エリア88 (1) (MFコミックス―フラッパーシリーズ)/新谷 かおる

シュタインベルガー Q.b.A ’08Steinberger Riesling Q.b.A [...

 私がワイン好きだというと、稀に「シュタインベルガーってどんなワインだ?」と聞かれることがあります。今までたしか7人ほどに聞かれましたが、まあ100%その人たちはマンガ「エリア88」のファンでした。


 エリア88にはフーバーというドイツ人戦闘機パイロットが登場するのですが、この人が愛飲するワインとしてシュタインベルガーが登場し、なおかつ同僚?たちもこのシュタインベルガーを頼むエピソードが描かれているために作品中で強い印象を放っています。


 んでシュタインベルガーですが、ドイツの高級ワイン2大産地といえばモーゼル・ザール・ルーヴァーとラインガウなのですが、このラインガウを代表するワインの一つで、甘口です
 ドイツの甘口と言っても例えば「黒猫ワイン」ツェラー・シュヴァルツカッツやリープフラウミルヒなどといった普及型の、幼稚な甘さのワインとは異なり「高貴な甘口」といわれるほど洗練されたワインで、すっきりした甘みは豊かな酸味とバランスが取れて、後口にも雑味を残さず、しかも比較的低いアルコール度数と合わせて誰にでも勧められる素晴らしいワインです。


 ただし、これはシュタインベルガーというよりドイツワインに共通してある面倒くささなのですが、ほぼ同じに見えるラベルながら価格が全く違うものがあります。それは、ドイツワインには等級があり、しかもその等級は全生産者が少しでも上位を目指そうとする類のものではなく、つまり各生産者がそれぞれの等級のワインを作り、しかも等級ごとにラベルのデザインを変更するなんてしてくれないもので、買うほうはドイツ語で書かれている等級情報に注意する必要があります。


 ドイツワインの等級の決まり方は単純で、簡単に言うと甘いほうが格上です。正確に言うとブドウの状態での糖度と、ワインでのアルコール度数(最大値ではなく最低値が決まっている)によって決まります。最高のものはトロッケン・ベーレン・アウスレーゼで、高級品種リースリングで作られたそれは何十万円もしますが、低いほうのQbAやカビネット(Kabinett)・クラスならば一流生産者のワインでも千円台でも買えます。
 で、実際最高級のものの方が美味しいかというと、まあ美味しいといえば美味しいんですが正直アウスレーゼ(Auslese)以上のクラスは甘すぎて食前酒か食後酒くらいにしか使えません。また価格も思い切り高くなるし、そもそもあまり売っていないので、買うならばカビネットかシュペトレーゼ(Spatlese)までに絞ったほうが得策です。カビネットクラスならまあ、酸味も強く食事にも使えます。


 またどうしてもドイツワインで辛口を飲みたい方はトロッケン(Trocken)というのを探せば飲めますが、はっきり言ってドイツの辛口は美味しくありません。


 エリア88ではシュタインベルガーは高級ワインっぽく登場し、実際に一流のワインなのですが、そこから受ける印象とは違い低ランクのものなら2千円以下でも買えるので、マンガファンにもお勧めです。


 それにしてもフーバーって渋い、いぶし銀系のキャラクターなのですが意外に甘党だったんですかね。普通にビールとソーセージが好きとか言っておいても良かった気がしますが。