The First presentation finished♪ ②
⑪ここから、最後のパーツ部分である
スクロールとネックの作業にとりかかります。
これらの箇所が、音にどのくらい直接影響するのかは
言い難いのですが、ネック部分は弾き手に大きな影響を
与える箇所になります。
まずスクロールですが、現在は彫刻品のような観点から
見られることが多くなってきていますが、ペグボックスは
調弦をしやすくするための重要な部分となりますので、
その点を考慮して作業を進める必要があります。
スクロールとネックが完成した後は、
ネックのセッティングになります。
⑫ネックのセッティングは、同時に以下の事に注意をしながら
行っていく必要があるため、非常に難しい作業になります。
・ネックの方向が、本体の真ん中に位置しているか。
・ネックの傾斜。
・ネックの長さ。
・弦を張った時に駒に沿っているかどうか。
・ネックと表板との高さ。
例え、本体やスクロールが美しく仕上がっても、
ネックセッティングが上手くいかなければ、
それは良い楽器にはなりません。
それほど、ネックセッティングはこれまでの作業を占める
大変重要な作業になります。
ネックをボタンのカーブに沿って取り付けた後は、
ニスを塗る段階に入ります。
⑬ニスは、製作者それぞれがそれぞれ独自のレシピで
作っていくため、お伝え出来ることが限られていますが、
基本的なニスの作り方をご紹介します。
まず始めに、樹脂をアルコールで溶解します。
次に、樹脂を足したアマニ油(Linseed Oil)でベースを作ります。
主なニスは、『アルコールニス』と『オイルニス』に分類されます。
(また、ニスは同じレシピで何度作っても、
毎回違った結果になることが多いとのこと、不思議ですね。)
・アルコールニス・・・樹脂(Resin)+溶剤(Solvent)
⇒上手く調和するために、20~30回塗り重ねていきます。
また、乾くのがとても速いため毎日行う必要があります。
・オイルニス・・・樹脂(Resin)+アマニ油(Linseed Oil)+溶剤(Solvent)
⇒軽質量のため、約10回で十分です。
特徴としては、厚みもあり乾くのが遅いため、気候にも合わせながら
2~3日に一回の割合で塗っていきます。
下塗り、上塗り共に回数は製作者によって違いますが、
ここで重要なことが、下塗りのニスが木材に染み込みつつも、
木材の呼吸を止めない材料であることです。
特に、下塗りのニスには上塗りのニスが染み込まないようにする、
といった目的があるので、しっかりと木目に浸潤させなければいけません。
この過程が、木材の保護や耐久力を増す役目や
外観の美しさにつながります。
⑭最後に、バイオリンのセットアップになります。
まず、魂柱(Soundpost)をバイオリン内部(E・A線の弦下辺り)に
立てます。バス・バーの反対側です。
次に、駒(Bridge)を作り、ペグ(Pegs)とエンドピン(endpin)を
取り付けます。
この最後のセットアップも、製作者の細やかな認識・感性が
非常に問われる作業になります。
魂柱が正確な位置に立っているか、
魂柱にかかる力はどのくらいになるか、
駒の厚さはどうか、
そして、魂柱と駒、バス・バー全体のバランスを確認します。
この三点が、バイオリンの全ての音をつなげる役目があるからです。
ネックセッティングと同様に、この最後のセットアップが
バイオリンの良し悪しの決め手となります。
⑮これで、バイオリンが完成になります。
これらの過程を経て完成したバイオリンの音と美しさが、
私達を思う存分に楽しませてくれることでしょう。。。
かなり大まかなご説明になりましたが、
バイオリンの製作過程を知っていただくことで、
多くの方々にこれまでとは違った視点からバイオリンを見たり、
奏でたりと楽しさが広がってゆければと思います♪
【The Second step】
◎トマゾ製作中のバイオリンについて
~MY TOKYO VIOLIN~
ここでは、今回の講座の企画と共に製作している
トマゾのバイオリンについての報告内容になります。
一ヶ月ごとに、製作過程をお伝えしていきます。
From Tommaso.....
現在、私はグァルネリモデルを製作しています。
彼は私の最も好きな製作者であり、彼のモデルの奥深さには
とてもやりがいを感じているからです。
今回、私を温かく歓迎してくれた東京に感謝を込めて、
このバイオリン製作に打ちこんでいます。
私は、バイオリンを製作する際に、必ずそれぞれの材料の
最大限を引き出せるように、とこの想いを完成まで維持しながら
製作にあたっています。
また、現在バイオリン製作工程でお伝えしますと、
①~④の工程まで進んでいます。
次回は、更に進んだ状況をお伝えできるよう、
製作に打ちこんでいきたいと思います。
お楽しみに!
