昨日、群馬県衛生環境研究所所長の小澤邦寿氏の事を調べていて変なものを見つけました。三洋電機が開発した電解水技術により、新型インフルエンザのウイルスを抑制できると言う効果を、群馬県衛生環境研究所と共同で確認したと言うものです。


三洋電機、電解水の新型インフルエンザウイルス抑制効果を確認
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090819/174912/


 三洋電機は2009年8月18日、同社の電解水技術が、新型インフルエンザウイルスに対して高い抑制効果を持つことを、群馬県衛生環境研究所との共同研究で確認したと発表した。


 水道水を電気分解することで生成される電解水は、さまざまなウイルスを抑制する効果を持つ。これまでの研究で、季節性インフルエンザや鳥インフルエンザのウイルスの感染力を抑えることが分かっている。


 検証実験では、遊離残留塩素濃度2mg/Lの電解水に10分間接触させることで、新型インフルエンザウイルスの感染価を99%以上抑制できることを確認した。感染価はウイルスの感染力を表す値で、結果は季節性インフルエンザや鳥インフルエンザの場合と同等だった。


 ウイルスを抑制する仕組みは、ウイルスが人の細胞に吸着するのに使う「スパイク」を、電解水中の活性酸素種が破壊して、感染を抑えるためと考えられているという。


 同社は、電解水を生成してウイルスを抑制する「ウイルスウォッシャー機能」を持った加湿器や空気清浄機を展開している。(館 洋光=Infostand)


 こちらも参照。小澤所長、記者発表会で効果を説明するの図

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090818/174333/?SS=imgview&FD=-1056136482


 ついでですが、同じく群馬県衛生環境研究所と三洋電機のコンビは、同じく電解水で2年前にノロウイルスも抑制したと言う共同研究結果を上げているようです。


三洋電機の電解水技術の新しい効果検証 ネコカリシウイルス(ノロウイルスの代用ウイルス)抑制※1に高い効果
http://jp.sanyo.com/news/old/0701news-j/0117-1.html


三洋電機の電解水技術(水道水を電気分解することで生成される希薄な電解水)により、ネコカリシウイルス(ノロウイルスの代用ウイルス)の感染価※2を99%以上抑制できることが確認されました。


1. 電解水によるFCV感染価の低減効果

電解水によるFCVに対する感染価の低減効果について検証実験を行った結果、遊離残留塩素濃度2mg/lの電解水に10分間接触させることにより、FCVの感染価を99%以上抑制できることを確認しました。



 はっきし言って同じです。


 つまり次亜塩素酸で殺菌していると言うことでしょう。別にそれ自体が胡散臭いと言うわけではなくて、普通にあると思います。いろいろなウイルスを殺すのも納得できます。単に次亜塩素酸で殺しているだけなら特に三洋電機の電解水がえらいと言うものではなく、塩水を電気分解すれば誰でも作れます。


 が、実験は「ウイルスを10分間、電解水に接触させる」と言うものです。で、小澤氏がスライドで賑々しく発表しているように99%のウイルス抑制効果を発揮していると言うのですが、化学をかじった人なら誰でも、それの実用性に疑義を持つでしょう。
 つまり、日常生活でどう使うか、通常の環境でどうやって10分間もの長時間、電解水をウイルスに接触させるかです。なんと言ってもこの実験は、空気清浄機での実験ではないのです。本当に役に立つのは、「空気清浄機を何時間使えば、室内のインフルエンザウイルス濃度を低減できるか」ではないのでしょうか?


 普通に考えて、屋内であってもこの電解水とウイルスを濃厚に接触させるのは難しいでしょう。屋内と言えどしょっちゅう扉の開け閉めはあり、密閉された系ではありえません。そもそも人は外にも出ます。外部でウイルス感染した人が、この電解水を飲めばインフルエンザの予防ができるのでしょうか?この電解水で手洗いを行えば「手に関しては」効果はありそうですが、それにしても10分も手を洗う人はまずいません。1分間での効果はどれほどなのでしょうか?


 次亜塩素酸での殺菌効果に疑いを持っているわけではありません。が、電解水を使った空気清浄機にインフルエンザ抑制効果があるのとは全く別の話なのは、素人にとっても常識です。が、三洋と群馬県衛生環境研究所は、関係の薄い両者を濃厚につなぎ合わせて、ほとんど詐欺に近い効果効用を謳っているように見えます。少なくとも、そう勘違いする人はいるでしょう。
 電解水で食材を洗うことで抑制効果が期待できるノロウイルスと違って、空気清浄機などおそらくは役に立たない飛沫感染する、今が旬のインフルエンザに対してこういう効果を宣伝するのは道徳的にどうよと思います。


 群馬県衛生環境研究所は間違いなく県の機関みたいですが、だからと言って必ず信用に値するものではないことがよくわかりました。小澤所長含めてその発言には眉に唾をつけて読まないといけなさそうです。