前のエントリやはてブコメントにて、「酸化防止剤無添加とはあくまで日本国内での醸造過程において無添加と言うことで、輸入した果汁は酸化防止剤を添加してあるのでは/アルゴンガス充填などで亜硫酸塩に頼らない酸化対策を行っているのでは」というようなご意見を頂きました。確かにその可能性はあります。が、もしそうだとしたら日本のワインメーカー及び市場・消費者に対してもっと深くガックリするだけです。


 まず輸入濃縮マストに酸化防止処理されてっからうちではやってないよ、という言い訳は感情的には詐欺としか思えません(けど法的にはたぶんグレーに留まる)。まだせめて酸化しまくる不味いワインを作ってくれてたほうがマシです。


 そもそもワイン以外の、有機栽培についても同じですが、亜硫酸無添加などというのは方法に過ぎません。フランスにもカリフォルニアにもオーストラリアにも(もちろんそのほかにも)ブドウ作りに農薬をできるだけ使わない、亜硫酸も最小限しか使わないと言う生産者はいますが、そういう人たちは美味しいワインをつくるために有機栽培なり何なりの方法を選んでいるわけです(もっとも成果が出ているかどうかはまた別の話ですが)。
 ルロワやルフレーヴなど、ワイン作りにおいて誰からも一流と見なされる生産者で有機栽培に取り組んでいるところはありますが、そういう取り組みの情報はワインのラベルには書かれておらず、一部のワインマニアが薀蓄的に知っているだけです。生産者達にとって、美味しいワインであることが価値の第一だからです。


 ところが日本のスーパーのワイン売り場を見る限り、亜硫酸無添加であることそれ自体が価値を持っているとしか理解できません。話は特にワインに限らず、加工品売り場には有機栽培の大豆を使った~~などなど、けっこうな頻度で「有機」の文字を見つけることができます。
 実際には、加工品の原料に使われている有機農産物の多くは海外からの輸入品であって(そもそも加工品の状態になってから来る事もよくある)、輸送コストを考えれば国内産で慣行栽培の農産物のほうがはるかに環境に優しかったりするのですが。


 つまり私は本当は、酸化防止剤無添加と言うことそれ自体には特に興味がなく、本当に問題だと思うのはラベルに麗々しく「酸化防止剤無添加」と書かれていることの方なのです。そしてそれが主流になるに至っては、目も当てられません。
 もちろん日本国内にもものすごく努力して優れたワインを作ろうとしている生産者もいますが、このままでは日本におけるワインの立ち位置はいつまでたっても、一部マニアの楽しみから抜け出せません。


 例えば、新しく発売された小説のオビに「再生紙100%の原稿用紙に、昔ながらの万年筆で書いた小説!!」などと書かれていて、おおそりゃすごい!と思う読者はいるでしょうか?これはほとんどギャグですが、しかし食品業界にはこんなギャグがまかり通っています。