日経新聞読んでますと、本日1月26日付の社説に行き当たりました。


社説2 臨床研修の期間短縮は疑問(1/26)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090125AS1K2300324012009.html



 医師国家試験合格者は卒業後、2年間の臨床研修(初期研修)が義務づけられているが、舛添要一厚生労働相は医師不足対策として研修期間を1年間に短縮するなど、見直しを求めている。だが若い医師にはまずはいろいろな診療科をより多く経験させ、専門医を目指すにしてもその後の後期研修で力をつけるという養成が望ましい


 2004年4月の現制度発足前は医学生の多くは卒業後、出身大学の医局に進むのが一般的だった。しかしいきなり専門科に進み他の領域を学ぶ機会が少ないことに加え、無給かそれに近い待遇だったためアルバイトをせざるを得ず、それが医療ミスの原因になった、などの問題点が指摘されてきた。新制度では学生は自分が希望する病院を選べるようにし、月30万円程度の給与も保証するよう改めた。


 新制度後は特に地方の大学病院では医局に入る卒業生が減り、大学は各地域の病院に派遣していた卒業生を引き揚げ、自病院に戻し始めたことから、地域の医師不足を加速させたとされている。このため研修期間を1年間に短縮し、大学病院に戻せば医師不足も解消するというのが期間短縮化推進論者の主張だ。


 しかしこの発想は短絡的ではないだろうか。新制度が医師不足の一因になっているのは事実だろうが、加えて専門分化が進みすぎていることや女性医師の増加なども原因とされている。1年間で医局に戻せば解決するとは思えない。旧制度時代に指摘された問題点はどのように解決するのか簡単な話ではない。さらに専門分化を助長することにもなろう。


 専門的な知識や技術も重要だが、医師に求められるもう一つの要素は幅の広い見識である。専門医になるにしても、より多くの診療科を経験する方が専門性が生かせるという意見も多い。初期研修では少なくとも2年間は内科、外科、救急といった基本的な科に加えて、小児科、産婦人科、精神科、地域医療などより多くの科を経験する方が望ましい。


 現制度のカリキュラムの見直しは必要だろう。また地方の病院でも研修医の人気が高いところもある。優秀な指導医の育成など、魅力ある病院づくりへの努力も求められる。



 さて臨床研修期間を1年に短縮することがいいかどうかは別として、だからといっていろいろな診療科をより多く研修させることがいいのかどうかはちょっとわかりません。
 というか、もし仮に本当にたくさんの診療科を深く体験できるならいいんでしょうが、実際には今の2年の制度でもそうはなっていません。1年に短縮するなんておかしい、かもしれませんがといっても2年だって大した違いはなく、どうせサワリだけやってお仕舞いでしょう。


 医師に求められる要素は幅の広い見識、ってそれって医師に限ったことじゃない(特に新聞記者にはな)のは別として、素人が勝手に訂正するなら、幅の広い見識というのは医療業界以外の一般社会での見識ではないでしょうか。とか偉そうなことを言っていますが、それがもっともっと必要なのは言うまでもなく農業業界です。当然、外科医だって精神科医としての見識が、ないよりはあったほうがいいのでしょうが、なんだか社説筆者が書いていることは向いている方向がかなり違う気がします。
 要するに、この筆者はたった2年で各診療科の奥義を取得できるとでも言いたげな、医学をなめているような態度に見えるのは気のせいでしょうかね?まあ勝手にそう見えているだけかもしれませんが。


 さて実は同じ日経新聞のスポーツ欄に、こんなコラムが載っていました。


日経新聞2009年1月26日 「選球眼」浜田昭八
コンバート作戦の行方は



 内野ならどこも同じ、外野だと左翼も右翼も変わらないというのは町内野球のレベル。プロだとそれぞれのポジションに高度な専門性が求められる。だが、チーム事情でコンバートは行われる。限られた人材の有効活用である。
 現役時代にコンバートを体験した監督が、セ・リーグに多い。巨人・原は三塁と外野、阪神・真弓は遊撃、二塁、外野、中日・落合は一、二、三塁、ヤクルト・高田は外野から三塁へ移る異例の転向を果たした。
 さすが名選手ぞろい。コンバートにめげず輝いた。真弓、落合は3、原は2ポジションでベストナインに選ばれた。外野の名手高田は、三塁でもゴールデングラブ賞を獲得した。だから、監督としてコンバート推進派かというと、そうとも限らない。
 真弓は「試合に出られるならどこでも守る」といい、外野転向の一九八五年に阪神の優勝に貢献した。だが、監督では故障上がりの三塁今岡を一塁で試す以外は、コンバートに否定的。移る難しさを知っているし、1ポジションを極めるのが本人とチームのためになると考えている。


(中略)


「二塁ベースを挟んで移るだけで景色まで違う」と言ったのは、遊撃-二塁の転向の難しさを知る吉田義男さん。中日が誇る“あら・いば”コンビは、どんな感想を漏らすのだろうか。


 (スポーツライター)



 この二つのコラムが同じ新聞に載っているところがなかなかシュールで面白かったです。今の医師は守備率95%で超一流といわれるような遊撃守備どころではなく、100%命を救わなければ社会的に抹殺される恐れのある職業ですからね。内外野どこでも守れるユーティリティプレイヤーは本当には求められていないでしょう。


koume