯葉剤は、第二、第三世代にまで遺伝子障害が起こることもある。しかし、最近は、枯葉剤・ダイオキシンによる障害を持って生まれる子の出産が少なくなってきた。それは、検査をする人が多いためか?関係・兼ね合いは分からないが・・・
子どもに対する人権、胎児に対する人権、女性の産む・産まないの問題、そこまで話合われて来ていないという問題もあると思う。
・今の日本では、インフォームド・コンセント(医師による説明と患者の同意)が当たり前で、それがベトナムにはないと思いますが、
日本も昔は、医師からの説明が不十分だった時代があった(30~40年前)。なので、今、ベトナムは、発展途上でも、これからしっかりした医療がつくられていくのではないか?
そういう中で、今回の講師の方たちの活動も意味のある事になっていくと思う。
・薬の量が適切か分からない、何に気を付けたらいいのか分からない。
・子どもが体調悪くなったら、どのタイミングで病院に行くか、薬は貰ったが、飲ませるのがいいのかどうなのか、飲ませないなら自己責任で頑張るしかない、日本一時帰国の時に小児科医で、“日本だったら常識的にどうか?”という事をその都度聞いて、折衷案みたいなところでやりくりしている現状。
・日本とベトナムでは、違いがある事を知って、体調が悪い時には、自分自身で(インターネットなどで)調べてみる事も大切かと思う。ただ、ネットもどこまでが正しいか?ネットの情報自体が間違っている事もある。
・A型肝炎のワクチンをしたかったが、ダナンには、ワクチンがなかった!
・市立病院健康診断で検便があったが、キッド(容器)はなく、「(容器は)なんでもいいから入れてきて」と!自分で用意した空ケースに入れて提出したが、結果がちゃんと出ているのか???
・ベトナム人の方に聞くと、私立病院は確かにサービスはいいが技術がない、ちゃんと結果が出てくるか分からないと。だから、ちゃんと検査をしたかったら市立病院がいいと。自分が医療にかかる時はどうしようかなと悩む。
・入院のお見舞いに行くことがあり、雑魚寝でごっちゃごちゃ、看護師は、(日本でみられる)看護活動、お世話をしない、そんなシーンを見て、主人(ベトナム人)が入院したら、私が世話をしなければいけないのかと、危機感を持っている。
・主人の受診に付き添った事がある。翻訳サービスを使って受診し、薬をもらい2日くらいで回復。皆さんの話を聞いていて、自分でも知識を持つことが必要だと思った。
・(ベトナム人女性の参加者)ベトナムの医師看護師は、外国人への対応はまだいい、ベトナム人への対応は全然ダメ。だから、病気になっても、薬をのんであまり病院に行きたくない。
行かなければならない場合は私立病院にいく。費用は高いが、サービスはいい。
・妊娠した時につわりがひどく、日本に一時帰国したが、「前置胎盤」であったことが日本で発覚。日本の医師に飛行機は危険だとの事を教えられた。ベトナムで医師に相談した時は飛行機okと言われていたが…。(無事、ご帰国されて良かったですε-(´∀`*)ホッ by筆者)
・日本人在住者や、ベトナム人の知人のネットワーク作りも大切。誰かに相談すれば、その知人の知人など、医療関係者に繋がるかも!情報収集大事!
・インターネットで日本の医師に質問が出来るサイトがある。(有料)
・日本のかかりつけ小児科の医師に電話で質問する事がある。(←日本でかかりつけ医との関係構築も大切ですね。)

【講師から】
高齢化が進んでいく中で、これから、ベトナム国内での介護の人材が不足してくるのではないか。
今までは大家族で住む形態だったが、核家族が進んでおり、大家族の強みがだんだん弱くなっていくことが考えられる。
約2年間ベトナムの看護師と関わっていて、ベトナムの看護師は、「高齢者を敬う」、「家族を大切にする」、「とても勤勉」と感じ、私自身、いろんな事を学生から学びました。これからベトナムの医療はもっともっと発展していくと思うが、その中で、看護師の地位も上がっていけばいいなと思う。高齢化が進むなかで、きっといろんな問題(保険制度が不十分、年金の問題など)がまだまだ出てくると思うが、高齢化の少し先を行った日本がモデルとなって、何か生かされていけばいいなと思います。

【筆者感想】
今まで漠然と「ベトナムの医療は、日本の医療とは違っていそうで不安だなぁ〜」としか思っていませんでした。
ベトナムの医療の現状には、背景や理由がある事を知って、考えさせらせました。
ただ、不安だなぁ〜だけではなく、自分で情報を集めたり、健康管理に気をつけたいと思いました。

今回の講座も、講師の先生はじめ、参加者の方々の貴重なお話を聞く事が出来、大変勉強になりました。
お忙しい中、引き受けて下さった講師の方、その学生さんに感謝いたします。
ありがとうございました。



記録筆者:細川