新撰組黙秘録勿忘草 ~沖田総司~① | 中島陽子のフリーダムなブログ

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ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
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それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。





$中島 陽子の〔And ...〕


*新撰組黙秘録勿忘草
CV:鈴木達央


-池田屋事件の時、ワタシは両親を失った。
行く宛ての無いワタシを新撰組の近藤さんが
下女として雇い入れてくれた。

池田屋事件の時、戦いの途中倒れた沖田さんが
戸板に乗せられ屯所に戻ったようだったが
口から胸に掛けて血で染められていて
余談を許さない状態のようだった。


ワタシは近藤さんから、沖田さんの見張り兼世話役を任された。
その時、近藤さんから少しの注意を受けた。
沖田さんは少々・・人に対して心を開くのに時間が掛かるという事だった。
心無い言葉を投げかけられても、気にしないようにと。
それは本心と違う事が多いからと言われた。-



いまだ目を覚まさない沖田さん看病しながら、時間が過ぎていった。

うっすら意識が戻った沖田さん。
いきなり起き出し
「ここは・・僕の部屋・・っ!近藤さんはっ!土方さんはっ!間に合ったのか!池田屋はっ!」

「っ、お、落ち着いて下さい!沖田さんっ!」

「離せっ!近藤さん達の無事をいますぐ確認しなければっ!」

「お二人共、無事ですからっ、どうか安静にして下さいっ。」

「っ・・そうですかっ・・それは良かった・・」

咳が治まらない沖田さんを落ち着かせようと、手に力が入ってしまった。


「・・そう言えば、君は誰。僕の部屋で何をしているんですか。」

そう言って、怪訝そうにワタシを見た。

「いや・・君の事なんてどうでも良いんです。今は近藤さんにっ・・」

咳き込む沖田さん。

「ワタシの話しを聞いて下さいませんか。」

「どうしてですか。僕は君の話しなんか興味ありません。それより近藤さんか、土方さんを呼ん来て下さい。」

「それは難しいです。お二人共ずっと外に出ていてお忙しいそうですし。市中掃討作戦・・と言われてました。」

「ああ・・そういう事ですか、まだ池田屋の後始末が続いているんですね。」

少し落ち着いた様子の沖田さん。
早く回復して二人の為に動けるようになるのが
先決だと言った。

ワタシの話しを・・と切り出してみたが
関心なさそうに大体想像が付くからと言われ遮られた。

ワタシは下女として此処で働く事になった事を伝えたが
やはり関心が無さそうに聞いていた。

「医者に診せなくて良いんですか。吐血したと・・聞きましたが。」

それは近藤さんが見間違えただけだと沖田さんは、医者に診て貰う事を許否した。

もう一眠りするから部屋を出るように言われ
ワタシは部屋を出た。

(世話役になった事、言いそびれちゃった・・)


次の日、雨模様で体調が思わしくない沖田さんの部屋に行った。

「何だ、また君ですか。何しに来たんです。医者に診てもらえって言う話しだったらお断りですよ。」

「どうして診てもらわないんですか。」

もうすっかり元気になったと言う沖田さん。
昨日は隊士達に稽古も付けられたし、
今日は雨のせいで体調が少し悪いだけだと言う。

「近藤さんも土方さんも、君みたいに医者に診てもらえってうるさいんですよね。大丈夫だって何度も言ってるのに。まったく。」

口を尖らせて文句を言う沖田。

「それで?用件を話すつもりが無いんなら出て行って欲しいんですけど。」

「ワタシ・・沖田さんの見張り兼世話役に任命されたんです。」


「はは・・何の冗談ですか、近藤さん達が君にそんな事、頼む訳がないでしょう。」

ワタシを軽く睨み付ける沖田さん。


「・・冗談じゃありません。本当の事なんです。」



「僕に見張り??世話役が付く?全然意味が分かりません。どういう事ですか。僕の"何"を見張ろうってわけ?」

ワタシを見る瞳に怒りが滲んでいた。


ワタシも此処で怯んでは行けないと思い、意を決して側に行き座った


「まだ、沖田さんの体調が悪いようだから、無理をしないように見張る係りだと聞いています。」


「はっ、何ですかそれ、そんなの要りませんよ。僕は無理なんてしないし、こうやって度々君に身体の事を聞かれるのだってうんざりしているんです。」「君の世話になんてなりません。」

咳き込む沖田。

「ほら、まだ咳だって出るじゃないですか。」

「・・この咳は天気のせいだ。昨日だって僕は立派に稽古場に出てたじゃないか。それなのに近藤さんも土方さんも僕を、まるで弱い物扱いしてっ。」


「っ、お二人共、沖田さんを心配してるんですよ。だからワタシを世話役にしたんですっ。」


「心配なんてそんなものっ、いらないよっ!!僕は二人に頼りにされたいんだっ!!」
「必要とされたいのにっ、それなのにっ!!」


興奮すると咳が治まらない。
布団を被る沖田。

出て行ってくれ、イライラすると言われ、
今はこれ以上は無理と思い、沖田さんの部屋を出た。


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沖田さんの部屋に行くと縁側で鳥に餌をあげていた。
鳥に向けられた視線は穏やかで優しいものだった。

(こんな優しい瞳も出来るんだわ)

ワタシの物音に気付いた鳥が、バタバタと飛び立って行った。


「君が近寄って来たから、鳥が逃げちゃったじゃないですか。せっかく毎日餌付けして慣らしてたんだけどな。明日から警戒して来なくなったら君のせいですよ。」

(今日も相変わらず不機嫌・・さっきの鳥に対しての態度と違い過ぎる・・・)

「ごめんなさい。」

「謝られても、もうどうしようもありませんよ。少しでも悪い思うなら何処かに行ってくれませんか。」

ワタシが毎日自分の側にいるから、毎日機嫌が悪いと言う。
沖田さんはワタシをなじる言葉を浴びせる。

(・・だって・・これ・・ワタシの仕事だもん。近藤さんから言い付かった仕事だもん。)


確かに咳も今は出てないようだけど。


自分の目の前から居なくなって
なんなら屯所から居なくなっても良いとまで言われた。

(なんで・・そんな事まで言われなくちゃいけないの・・)

動かないワタシを見て、沖田さんは舌打ちをした。

「チッ、なんで動こうとしないのかな、はっきり言わないと伝わらない?」
「君が此処に居る事じたい、迷惑だって言ってるんだよ。」


近藤さんには、沖田さんはちょっとクセがあるからと
聞いていたけど、酷い。
ワタシ・・貴方にそんなに酷い事した?

