◎『リメンバー・ミー』概要 (引用:公式サイト)



◎感想(ネタバレなし)


鮮やかな色彩と美しい世界観に魅了される映画です。そして本作は「家族愛」が非常に感じられる胸温まるストーリーでした。涙が止まりませんでした...。


本作は歌唱シーンが多く、私は吹き替えで視聴したのですが、キャスト様全員声が素敵!楽曲も陽気な曲調ばかりで気持ちが明るくなります。

キャラデザも、骸骨になっても生前の特徴が分かるようにデザインされてて、顔の模様も鮮やかでとってもキュートでした。


ストーリーは、話のテンポが良く非常に観やすかったです。終盤は本当にどんでん返しって感じで驚かされてばかりでした。「家族とは何か」を考えさせられる内容でしたし、家族の絆が好きな人にはかなり刺さる映画だと思います。私も家族愛が1番好きなので、本作には涙腺をやられてばかりでした。

また本作に登場する「死者の日」は、日本で言うお盆の日にあたるメキシコの祝日だそうですね!

※「死者の日」については、佐原みどりさんの『国際開発研究フォーラム』28巻「死の隠喩と死生観 - メキシコ・シティにおける「死者の日」を中心に - 」(2005.3)が参考文献に良いかと思います。(最終閲覧日2022.12.27)


楽曲も世界観もストーリーも全てが美しい映画でした。作中では名曲と言われる「リメンバー・ミー」、未視聴の方でも聴いたことはあると思いますが、この曲の隠された真実を知るとこの楽曲への見方が変わることでしょう。是非一度は観てもらいたいと思う映画です。



◎感想・考察(⚠️ネタバレあり)


物語の序盤、音楽をやりたいミゲルと家族のしきたりを忠実に守り音楽を禁じる祖母のエレナとの対立と葛藤にまず心が痛みました。まだ少年のミゲルからしたら正直しきたりなんてどうでもいいことでしょう。音楽を排除する家族に嫌気が差すのも無理ないです。エレナもミゲルが嫌いで音楽を禁止してるわけではないですし、寧ろ愛しています。ただ、お互い音楽のことに関しては絶対に譲ることができずにいました。両者の気持ちは理解できますし、お互いの主張に善悪なんてないため、最初の対立には胸が痛みました。「死者の国」に迷い込んで、ミゲルは自分の先祖たちに会うわけですが、ここでも音楽のことで対立してしまって辛かったですね。先祖たちもミゲルのことを愛していますが、音楽のことになると分かりあうことができません...。そして極めつけは中盤、ママ・イメルダとミゲルの2人きりでの会話シーン、音楽と家族両方は取れないからどちらかを選べと言うママ・イメルダに対して、ミゲルは家族は支え合うものではないのかと。そうです家族は支え合うものなんですよ。支え合って一緒に進んでいくのが家族ですよね。ここには痺れました。家族を捨てたと思われてたヘクターも本当は家に帰って家族に会いたかった。結局家族より大事なものはないのです。私も家族至上主義なのでこの気持ちは大いに共感できました。

あとミゲルの父親エンリケですが、音楽を禁止しているこの一族の掟をしっかり守ってはいますが、ミゲルの気持ちも理解している雰囲気が良かったですね。


そして本作のヴィラン、エルネスト・デラクルス。彼はディズニー・ヴィランズの中でもトップレベルのクズっぷりを発揮してくれました。ミュージシャンとして世界的に成功を収めた彼は国民的な英雄で、「死者の国」でもその名声は衰えず、生前と同じように絶大な人気を誇ってました。特に彼を象徴する曲は「リメンバー・ミー」。ギターも霊廟に飾られるほど彼の象徴的なシンボルとなっていました。破られた写真にギターが映っていたことでデラクルスのことを高祖父だと思っていたミゲル。私も彼が高祖父であると思っていたのでミゲルの高祖父がヘクターと分かった時は驚きました。そして、デラクルスが家族のもとに帰ろうとしたヘクターを殺してギターも曲も奪って名声を得ていたのは非常に衝撃でした。結局彼の名声はヘクターから奪い取ったものに過ぎなかったのです。己の欲望のためだけに相棒を殺すのも怖いですしそれを死後の世界でも罪悪感なく隠し続け名声を得ていたのはサイコパスの領域ですね...。デラクルスの言葉で「チャンスを掴め」というものがありますが、この言葉の真の意味が「チャンスを掴むためなら手段を選ばない(殺人だってする)」と分かった時は背筋が凍りました。

