世の中に、企業に対して「消費者を無視して、儲け第一主義に走るな!」というような批判がありますが、実際のところ本当に儲けようと思うなら消費者ニーズを無視することは出来ません
 特に現代は、例えば偽装のようなことをして荒稼ぎしようとしても、それが軽度であっても失敗したときはほとんど社会的に抹殺されるほどに叩かれます。要するにリスクが高すぎ、特に名のある大企業ほどそういうことはできなくなっています。


 そういう事を抜きにしても消費者を無視したところで儲けるなんてかなり難しいように思います。なにしろ商品が売れないことには儲けようがないわけで、消費者を重視することが儲けへの一番の近道です。つまり儲け第一主義と消費者第一主義はかなり近いところにいます。消費者無視しているような経営の店って、飲食店で言えば例えば自分のこだわりのみで作るガンコ親父のラーメン屋みたいなもんでしょうか。スープにレンゲ使うな!みたいな。


 ただここで、では消費者が求めるものとは何かというお話があります。
 私は個人的に、「消費者を無視した儲け第一主義」なんて批判が一番当てはまるのは胡散臭い代替医療業者や健康食品業者だと思っています。そう思うのは何故かといえば実質的な治療効果などが無いから、さらにそれにもかかわらず消費者には治療効果などを期待させる、詐欺に近いものがあるからですが、見方を変えると彼らはもっと健康になりたいとか、藁をもつかみたいという消費者ニーズに注目して商売してるんですよね。
 ニーズに悪乗りしてるというか、曲解してるという感じですが、少なくとも消費者の「思い」を無視してるわけではない。無視しているのは消費者の「利益」です


 さてメーカーが応えなくてはならないのは消費者の「利益」なのでしょうか「思い」なのでしょうか。両者が同一ならば何も問題はありません。が、ときたまその二つが分離することがあります。
 農家として私が思いつくのが、農産物の生産に農薬を使うことです。我々は農薬を使うことで(一応付け加えておけば、適正に使うことで)、安全で美味しい農産物を安価に提供することが出来ています。それは消費者にとって利益になっているはずです。が、思いに応えているとは言えないかもしれません。しかしあくまでメーカーが応えるべきは消費者の利益だと思います。


 それともう一つ、消費者ニーズと言うヤツが本当に消費者のニーズなのかどうかという疑問があります。
 私が考えるのは主に商品の価格の話ですが、特に大手スーパーなどで「消費者ニーズに応えて値下げしました」と言うようなヤツ、イオンは「謝罪広告」まで出してやっていましたが、本当に消費者の皆さんがそこまでの安値を求めているのか疑問です。
 そりゃあ、買い物は安いほうがいいのは当然でしょう。が、これ以上もっともっと安く、てな思いは本当にあるのでしょうか。安いほうがいいというのは単なる原則であって、ニーズとまでは行かないでしょう。それは私の単なる想像ですが、しかし知り合いの米屋さんなどと話をしていてもそんな疑問を抱くことはよくあります。


 これでは消費者ニーズを捏造しているのではないか、と思います。で、その捏造したニーズに勝手に応えている。値下げで売り上げは上がるのでしょうが、消費者は安くして欲しいのではなく、単に勝手に安くなったものを買っているだけなのではないでしょうか。
 そしてそれの行き着く先は何処か。消費者の利益になるようなとこでは無いように思います。犯罪でもないので偽装などと違い企業自身にハイリスクなわけでもなく、やっているところはたくさんありますが、むしろだからこそ問題も大きいと言えます。