あ・・ダメ・・手が震えて来た・・。

一方沖田さんも、イライラが頂点にきたようだった。

「あ・・ダメだ・・又いらいらしてきた。」

(こっちだって同じよっ)


「あんまり面倒だと君の事、殺してしまいたくなる。」
「ねぇ、試しに僕に斬られてみるってどうですか。」



(試しに斬られる?!試しに斬られちゃかなわないわよっ。)


何処がいいかなと言いながら
ワタシの回りをゆっくり歩く沖田さん。
指の1本でも切り落せば大人しくなるだろうと言う。


「そうと決まれば、ほら、どちらで構わないから好きな方の手を出してもらえませんか。」

ワタシは自分の手をぎゅっと握った。

刀の柄に手を掛ける沖田。

「じ、冗談でしょう。」

自分でも驚くくらい擦れた声が出た。

「まさか、僕は何時だって本気ですよ。君が居なくなるなら、いくらでも適当な嘘をでっち上げます。」

沖田さんが何かむちゃくちゃな理由を言ったが
頭に入らなかった。


「君も何か考えて下さいよ。僕がどうしたら土方さんに怒られずに、君を斬る事が出来ると思いますか。」


(ワタシが斬られる理由を、どうしてワタシが考えなきゃ行けないわけ?!)

「そんな・・の、考えられません。」

「どうして?君の頭はただの飾りなんですか。」



(いじめだ・・もう、これはいじめだわ・・)


「違いますっ。」


「違わないと思いますけど。」

彼の言葉の刃で切り刻まれて行くワタシ。


沖田さんはあろう事か笑いながら
「もしかして、泣きそうなの?泣けばどうにかなると思ってるんですか。生憎僕には涙は通用しませんよ。」

(っ!泣くもんかっ、負けないっ。)

沖田さんはこのやり取りに飽きたのか

「まぁ、君は此処でめそめそ泣いていれば良いんじゃない。僕はそろそろお暇しますよ。」
「せっかくの非番なのに君の泣き顔なんて見続けていたくないですから。」



(えっ、斬らないの?)


鳥が戻って来るまで此処にいろと言う。
明日の朝、鳥が来なければワタシの誠意が足りなかったと
言う事だと言った。

「早く根を上げてくれると良いんですけど。」

(絶対、根なんか上げないからっ!!)

去って行く沖田さんの背中に心の中で叫んだ。



夜中、沖田さんが部屋に居なかったので
ワタシは屯所内を捜した。

道場から灯りが漏れていたので
行ってみると沖田さんが見えた。

彼は素振りをしていたが、息が上がって苦しそうだった。

(やっぱり無理して・・)。

「なんだ・・君か。何しにきたんですか。もう寝る時間でしょう。」
「先に言っておきますけど、今日の僕は機嫌がとても悪いです。君の顔を見たらさらに悪化しました。」



(・・機嫌の良い時なんて無いじゃない。でも体調が悪い人をほっとけないわ。)

「それで何の用ですか。」

「無理をされないように、止めに来ました。」

又一段と不機嫌になったようだった。

「何だよ、それ、そんなの僕は頼んでいませんよ。近藤さんか土方さんに言われたんですか。」

「いいえ、違います。ワタシの判断で来ました。」


沖田さんの瞳をまっすぐ見てワタシは答えた。
沖田さんはワタシから視線を外した。

「だからっ、そういうの、鬱陶しいって言ってるだろうっ!!」

彼は視線を床に落としながら、叫んだ。

「僕はっ、無理なんかしてないっ、夜の自主練習だって前は当たり前のようにやってたっ。誰か止められた事なんて一度もっ!」

興奮すると咳が止まらない。

側に駆け寄ろうとするワタシを手で振り払う。

「寄るなっ!」

「心配なんて、頼んでない、僕は誰かに心配される側の人間じゃない!!」

・・いつもの沖田さんじゃない。
悪態をついてワタシに反抗してる・・彼じゃない。
悲しみと焦りで一杯の背中が震えてる。

「僕はもっともっと強くなって、近藤さん達の為にもっともっと人を斬らないといけないんだっ!」

「こんな所で立ち止まる訳には、いかない・・。」

「僕がこんなに世話役なんて、要らないって言ってるのに、近藤さんも土方さんも君を僕の側に置きたがる。僕はそんなに頼りなく見えるんですか。」

ふらふらと立ち上がる沖田さん。

「・・こんな事、君に聞いても仕方ないですよね。今の忘れて下さい。」

「・・僕はもう部屋に戻ります。そうすれば君も満足でしょう。」
「じゃ、おやすみなさい。こんな時間までご苦労様です。」

道場の扉を勢いよく閉めて出てゆく沖田さん。

あんな沖田さんを見たのは
初めてだ。
とても・・辛そうで、哀しそうだった。

震える背中が
痛々しかった。

暫くワタシは道場に座り込んで立てなかった。