近年の政治運営がぐだぐだぐだぐだとしてきた要因を一言で表すと、問題の優先順位を決定しなかった点が挙げられるのではないでしょうか。
 別に農政に限らず医療でも教育でもなんでもそうですが、立場によって求める優先順位は違います。大きく分ければ消費者の立場と生産者の立場ですが、それらを踏まえてうまくバランスを取ってビジョンを作っていくのが政治家の仕事だったはずなのに、メーカーから押され、消費者からは反発され、マスコミに批判され、関係ないはずの財界からごり押しを食らいともうぶれぶれぶれ状態です。
 難しいのは、優先順位をつけると最優先にならなかった事柄は必ず後回しになることです。すっげえ当たり前ですが。
 つまり後回しにされた立場の人たちの反発が怖いがために全ての事柄を最優先といってしまうとか、反発の少ない(見えない)所をこっそり切り捨てるとかそういう曖昧なやり口ばかり上手になり、どんどんと問題を先送りした結果が今の自民退廃いや大敗に繋がったわけですが、民主はもっとダメだろ。
 問題をちゃんと分類して優先順位をつければ、全体の見通しが良くなるし、対策もしやすいんですが、普通の組織ならごく当たり前であろうこういう合理的なやり方がどうも政治の世界には見えません。


 いらぬ前置きが長くなりましたが、一度ここで、米をもっと安くしなければならないという主張に乗っかって、では値下げを最優先事項にした場合どういうことをやればいいか考えてみました。評論家さんたちは集約・大規模化しか言いませんが、全然手ぬるいです。というか曖昧すぎ。


○中山間地での農業禁止
 零細小規模農家を潰して大規模農家に収斂させるのは、実はそれほど効率的ではないでしょう。実際には小規模農家は、赤字でも米を作り、しかも周辺にタダで配ってくれるという、かなり効率的な存在です。
 では潰すべきは誰かといえば、中山間地なぞで稲作している専業農家です。とにかく中山間地で作るほど非効率的なものはありません。田んぼの形はいびつで機械は動きにくいし農薬も肥料も使いにくく、移動時間もかかり、しかもそれらを専業で手広くやるなど言語道断です。中山間地はコスト無視で作ってくれる小規模農家に全て任せて、専業農家は全て平地に移住させるか、できなければお取り潰しです。
 里山保全がどうとか、そんなことを言ってる場合じゃありません。


○有機農法禁止
 無農薬とか減農薬とか、高コストに決まっています。ちまちま田の草取りなんかやらせていたらムチャクチャ人件費がかかります。空中散布もどんどんやれば宜しい。大規模集約農地ならあっという間に作業完了です。ついでにマスコミにも働きかけて農薬の安全性をちゃんと伝えさせましょう。農薬の不安なんか煽るのは絶対禁止。第一そんなことしたら、もっと安い中国産の野菜が輸入できないじゃないですか。
 有機肥料だって施肥量もその手間も化学肥料の比ではありません。
 
○遺伝子組み換え作物導入
 麦なんか、全世界の流通量のほとんどがGMです。米だって超多収遺伝子組み込んで、徹底的に改良すべきでしょう。安全性がどうとか、効率の敵です。安全にはコストがかかるに決まっています。


○マスコミによるプロパガンダ
 農薬やGMについても言いましたが、ゼロリスクを求めれば求めるほどコストは跳ね上がります。ほどほどのリスクだったら許容してもいいじゃないか、だって安いんだから、という認識を広めなければいけません。100円ショップの品物は、すぐ壊れたってそう文句言わないでしょう。残留農薬くらいなんですか。
 もちろん、不味いなんて文句は言わせません。不味くて当然です。


 ・・・まっ極端なことを言い出せばキリがないんですが、これくらいやれば5キロ1500円を1200円くらいにできるんじゃないですか。


 一つ注意してもらいたいのは今現在、真に「効率」を求めれば、農業なんかやらずに会社員になるほうが個人にとってはよっぽど効率的だ、という事実です。