減反廃止論の中心に、大規模農家に農地を集約すれば単位量あたりの米の原価が下がり、米価が下がると言うものがあります。机の上では正しいように見え、もしかしたら20年前なら正しかったかもしれませんが、現代には当てはまらないように思います。

ちなみに私は、減反をやめること自体には反対していません(積極的に賛成するわけでもないけど)。


 「いわゆる専門家」の試算によると、減反を廃止して自由に米を作らせた場合、米価は30%も下落すると言われています。ということは単純に原価の方も最低30%減らさなければいけないように思いますが、ちょっと製造業の方にお尋ねしたいのですが、あなたの工場の製品の仕切りを30%下げてくれと言われて対応できますか?

 周りの小さな工場は潰れるので、その分の注文が入りますよと言われても、発注が2倍になったとしてもきびしくないですか。


 実は工場の例は減反廃止論にふさわしくない点があって、ここで言う周りの小さな工場は小規模兼業農家に対応しますが、兼業農家は兼業農家であるがゆえに収入全体を農業に依存していません。なので、兼業の部分で利益を得られていれば、農業部門に赤字が出ても農業を続けることができます。というか、今の兼業農家のほとんどは、農業部門は赤字でしょう。
 ところが専業農家は、農業で赤字が出ると言うことは生活が破綻するのと同じことです。そしてここがもっとも「いわゆる専門家」に(わざとらしく)誤解されている点ですが、大規模農業の低コスト化はすでに個々の農家で取り組まれており、それでも現在の価格はかなりギリギリの状態で、これ以上ドラスティックに米価を下げる余地はありません。


 もっと単純な算数をすれば、米価が例えば4000円下がった時、米を20俵しか作っていない小規模農家にとっての損失は8万円でしかありませんが、1万俵作っている大規模専業農家にとっては4000万円の減収となります。先日、下落分の80%を補填するとか言う話がありましたが、その例を組み込んでも800万円の減収です。
 米価を下げると言うことはどう考えても、専業農家を潰し兼業農家を生き延びさせる、いわゆる専門家がおっしゃるのとは真逆の策です。


 また、例えば4000円下げると言われた時に思うのは、絶対にその次があると言うことです。要求は限りなく、翌年はさらに500円下げ、そして次はさらに1000円下げと際限がないでしょう。補填金もどうせ削られるに決まっています


 専業農家にとって、コスト削減なんか政府や学者センセイに言われるまでもなく当然取り組んでいることです。100円削れば100円儲かりますからね。自主的に行うコスト削減には現実的なモチベーションがあります。
 が、何が悲しくて赤の他人に、大幅なコスト削減を押し付けられなければいけないのでしょうか。しかもコストを削減しても儲けは何も変わらない、それどころか減るのです。 大規模化でコストを30%カットできるなら、それで作った米を元の価格で売りますよ。30%余計に儲かります。


 農村の魅力なんかどこにあるんですか。国が値下がりを確約した商材に手を出すバカがどこにいる。農村活性化とか言うなら、地デジテレビに2万円補助を出すよりまず地デジの受信エリアを100%にしろ。中山間地ではまだ見れないところがあるぞ。ブロードバンドもできん。


 日本の食料自給率が上がれば農水省の人は嬉しいのかもしれませんが、こっちにとっては知ったこっちゃありません。


koume