。。。これまでの過程より。。。
木材を選んだ後のそれぞれのパーツに切っていく作業ですが、
ホームセンターなどに行き、サイズや厚さを伝えれば
機械で簡単に作ってもらえる作業だそうです。
しかし、トマゾはこの過程をも全て自身によって切り、削っています。
一度、「この限られてる時間でなぜ機械を使わないのですか?」
と尋ねたことがあります。
今思うと、とても無礼な質問を投げかけたなと思います。
彼は、「全てを自分自身の手によって作りあげてゆきたい、ただそれだけ。
それが、私のバイオリン製作ということ。」と答えてくれました。
シンプルだけれども、とても温かく奥深いその言葉に、
私は感銘を受けました。
トマゾのバイオリン製作に対する想い、
みなさんに届いていますように。。。
The First presentation finished♪ ①
3月がスタートしました!
春もすぐそこまで来ている気配ですが・・・
まだまだ寒暖の差がある日々が続いていますね。
皆さま、お変わりなくお元気にお過ごしでしょうか。
Blogの更新が遅くなってしまいました。。。
本日は、先日2/28に行われました
『第一回 トマゾの匠の伝承~無料講座~』の
内容をお届けいたします。
あいにくの天気で寒い中お越しくださった皆様、
ご静聴本当にありがとうございました。
第一回目の講座はいかがでしたか?
トマゾのバイオリン製作にかける想いが、
少しでも皆様に届いていれば大変嬉しく思います。
第一回目の講座内容はこちらです♪
(二回に分けてお伝えしていきます。)
【The First Part】
◎伝統的なバイオリンの製作工程
~バイオリン各部の材料~
・表板:スプルースを使用。
(主要原産国:北イタリア、スイス地方ほか)
バイオリンの長い歴史に渡って、多くの物理的な研究の結果、
最も良いサウンドを鳴り響かせる木材として選定された材料。
ごく稀に、スギが使われることもありますが、
やはりスプルースに比べるとあまり良くありません。
・裏板とスクロール:メープルを使用。
(主要原産国:ボスニア、クロアチア、ユーゴほか)
どちらも共通して最も使われているのが、メープルですが
ごく稀に、ポプラも使われることがあります。
・ブロックとライニング:スプルースもしくはヤナギを使用。
木材が整いましたら、デザイン(製図)に取り掛かります。
その後に、デザインからモデル(本体全体)と形を決め、
バイオリンの内型を作成します。
これがバイオリンの基礎・土台となり、
これで製作の準備が整うことになります。
↓↓
~バイオリン製作~
①ブロック(6個)を内型にはめ、
バイオリンの形に沿ってブロックを削って整えます。
②次に、横板をホットアイロンでC字に曲げていきます。
ブロックに横板を接着するにあたっての一番のポイントは、
(左右の)Cの部分です。このCの部分は、
先端を美しくキレイに見せる役割がありますので、
後の作業にも影響がある大事な部分になります。
③すべての横板を取り付けた後は、
ライニングを横板に貼り付けます。
これは、横板の補強の役割とともに、
表板と裏板を取り付ける接着部分に厚みを増すための
箇所にもなります。
④次に、表板と裏板のジョイント(張り合わせ)です。
裏板は、一枚板と二枚板の場合がありますが、
表板は、基本的に二枚板となります。
これは、木材が左右対称であることによって強度の安定性と、
音の均一性が得られることから成り立っています。
ジョイントし終えた板の上に③の横板を置き、
響板の形を描いて切り出していきます。
⑤切り出した響板のアーチ作業に取り掛かります。
(ちなみに、この作業はトマゾの好きな作業のひとつだそうです!)
