農業者所得保障制度ですが、とりあえずモデル事業として稲作農家を対象としたものが本当に動き出すようです。


戸別所得補償は満額=来年度予算で5618億円-政府
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009122000158


 政府は20日、2010年度予算で農林水産省が要求していたコメ農家に対する戸別所得補償制度の関連経費5618億円について、満額計上する方針を固めた。財政事情は厳しいものの、民主党が予算・税制の重点要望に盛り込んだことを踏まえた。制度への参加の可否は各農家に委ねられており、10年度からコメ政策は実質的に「減反選択制」へと転換する。(2009/12/20-20:52)



 で、定額部分として10aあたり15000円を(条件に値する農家に)支給し、その他に生産費と販売費の差額をつけるという仕組みのようです。
 減反選択制へと転換するなんて書かれていますが、減反の元もとの意義を考えると選択制などありえないわけで、実質的には減反制度廃止と言っても良いでしょう。


 10aあたり15000円という価格は正直、生産費と比べて充分な価格とは言えません。が、多少なり空気が読めれば今、そんなことは言えませんよね。なにしろ民主はマニフェストでは2.5兆円程度の減税を謳いつつ実際には1兆円の増税ですから、差し引き3.5兆円もの裏切りで、もちろん予算凍結や事業仕分けやらでお金カットされた分野も多く、「満額回答」となった農業分野が文句を言えるわけがありません。
 ちなみに余談ですが、10aあたり15000円の税金、と言うのはちょっと具体的に言うとご飯茶碗1杯当たり2円ほどです。


 まあ、このねじれた状況下で来るだろう未来と言うのも見えるわけでして、こういうアナウンスがあることでおそらく消費者の皆さんは農産物に対して価格の下落を期待するでしょうね
 10aあたり15000円「もの」「血税が」投入されるなら農家はだいぶ楽になるんだから、小売価格は下がって当然と考える人は多くいるでしょうし、実際農家手取りなどに全く頓着しない全農や小売店などは値下げするでしょう。今朝の新聞に、米の価格に対して豊作時は下落し、不作時は高騰するなどと言うモデルを出していて笑いましたが、今どき不作で値上げしてくれるなんてそんな甘いところはありません。


 というわけで、まあ来年度はまだしも、ほんの数年たてば「補助金貰い、しかし全く赤字の水準」になるのは見え見えです。制度そのものについても、まさかこれが恒久的に続くものだと無邪気に思う農家などいないでしょうし、むしろいつものハシゴ外しがあるに違いないと思っておくのが普通でしょうね。


 以前から書いていますが、私はどうしてもこのような「過程に支払うお金」が気に入らない。結果どうなろうがやりさえすればお金がもらえる、なんて思われてはいけないはずが、そういう印象面について何か対策しているようにも見えないし、これでは今後ひたすら、農業分野は嫌われていくしかありません。


 農業にお金を使ってくれること自体はいいんですが、使い方は考えるべきですよね、いろいろな意味で。報道での扱いも、今回の件では減反に関わるお金は多少なりとも浮いているはずですが全く書かれていないので、約5600億が純増したように見えるあたり悪意を感じます。
 もちろん本道での使い方もですが、根本的に将来像が見えないためにどうしても、どういう対策を講じられても好意的に捉えることができません。


 言葉だけを見ていると農業を振興させていくように思え、しかし起きている現象を見ると農業なんか無くなってもいいと思われているようにしか感じない。正直、潰すなら潰すでもいいんです。ほっといてくれよと。なんか厳しい規制のもと殺されていくような感覚なんですよね。