週刊ダイヤモンド2月28日号を読みました。特集は「農業がニッポンを救う」です。農業がフロンティアだーなんてまるで元々いた人なんか存在しなかったかのような言い分と曲解できなくもありませんが(まあ無理矢理悪意に取らなくてもいいですね)、中にJAの問題点を扱ったコーナーがあって、まあ農家にとっては常識的なことが書いてあったわけですが、面白かったです。
 ほかの部分ですか?成功している農家さんの事例は、皆さんすごいなあ~と思いました(本音ですよ)。ほかの、数字を一杯扱った部分ですが・・・まあ寄稿してる学者センセイが本間正義と山下一仁の両巨匠でしたので、ご想像くださいというところです。少しだけ言うなら、前の日経の記事でもそうでしたが、何で米価暴落の補填分は8割とか言うの?だったら2割損じゃん。それと結局のところ、米価はいくらがふさわしいのか、再生産価格はいくらと見積もっているのかを示さないと米価下落にまつわる議論に意味はなく、意味のない議論のうえで2割の所得減を諾々と飲み込めと言われても受け入れられません。そのくせ安全性がどうとか注文だけは細かいんだから。


 話を戻すと、現在のJAの農業部門は、ほとんど兼業農家のために存続していると言っても過言ではないです。それは、小規模兼業農家の生産力では個別販売がほぼ不可能なので、自分ち及び親戚・知り合いで食べきれない米はJAに売ってもらう以外ないからです。
 ただし、なら専業農家ならJAから完全に離れられるかと言うとそうでもなく、強力な首輪がくっついています。それは、農家における金融関連の窓口はほぼJAしかないと言う点です。極端に単純化して言えば農家が銀行に口座を持っていないからJAを切ることができないのです。
 農家が金融機関にお金を無心する際の、ほかの業種にない特徴は、担保が農地になることです。JA以外の金融機関で農地を扱うことは難しいでしょうし、国が制度を定める農業向け資金の窓口もやはり全てJAであり、この点だけで言えばJAの存在は不可欠です。


 ただしこの点があまりに強力すぎ、ある意味で人質を取られている状態なため、ほかの面ではほとんど横暴と言えるほどの扱いがまかり通っています。


 現在のJAにおいて一番問題だと思うところは、農産物を取り引きする相手としての魅力が全く無い点です。
 私が、農業の一番の魅力だと思うのは、自分で作った農産物をお客様が食べて、美味しいと言ってくれる事です。もちろん、不味かったら不味いと言われることもあります。特に農業に限らず、他の仕事のほとんどに共通すると思いますが、顧客と直接ふれあい評価していただくのは厳しいですが喜びも大きいものです。
 それに比べれば、太陽の下で世話した稲がすくすく育つのを見る、などといったステレオタイプな「農業の喜び」はしょせん過程に過ぎず、そこで満足してしまうのはある意味オナニー農業といえます。


 ところがJAに米を入れると、その時点で自分の米とほかの生産者の米は混ぜ混ぜされ、小売になる頃にはいったい誰の米が食べられているのかサッパリ分からなくなります。もちろん、美味しかったなどの評価なんか伝わるはずもありません。
 となると、自分で色々工夫して美味しい米を作ったとしても、何の意味も無いことになります。よその不味い米と混ぜられて平均化しますからね。てことは、生産者の行動としては「1等でありさえすれば、手を抜けば抜くほど儲かる」という行動こそが最も合理的になります。そんなところが発展するとは思いたくも無いです。


 食味で評価してもらえないなら、残る評価軸はほとんど金額のみになります。金さえ出してくれるなら我慢する、てなもんです。がもちろん、JAが出す米価は業界最安クラスです。で、生産者側が「こんな値段じゃ受け入れられない」と言えば、「あっそう、じゃあほかに売れば?」と言われるだけです。とてもじゃありませんがまともな商取引ではないですし、少なくとも対等とは程遠い関係がそこにあります。


 それに付け加えて、JAは農業用の資材(肥料や農薬など)も販売していますが、こちらの価格は業界最高です。最高と言っても最も良いと言う意味ではありません。
 培土や農薬などはホームセンターの方が何割も安いですし、サービスもいいです。それともっとまずいことに、最新の農薬や一部のメーカーの農業機械などは取り扱いがJAしかないことがあり、ほかの商社やホームセンターではネジ一本たりとも絶対手に入らないものもあります。普通に独禁法違反なんではないかと思います。


 もちろん頑張っているJAだってあることはあるのですが、ほとんどのJAはこんな感じで、業界内で最も高い資材を売りつけながら業界内で最も安く生産物を買い取る機関になっています。こんな所ですから、昨今JA離れが加速しているとされるのも当然の話で、むしろ専業農家になればなるほどJA離れしないと商売にならないのですが、農政はほとんどがJAありきで行われています。


 農業改革はまず何よりもJA改革から始まるべきです。ところが今現在JAが実際に行っていることは何かというと、赤字解消のために統廃合を頑張っています。農業地にある赤字支店が切り捨てられ、残っている支店は街のど真ん中って所もあります。周りに畑も田んぼも無いJAに意義はあるのか。


 ほとんど死文に近いですが、農協法第8条を紹介しておきます。


第8条 組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。


koume