水面に浮かぶ白鳥を私は静かに眺めていると、彼女は私の方角へと水面を滑ってhelloと言う。
 私はhelloと返事をしてチャムスのバナナバックからカメラを出して写真を撮っても良いかと聞くと、ダメだと彼女は言った。長い首が大きく左右に振られ、大きな拒否を感じた。太陽が彼女を照らしているから、まぁ逆光になってしまうしなと思った。その刹那、彼女は私にgod be with yeと言って私の側から去って行った。その時、初めて気付いたのだが、彼女の背には矢が刺さっていた。後ろ姿が私の脳裏に刻まれて帰宅途中の車の中、何故だか、涙が流れた。

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 朝起きて歯を磨き、200円のエコバッグにジャージを適当に詰め込み、朝飯の鮭を食べた。鮭の皮を食べようか迷ったが、迷うくらいなら食べてしまおうと皮を踏まえて鮭を食べた私は車に乗り込み職場の介護施設へ行くと、同僚たちがざわざわしていた。何の話をしているのかと耳を澄ましてみると、施設長が利用者様のお金を横領し逮捕されたと同僚たちは一大事だと、精神をざわつかせて世界を震撼させていた。

〈続く〉