許せないことばかりですが、私が特に許せなかったのは「リメンバー・ミー」を世に出したことです。「リメンバー・ミー」はヘクターが娘のココの為に書いたもので世に出すつもりなんて全く無かったと思うんです。デラクルスがこのことを知ってるわけないので、世に出された「リメンバー・ミー」は何だか解釈違いでしたね。ヘクターとココの思い出を汚された気がして嫌な気分になりました...。


本作で私が1番好きだった登場人物は、ヘクターです。非常に家族想いな人物ですが、ヘクターの才能を利用しようとしたデラクルスの所為で家族との絆が引き裂かれてしまっていたのは悲しかったですし、「生者の国」では娘のココ以外誰もヘクターのことを知らないのは辛かったですね...。そのため、死の真相を知ったイメルダ達と和解できたのは本当に安心しました。

回想でのココと「リメンバー・ミー」を歌うシーンを観て、この曲の本当の意味を理解出来ました。歌詞がヘクターすぎて泣いてしまいます...。ココの為に歌を送ったり、デラクルスと旅をしててもココとは手紙のやり取りをしていたりと、本当にココのことを愛していたのが伝わって涙が止まりませんでした。ミゲルに自分の写真を祭壇に飾ってくれとお願いしていたのもココに会いたいからなのが心に刺さりました。そしてココにとってもヘクターは大好きな父親で、ヘクターの話をする時は本当に生き生きとしていました。「リメンバー・ミー」を聴いて記憶を取り戻したというのもそれほどココにとってこの楽曲は思い出深い曲と分かりますね。物語終盤でココと再会できて、こちらも嬉しくなりました。

ただ、相棒だったデラクルスを信じていたヘクターに対するデラクルスの裏切りはやはり酷いものでしたね...。21歳という若さで殺されてしまいましたが、殺されたのも彼の才能を利用したかったデラクルスの欲望によるものなのが本当に許せないですよ。

ヘクターの言葉で印象的だったのが、チチャロンが消滅してしまった後のシーン。「生者の国」にいる人々から忘れ去られると「死者の国」でも消滅してしまう(=2度目の死)が、それに対して「皆いつかはそうなる」と。「生者の国」でも「死者の国」でも結局「死」からは逃れられない。私たちもいつかは絶対に死んでしまう。誰もがそうなることを改めて実感じた切ないシーンでした。

あとヘクター女装しすぎですよね(笑) 生前からこんな感じだったのでしょうか。ただイメルダ達といるときは大人しいというか弱気な雰囲気だったのでそのような陽気な一面は「死者の国」に来てから形成されたのかもしれませんね。


楽曲は「リメンバー・ミー」を除いたら「音楽はいつまでも」が1番好きでした。明るいけど切ない感じが映画の最後にピッタリでした。


最後にマリーゴールドについてですが、実際の「死者の日」でもマリーゴールドは「死者が生者の国へ来る際、道に迷わないようにするための道しるべ」とされているようです。マリーゴールドは「聖母マリアが持っていた黄金の花」と言われており、宗教的な催しでよく使用されます。そしてオレンジ色のマリーゴールドの花言葉に「変わらぬ愛」があります。『リメンバー・ミー』にピッタリな花言葉ですね。


洋画は字幕派でアニメーションは吹き替え派なのですが、非常に素敵な作品でしたので今度は字幕版も観てみようと思います。