腹式呼吸2 | 年齢や素質で諦めさせないボイストレーナー牧野努のブログ

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16年間のボイストレーナー生活を元に、歌で悩んでいる方や行き詰っている方々のお役に少しでも立てればと思っております。年齢や素質だけで歌は決まりません。情熱と努力だけで乗り越えられる壁がたくさんあります。

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さてー
前回の続きです。
呼吸が出来ているかの確認でロングトーンが有効と言いました。

何故ロングトーンの発声で呼吸の確認ができるのかと言いますと

呼吸による喉の圧迫で声が揺れる場合が多く、判断材料にしやすいのです。
姿を見れば一発で分かりますが、録音したものを聞いても大体判断できます。

ロングトーンの要素は呼吸だけではありませんが、その要素は大きいです。
たいていの人の場合「あ」が一番難しいので「あ」で駄目なら他の言葉でもやってみてください。
どの言葉、どの音程でもできないようなら、呼吸が原因になっている可能性大です。

腹式呼吸の名前は一般的に知られていますが、
その逆の呼吸の名前はあまり知られていないと思います。
「胸式呼吸」又は「肩式呼吸」などと呼ばれています。

これは息を吸った時に胸や肩が上がって見える呼吸です。
いわゆる深呼吸みたいなものです。

思いっきり息を吸ってみてください。
大体、胸や肩が上がって喉や首がギューーーっと締め付けられるはずです。
もっと吸えば震えがくるでしょう。
この締め付けられた喉で発声をして声を揺らさずにロングトーンを出すのは
至難の業と言えるでしょう。
トレーナーはたいがい生徒さんに息をとにかくたくさん吸えという方が多いですが、
この呼吸だと息を吸えば吸うほど発声が不安定になります。
しかも意識的にたくさん吸おうとすると胸式呼吸になるケースが多いのです。

そこで、腹式呼吸の登場です。
いわゆる腹式呼吸は横隔膜を使って肺の下の方に息を溜め込みます。
したがって肺の上部を使わずに済む為、喉の圧迫が無いので発声に有効とされています。
決して、息を多く吸えるからではありません。
息を多く吸いたければ胸式と腹式の両方をやって肺の上と下を両方膨らますのが
理論上一番多く吸えるでしょう。
苦しくて歌どころではなくなると思いますが・・・・。

腹式呼吸をやる1番の目的は喉の圧迫をとる事なのです!!

声帯の周りが締め付けられていたんじゃ自由な発声は無理ですからね。
特にロングトーンは。


ここまでで終わると
普通に腹式呼吸をただ推奨する一般的な話です。

腹式呼吸は決して間違いではありません。
むしろ合っています

でもよく考えてみてください。

目的を・・・・・・

喉の圧迫をとるのが目的なんですから
喉を圧迫しない呼吸だったらなんでもいいって事ですよ。

お腹が膨らむ腹式呼吸は歌で使うのがなかなか難しく
体得するまでも膨大な時間を費やします。

簡単な方法があります。

それは・・・・・

まず最初に息を吸わずに発声し始めるのです。

「はぁ??」
「息吸わなかったら声出ないじゃん」
「馬鹿じゃないの」

なーんて声が聞こえてきそうですが、

あなたは喋る前にいちいち息を吸い込みますか?
電話がかかってきたら息を吸い込んでから電話にでますか?

そんな事日常ではしていないですよね?!

そして上半身裸のロックアーティストや
おヘソを出して歌っている女子シンガーのお腹がポコーンと膨らんだり
縮んだりしているのを見た事がありますか??
(クラシックの方はやっているのを見た事があります。)

我々の体は普通の状態にしていれば、
肺の中は空気でほぼ全部満たされているものなのです。

試しに息を吸い込まずに吐くところから呼吸をし始めてみてください。
吸わなくても最初に息を吐く事ができませんか??

そしたら勝手に肺が収縮を始めます。

そして吐くのをやめて力を抜けばその瞬間に吐いた分の息がいっぺんに肺に戻ってきて肺が元の形に戻ります。


これが普段みなさんが呼吸しているやり方の拡大版です。

肺を膨張させずに元々持っている空気を出し入れするのです。
保有している空気を使い使った分だけ元に戻すというイメージです。

このやり方ができれば喉の圧迫が無く、声帯の周りの筋肉が自由に使えて響きの良い声が
コントロールできるようになり、呼吸も意識せず自然に喋っている時のように自然に
できるはずなのです。

しかしこれはあくまで理想論です。

呼吸のみでなく実際に声を出すと状況は一変します。

姿勢、重心、口のあけ方、元々の喉の力み、発声時の癖
などが邪魔をして結局喉を締め付けてしまい、発声の妨げになる事もあります。

まずはこの呼吸でロングトーンができるかどうかを試してみてください。
息を最初に吸いこまずに元々保有している息でパッと声を出し始めるのです。

それでも感覚が掴めないようなら、クレッシェンド(小さくからだんだん大きくしていく)
でやってみてください。
力が抜けやすいです。

「え」や「い」でやったほうが比較的楽かもしれません。

これはいわゆるお腹が膨らむ腹式呼吸ではありませんが、

横隔膜は十分に使うので、腹式呼吸の一種と言えます。

 

実際に発声と連動させるのはなかなか難しいですが、

僕が今まで教えてきた呼吸のやり方で一番早くマスター出来、

もっとも効率の良い方法でした。

 

試してみてくだい。

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