アーチ作業は、砂丘の斜面をなめらかに滑らせるように、
やさしく丁寧な作業になります。
また、この作業にあたって一番重要なポイントが、
“響版の厚みを決めること”です。
全ての木材ひとつひとつは、例え同じ木からであっても、
異なった質を持っている場合があります。
このように材質を見極め、わずかミリ単位の厚みの違いを
考慮していくことはとても難しく、この過程が毎回違う結果
(完成した時の音色)につながっていきます。
⑥ここで、表板にf字孔を切っていきます。
表板のアーチに合わせて切っていくので
注意を払いながら行っていきます。
f字孔には、弦振動を表板全体に行き渡らせる役目があります。
⑦次に、裏板と横板を張り合わせていきます。
ここで、①~③で取り付けていた内型を取り外しますので、
かなり慎重な作業をする瞬間です。
内型を外した後に、裏板を横板のラインに沿って閉じ、
縁を削って整えていきます。
⑧縁は、まわり全体をとても上品に美しいラインに
仕上げていく必要があります。
その作業と同時に、縁のカーブに沿った溝を
縁の内側部分に作っていきます。
これが、次のパフリングをはめこむ作業につながります。
⑨パフリングは、細い木材三本(黒2本白1本)を
貼り合わせたもののことです。
これをホットアイロンで曲げ、⑧で作った溝にはめこみます。
この作業も、製作者の精度が表れる工程のひとつになります。
⑩本体最後の仕上げは、面取りになります。
Face each other with Violin...
まだまだ寒い日々が続いていますね。
今夜も、しとしと降る冷たい雨が
雪に変わる気配です。。。
皆さま、お元気にお過ごしでしょうか。
前回よりBlogの更新が遅くなってしまい、
申し訳ございません。
今回は、その分たっぷりと!
お話をお届けしたいと思います。
早速!本日は・・・
イタリア出身の製作者トマゾの紹介です。
MilanoやCremonaのバイオリン製作学校で学び、
Giorgio Grisales氏の工房で修行をし、
他の製作家達との共同研究を経て、
バイオリン製作や修復において幅広い技術を持っています。
そんな数多くの経験を持っているトマゾに、
突撃インタビューを行いました♪
どうしてこの道に進もうと思ったのか、
製作過程でのバイオリンへの想いなど・・・
皆さんも気になりますよね。
今後もまだまだインタビューは続けていきますが、
現時点までに語ってくれたトマゾの想いをお伝えします!
インタビューの返答からも、
トマゾの人柄が伝わると思います。。。
(インタビュー形式でお届けします。)
Q.この道に進むきっかけを教えてください。
小さい頃から音楽はとても好きでしたが、
私の家族は音楽一家でもなく、ごく普通の一般家庭です。
しかし、学生の頃はバンドをやったりギターを弾いたりと
音楽が常に身近にありました。
高校卒業後、舞台の大道具の仕事をしていた頃に、
Music+Handworkを掛け合わせた仕事をしていきたい、
そう思ったのが最初のきっかけです。
この時点では、まだバイオリン製作の仕事を
考えていなかったのですが、製作学校を訪れた時に、
バイオリンの製作工程を初めて見ました。
その時の衝撃は今でも覚えています。
バイオリンの形、美しさに感銘を受けて、
この仕事に就きたいと思い決心しました。
Q.実際、この仕事はいかがですか?
様々な経験全てが活かされる仕事だと思いました。
自分自身で見た世界(景色)や、物、色や形、
そして人々との出会いから感じ受けることと、
inspirationを大事にしながら、バイオリンの製作過程で
それらを吹き込めるように心がけています。
Q.日々、緻密で繊細な作業が長期間に渡って続く中で、
どのようにモチベーションを保っているのですか?
それは、私自身のcurious(好奇心)が支えていると思います。
もっと良くするためにはどうしたらいいか・・・
それを様々な角度から試行錯誤することが好きですので、
その想いが、モチベーションにつながっていると思います。
それと、どんな時もジョークを忘れず楽しく作業をすることです。(笑)
~Continue~
↑バイオリンの側板部分を製作中のトマゾ
バイオリンの製作工程には、
製作者の手によっていろんな人々の想い、
人生観が詰まっているように感じます。
また、トマゾにインタビューを続けながら、
新しいバイオリンの誕生過程を見ながら、
技術と共に、想像力と創造力・・・
両方の素晴らしさと大切さを改めて感じます。
本日は、トマゾの紹介のみになってしまいましたが、
製作中のバイオリンに関しましては、
次回よりたっぷりとお届けいたします!
お楽しみ下さいませ。。。
まだまだ寒い日々が続いておりますが、
風邪にはお気をつけてご自愛ください。
皆さんの心に、
いつもほっこりと太陽がのぞいていますように。。。






