NIKKEI NET 2009年10月16日
医師の院生交通事故死、鳥取大に賠償命令 地裁判決
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091016STXKF088816102009.html


 鳥取大医学部の大学院生で医師だった前田伴幸さん=当時(33)=が鳥取大病院で徹夜勤務をした直後に交通事故死したのは大学側の責任だとして、両親が約1億1600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鳥取地裁は16日、「大学は疲労や睡眠不足から居眠り事故を招かないために必要な措置を怠った」として約2千万円の支払いを命じた


 研修などの名目で無給のまま医療業務に従事している院生の医師について、「雇用」する側の大学に安全配慮義務があることを認める司法判断。医大院生の過酷な勤務実態は国会などでも問題化しており、各地の大学で進む雇用契約締結の動きにも影響しそうだ。


 朝日貴浩裁判長は判決理由で「大学院生として在学し、診療もしていたのだから安全配慮義務があったのは明らか」と指摘。「業務内容は勤務医と大きく変わらず、精神的負荷が高いものだ」と判断した。その上で「大学は、前田さんがいずれ極度の疲労などから事故を起こしかねないことが十分予測可能だったのに、漫然と放置した」と安全配慮義務違反を認めた。



 1億1600万の損害賠償請求に対して約2千万の支払命令って、この割合が一般的にみてどれくらいの重みなのかは私には分かりませんが(そもそも比率で求めること自体おかしいんでしょうけど)、いわゆる「医療事故」訴訟に比べると安いなあという気はします。


 加古川心筋梗塞訴訟なんて満額回答でしたからね。過労医師のミスは許さんぞ、という態度を取りながら過労死したらスズメの涙、というのは現場の方々にとっては恐ろしく気分悪いでしょうねえ。


 だいたい2千万って・・・この亡くなった方がもし生きていて、院生終わって何年かしたら数年で稼ぐ程度のお金でしょう?損害賠償の金額って現在の年収に係数をかけてとか「ミナミの帝王」で見た記憶がありますけど大学院生の報酬が安すぎるだけで、真の将来損失額(←正しい言葉わかりません)はかけ離れているでしょう。


 医大院生の過酷な勤務実態は国会などでも問題化しており、っていつから問題なんだよ。どうせいつまでも問題のままなんでしょう。


※11月2日訂正


この件ですが、判決の2千万円は大幅な減額というわけではなく、結果としてほぼ全面勝利なのだそうです。
以下、ssd's Diary http://ssd.dyndns.info/Diary/ にて「法務業の末席」さまが書かれた解説。


http://ssd.dyndns.info/Diary/?p=4902&cpage=1#comment-21836


この医師の生涯所得額は4億3101万4600円で、これは原告側の訴状での請求額ででも、鳥取地裁の判決でもは同じ金額を認定して、損害賠償額の計算のベースにしています。


4億3千万円の金額は、67歳まで34年間働けるとしての総額であって、年平均では1267万6900円となります。この年平均の収入額から生活費分を控除して、ライプニッツ係数で34年分の複利利息を差し引き計算した結果は1億263万円となります。この裁判所の判決での基本となった金額は、原告側が訴状で請求した金額と全く同じです。また生涯収入以外の死亡慰謝料は、請求が3千万円請求のところ、判決では2千万円と1千万円減額して認定されましたが、葬祭料は請求通り150万円が認められました。


この結果、原告側請求の逸失利益総額1億3413万円に対し、裁判所が認めた逸失利益は1億2413万円と、ほぼ同じ額が認められています。


ただし死亡した大学院生が、他の鳥取大学大学院生の平均の倍のバイト勤務を、自ら大学病院に希望してバイト勤務割当を増やしてもらい、それが過労と睡眠不足を招いていた要素があること。また、なるべく自家用車を使わず列車等でバイト先病院に移動するよう、大学病院が指導していた事実があること。これらの本件個別の事情を考慮し、大学側の落ち度は(賠償責任)は損害額の40%が相当という裁判所の認定となりました。


その結果賠償すべき逸失利益額は、前記の1億2413万円から6割減らされて、4965万2千円となりました。さらに、通勤労災事故として労災保険から遺族に支給決定された、平均賃金千日分に相当する3146万3千円が相殺された残りの1818万9千円に、訴訟での弁護士費用として10%の182万円がかさんされ、最終的な賠償金額が2000万9千円という判決となったものです。


原告の遺族側としては、大学側の責任割合が40%、大学院生本人の責任割合が60%とした、いわゆる「過失相殺」の比率以外は、ほぼ全ての争点が認められており、実質的には「完全勝利」と言って良い判決です。逆に大学側から見れば、賠償責任が無いとして控訴しても、まず勝ち目は無いと言えます。


判決の金額だけ見て2000万円とはトンデモだ!と思われる医師の方々が多いようですが、決して「生涯賃金2000万」という判決ではありませんので、お間違えの無いようお願い致します。


また判決の解説でも言及しましたが、ご遺族の両親には労災保険から遺族年金が支給されますが、その金額は年600万円ほどと推測され、この金額はご遺族が生きている限り支給されます。労災保険で支給される分は、労基法と労災保険法の規定により、雇用主である病院の賠償義務が免責されますので、遺族年金の5年分に相当する平均賃金の千日分(判決では3146万3千円)が、賠償額から相殺されました。



 まったく何事も半可通が一番みっともないですね。本当にお恥ずかしい。